転生者、兵器道を極める

山風狭霧

第5章 第3話

 徒然草の「いにしへの聖」には、権力は必ず腐敗する。政治を行う権力が個人の欲望を満たす道具と化してしまうから、とある。

 それは当たり前だろう。

 だが、この軍が俺の欲望を満たす道具、というのは少し違う。

 俺の欲望を=で結べるのだ。

 つまり、目標であり、答え、というのが最も正しいのではないのだろうか。

  



 「再び戦いの鐘は鳴らされた。

 目標は1つ。敵の殲滅だ。

 逃亡兵の一人たりとも、トカゲモドキ一匹たりとも!

 地に伏させろ!!!

 そいつの血と糞尿の混じった汚泥をクソッタレ共に飲ませてやれ!!!

 目標は、竜騎国家ラルド!!!

 ハカラは踏み台であり、俺達の夢への階段である!!!!

 全軍、攻撃せよ!

 …以上。諸君らの健闘と、無事を祈る。

 絶対に生きて帰ってこい!!

 腕がもげようと、足が焼かれようと、目の前が暗闇になろうとも!!」






 ハカラへの侵攻は、驚く程早く成功を納めた。

 山火事が起きた為、国境付近に物資どころか兵士さえ送れなかった。

 ラルドからの援軍は全て空母艦隊によって殲滅され、帝国からの援軍は無かった。

 冒険者はそもそも国家間の戦争への関与は何があろうと禁止される。

 冒険者自体が冒険者ギルドに属する為、ギルドが中立を破ったとなるのだ。

 だが、いくら火魔法が使えようと、戦艦の装甲は破れない。

 いくら障壁を貼ろうと、物理攻撃にも対応する障壁など数少ない。

 そんなことができる才能があるのなら、とっくに兵士か研究者になってるからだ。

 既にハカラの首都の寸前まで進軍し、首都の包囲網もほぼ完成している。

 このまま投降を待つが、未だ投石やバリスタからの攻撃は止まない。

 地下にトンネルでもあるのなら面白いが、そんなことをする意味が無い。

 あったとしても、こんな敗戦確実の国に支援をすれば逆に王国からの援軍がそこに殺到する。

 帝国のであれば確実に。

 王国は貴族が未だ跋扈する国家だが、野心は高い。

 それこそ、貴族と名打った強者だけだからだ。

 貴族の血を引いていてもアイギス持ちだ。

 その性はなにか共通するのかもしれない。

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