転生者、兵器道を極める

山風狭霧

第1章 第18話 英雄達の凱旋

 滑走路に並ぶのは、600機を越える航空機。

 弾倉を、燃料すらも空っぽにしてまで戦車隊を守った英雄の愛機達。

 死者0名という偉業を成し遂げたのだ。

 先に帰還できた俺が滑走路を作ったのは彼等が帰還する5分前。

 …正にギリギリだった。

 英雄達は今宴会中のはずだ。

 地上に召喚された建物から喧騒が今にも伝わってきそうだ。

 「こんなとこで何してんすか、指揮官さん?」

 背中を押され、振り返ると─

 「あなたの愛しの副官のライリーちゃんですよー?」

 「確か…今回は基地でお留守番だったな」

 ライリー・トパーズ。召喚では極希に…端的に言うとやべぇ奴が召喚される。こいつはその中の一人。

 その経歴は特殊部隊《SAS》イギリス陸軍特殊空挺部隊

 又の名を《狂犬》。

 ライリーという名も相まって、犬っぽい扱いを受けるが制御できるのは基地の中では俺だけ。とんだ暴れ馬だ。

 「そうですよ!ちゃんとお留守番できたライリーちゃんを褒めてもいいんですよー?」

 「あぁ、よくやったな」

 そう言いながら頭を撫でると、まるで猫のように縮こまりながら頭を押し付けてくる。

 猫なんだか犬なんだかわかんないが、可愛いに越したことはない。存分にその触り心地の良い、ブロンド色の髪を愛でる。

 「むー…そんなに私の髪の毛好きなんですか?」

 まるで自分とどっちが大事なの、とでも言うめんどくs…ゲフンゲフンかわいい彼女のようだ。

 「あぁ…なんだか楽しくてな」

 「えへへ〜もっと撫でてもいいんですよ〜」

 ライリーを撫でながら、これからの事を考える。

 既に滑走路や掩体壕は建造され、急ピッチで周りを囲う防壁が《シービー》アメリカ海軍建設工兵隊率いる2個工兵大隊が取り組んでいる。

 地上に建造物があると、バレる可能性は格段に上がる。それに対応する為に大型魔法《隠蔽結界》を張らざるを得なくなった。

 既に明日には警備用の新装甲車が配備される運びになっている。

 完成した壁上には機関砲座や対地対空ミサイルも設置されているし、防衛体制は完璧と言っても差し支えないだろう。

 「む、また指揮官さん難しいこと考えてる〜!もっと肩の力抜こうよ〜私みたいに!」

 「お前は気楽すぎるんだよ…でも、ありがとうな」

 「いえいえ〜ほら、もっと撫でろ〜?」

 …そうだ。俺には、もう護るべき仲間が居る。



 ─その瞬間、俺の生き方が、生まれ変わった意味が、分かった気がした。


 ─復讐でもないし、潔白でないかもしれない。


 ─だけど、ここに護りたい者が1人でもいるのなら。


 ─俺は護り続ける。




 ─…その先に、何が待っていようとも。

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