帰らせたがりのヒロインから異世界生活を守り切る

すかい@小説家になろう

第二回城内会議

 現状ではキンズリー家の豊富な商品と資金によって街の発展の援助を行ってもらう代わりに、最低限魔物の警戒はしますよ、といった関係である。
 とはいえずっとその状況を続けるわけにはいかない。特産品を作るなりなんらかこの地域における“商品”を開拓しないことには、いずれ食いつくされる形になるだろう。もちろんミュリにそんな悪意はないだろうし、ある意味ではその程度の問題は解消することを見込んだ上で声をかけてきている。なのでこの問題は確実に処理しなくてはならない重要な項目である。


「第二回、緊急会議~!」
「なんなのそのテンション……」


 うんざりした表情でロベリア様が答える。ロベリア様はいつも暇人かと思っていたがまったくそんなことはなかった。王族には王族なりにやることがあるらしい。しかも前回の遠征で想定外の戦果をあげ、計画が狂ったこともあり本当に忙しそうにしていた。国内の各地を駆け回っていて、今日は久しぶりに戻ってきたタイミングだった。帰ってきてこのテンション、まあ鬱陶しいだろう。


「ソラ様、ふざけている場合ではありません。重要な話です」
「すみませんでした」
「あの……なぜ私までここに?」


 そう、今回の会議、参加者が増え、4人で行われていた。


「それは私も説明を求めます」


 ミュリ自身も状況が飲みこめず混乱しており、シャノンさんも納得のいかない様子。ロベリア様は帰ってきたばかりでいつも以上にどうでもよさそうだった。チームワークは抜群に悪かった。


「まあまあ、俺の国には三人寄れば文殊の知恵っていう言葉があってな」
「三人は元々いたじゃない」
「ソラはどこの出身なの?」


 ロベリア様の突っ込みと同時に、ミュリから質問が飛んでくる。


「あれ、言ってなかったっけ。異世界だよ」
「で、今日は何の話をするの」
「え、え……異世界?え?」


 ロベリア様は相当疲れているらしい。一刻も早く話を終わらせたいことがありありとわかる。
 一方ミュリは全く事態についてこれていない。ミュリに対しては普段はあまり優しくないシャノンさんが慌ててフォローする異常事態になった。


「ソラ様はロベリア様によって召喚された異世界人です。男性にして魔力が扱えている点ですでに普通ではないことは理解されていたかと思いますが、そういった事情がありこの協力関係も築かれています」
「そういうこと、だからまあロベリア様とは切っても切れないわけだ。結婚するならなおさらキンズリー家としての総意であることがわからないと、嫌でもこれから先の勢力争いに巻き込まれるよ」
「は、、はあ……なるほど」


 いまいち事態についてこれていないミュリだが、まあ今回は置いておいて話を進め


「次は私の質問です。ソラ様。どうしてミュリ様がこの場にいらっしゃるのですか?」


 られなかった。


「ん?最初にいった三人寄ればっていうのは例えでね、まあ人数がいて協力できればより良い考えが得られるよって話なんだ。ということで俺の数少ない友人は招いておいた」
「なんて気楽な……。これから話す内容はいわばキンズリー家に対抗する手段ですよ?わかっていますか?」
「まあまあそんな敵対心剥き出しにした話じゃないじゃん?要するに買い物先が近くにできた以上、俺たちも金を生み出す何かをこの地に持っておかないとまずい。特産品でもなんでもいいけど、ってことだし」
「なるほど、そういうことなら商人の娘がいるのは理にかなっているわね」
「ですがロベリア様」
「まあまあ、というわけでミュリ、協力頼めるか?」
「あっ、はい。もちろんです。いや待って、異世界人って何?!」


 やっぱり大分混乱していた。


「異世界人ってこっちじゃ普通じゃないのか?」
「召喚した私があり得ないと叫んだのだから、普通なはずないでしょう」
「というか、召喚魔法っていうのも初耳なんだけど……そんなものがあるの……」
「その辺は俺はいきなり呼ばれてきただけだからわからないんだよな」
「正確には呼ばれてないのに勝手に入ってきたのだけどね」
「そうだった」
「とにかく、ソラがよくわからないところから来たっていうのは分かったわ……」


 どこか諦めた表情でミュリが呟いた。これ以上自分の理解の及ばない話を聞いてさらに混乱するのを避けようといった形だった。


「まあ、ソラがどこから来たとしても、私はソラと結婚したいと思ってるから安心して」
「はいはいそういうアピールはまた今度ね」


 混乱の影響かよくわからないことを口走るミュリをあしらい、本来の議題に入る。


「私たちの場合、何よりも過剰なほどの戦力が整っていることを生かすべきね」
「そうですね。何度か森に付き合わせた人間の中にも見どころのある人物が増えてきています。彼らを私兵団として雇えば、国内有数の戦力を保有する地となるでしょう」
「そんなに強いのか」
「“新世界”のソラ、それに“大魔法使い”シャノン=ルーズワール、さらには“戦闘姫”ロベリア=ルズベリー王女、辺境に領地にこんな化け物クラスの有名人が三人も揃っているのは異常事態だよ、ソラ」
「新世界ってなんだ?!」
「化け物……」
「私、この二人と同じように扱うには無理があると思うのだけど」


 ミュリの発言に三者三様ながら納得できない声が上がる。もっともこれはミュリの意見ではない。これまで何となくずれた意見しか出なかったロベリア様とシャノンさんと違い、ミュリは比較的一般的な常識がある。ということはこれが世間一般に言われている自分たちの評価であり、ミュリに文句を言っても仕方ないことを全員がしっかり理解していた。


「ソラは魔法を使える男性。それまで一切認識されていなかった人物でありながら、国に三人しかいない大魔法使いのシャノンさんですら使いこなせなかった四属性魔法をすべて操る天才。初陣でこれまでの一回の遠征で削り取ってきた平均の3倍ちかい土地をいっぺんに吹き飛ばす。それも、見たこともない魔法を使って。私たちとは違う世界からやってきて、違う世界を作っていくもの、という意味でそう広まってるよ。実際この街も新世界って呼ばれてるしね」
「そんな評価なのか……」
「異世界から来たとは知られてないはずなのにそれに近い噂が広まっているんですね……」


 ようやくちょっと異世界に来た実感をもたらし、爽快感まで味わえる話をもらってテンションが上がる一方、あまりに話が大きくなりすぎていて事態についていけない。あと新世界って名前に納得が言っていない。俺のイメージだと新世界は大きなタワーを中心とした飲み屋街だ。あ、城を中心として飲み屋の建設もさせていた……。あまり変わらないかもしれない……。


「ちなみにその噂は私が広めているものね」
「えええ?!」


 この姫様最近見ないと思ったらそんなろくでもないことしてたのか!


「だって全部事実でしょう?」
「実際に確認したのはあの遠征のときだけだけど、確かにソラの魔法は化け物染みてると思ったよ」


 まあこんな話をしているミュリ自身、国内で名を知らぬものはいない超有名人だ。なんせ国内唯一の治癒魔法の使い手である。ある意味では彼女も化け物に片足を突っ込んでいる。


「まあその魔法をほとんど完璧に抑え込めるシャノンさんは当然化け物か」
「えっ……」


 あ、めちゃくちゃショックを受けた顔してる。


「あなた、シャノンもこれでも女の子なのよ。化け物はさすがにどうかと思うわ」
「俺から言いだしたんじゃないのに?!」
「私が言うのとソラが言うのじゃ、シャノンさんもショックが違うよ」


 そうなのか……。よくわからないけどフォローしておいたほうがよさそうだ。


「まあシャノンさん、普段のイメージだとちょっと抜けたお姉さんって感じだから、あのときはかっこよかったし化け物というよりヒーローだったよ」
「かっこいい……ヒーロー……」


 あれ、あんまり回復しなかった。そして残りの女性陣からもじとっとした目で見つめられている……。


「はあ……まあいいわ。ソラはどうしようもないにして、私の評価まで化け物になっているの?」
「ある意味化け物の飼い主ですしね……」
「そりゃどんなラスボスだって話になるか」
「好き放題ね、あなたたち」


 だいぶ話がそれたが、まあある意味自分たちの現状を知るいい機会になった。異世界から来た俺はもちろんのこと、王女であるロベリア様も、自分の実力をいまいち認識しきれていないシャノンさんもこういう情報には疎いというか、ずれが生じやすいメンバーだったわけだ。この情報が得られただけでもミュリを引きこんでよかったといえるだろう。


「で、化け物たちの新世界は今後どう動いていくか、よね?」
「名前だけ聞くともはや魔物の森だった時のほうがマシなんじゃないかって思えてくるな……」
「はいはい、もうこれ以上脱線させないで。ソラ」
「はい」


 ミュリに怒られてようやく本題に入る。


「税を徴収できるくらい安定した生活環境が築ければいいけれど、それまでの繋ぎが必要ですね」
「普通の貴族って税で生活してるのか」
「私の家はかなり特殊だからそうじゃないけど、普通はそのはずだよ」
「私の領地でも徴税は行ってたわよ」
「あれは徴税といえるほどのものではありません。寄付のレベルでした」
「良くそれで生活できてたな」
「ロベリア様は王女様ですので、国から直接収入が得られました」
「その代わり国の命令には逆らえないし、定期的にわけのわからない集まりに呼ばれるけどね」
「わけのわからない集まりって?」
「金持ちのおっさんと踊らないといけない集まりよ」
「ダンスパーティーです。本来なんらかの発表の場であったり、ダンス以外がメインなのですが、ロベリア様はそういったことにかなり無頓着ですからね……」
「どっちにしても踊らないといけないのだから一緒よ」


 ロベリア様はほんとに言動ともに王女様らしくないな……。これで遠征にはきっちり参加し、気が扱えないながら並みの騎士と並ぶほど個の武を有し、指揮能力も抜群となれば“戦闘姫”と呼ばれるのも納得だった。ミュリも横で


「噂通りというか、噂以上ね……ロベリア様」


 と呟いているので、世間一般からのイメージはおおむね想像できた。


「まあ、とりあえず税収を得るためには街に人が住みたいと思わせないといけないわけだ」
「キンズリー家のつながりは少なからずその点に貢献できると思うよ」
「ありがとう」


 キンズリー領から商人がやってくればこんな辺境の地でも住もうと思える人は増えるかもしれない。
 となると必要なのは、振り出しに戻るが税収が生まれるまでのつなぎになる何か……。何かいい案はないか。


「私たちは戦いしかできないけど、一応この地域の特産品になりそうで、私たち向きの仕事があるわね」
「嫌な予感がするけど」
「魔物料理なんて食べられるの、ここだけよ」


 王女様はニヤッとした表情でとんでもないことを言い出した。
 絶句するミュリ。ひきつった顔のシャノンさん。二人を置いてけぼりにして、俺はロベリア様の笑みにしっかり応えていた。
 これはいけるかもしれない。



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