世界最強のダンジョン攻略者、学校に入学して普通の人生(スローライフ)を目指す
パーティー認定
「あいつ、死ぬんじゃないのか……? 」
「さすがにアカデミーでは殺さないんじゃないのか……? 」
ズラッと並べられたのは30体のシャドー。周りの生徒は顔を引きつらせていた。
その一体一体がAランク、Sランク攻略者レベルに設定したようだ。
一年生のSクラスなど、まだ現役攻略者でいえばCランクかそこらと考えると、殺しにきてると言えないこともない布陣ではある。
「これは壮観だな。だが、少々数が少なかろう?」
「フォガード学園長!?これは……」
「よい。大まかなことはわかっておる。それより、リカエルくんがやる気になったというならこれでは数が足らんだろう。持ってきた」
そう言うとどこからともなく30の隊列が50、60と数を増やしていく。
「学園長……いくらなんでもこれは……」
「よい。それよりも、だ」
「はぁ……」
呆気にとられる講師。流石にここまでやるつもりはなかったようだ。
「リカエルくん、頼みがあるんだが」
「ここまで好き勝手しておいて……?」
「そうそう、その目を見て危惧してな……。頼むから、壊さんでくれよ……10体も壊れたらわしの首が飛ぶ」
「それはいいことを聞いた」
「おおい!?」
30くらいなら周りの生徒にはそれなりに見える形で終わらせられたのに……。100だと話が変わる。
「あの……学園長?一体なにを……」
「君もよく勉強させてもらいなさい」
「はぁ……」
毒気をすっかり抜かれた講師は、ほうけた様子で立ちつくすことになった。
「条件を変えるぞ。リカエルくんのパーティーリーダーの許可はこの100体の制圧じゃ。破壊ではないぞ?いいな?破壊ではないからな?」
「はぁ……。 わかったよ……」
それにまぁ、流石に壊してしまうとまずいだろう。制圧、停止なら言い訳できても、破壊は難易度がまた跳ね上がる。
「いよいよリカエルくんの本当の力が見れるんだね!」
「私も楽しみです……」
「ん。久しぶりに見れる。でも、気をつけた方がいい」
「え?」
マリーが警告してくれたならあれをやってもいいな。
「ほれ、仕切り直しじゃ。はじめよ」
「はっ!わかりました。それでは、覚悟はいいな?」
「いつでも」
「では」
意識を集中して身体を流れる魔力の量とスピードを上げる。
「始め!」
「きゃっ!」
「なんだ!?」
開始の合図と同時に、固めた魔力を一気に放出する。俺が2つ目のダンジョンをクリアして得た力。膨大な魔力量という武器をふんだんに使った、おそらく世界で俺しか使えないだろうとっておきの1つだ。
「これは……こんなことが……」
終始バカにしたような態度だった講師と生徒の表情が一変した。
「なんだこれ……立って……られな……」
「なんなの!?何が!?」
「これ、あの、Cクラスが何かしてるっていうの?!」
観客も余波を受けている。
Sランク最上位のフローラ姫でも、歯を食いしばってこちらを見ていた。
「これが……私が見たかった景色……」
「姫様も3年間でああなるんですね……」
「あれは、私も無理。真似しないでいい」
さて、そろそろ動こう。
魔力は普通、属性に変換することで力を発揮する。ただし、変換にあたって、少なからず魔力をロスするのが普通だ。それだけ考えると魔力を変換せずにぶつければ効率がいいという話があるが、純粋な魔力は扱いが複雑だ。
体内では大きな効果を持っていても、空気中に放出するとそのエネルギーを維持できない。結果的に、体外へ放つタイミングで属性に変換するのが最も効率がいい運用になっているというわけだが、俺の場合物量に任せて魔力波を放つだけで相手の動きも阻害できる。
「飛べるようになってからは使ってなかった力だ。光栄に思えよ」
目の前に対峙するシャドーだけに、聞こえないとわかっていたが声をかけた。
何体かのシャドーは危機を察知して動いたが、8割は動きがない。魔力波に気を取られて動けないのか、スピードについてこられなかったかはわからないが。
俺だけが早く動ける、スローモーションのような世界の中でシャドーの電源を1つずつ落としていく。
「おい……なんか見えないけどシャドーが」
「何が起きてるの……」
「俺、息が……」
「私も苦しい……」
シャドーだけでなく見学者にも影響が出てきてしまったようだ。放つ魔力を調整して、シャドーが動けるようにした。
「やっとシャドーが!」
「今までのはなんかおかしかったんだ……」
シャドーの不具合かと思ったらしい。
「これであいつも終わりだ!」
「やれ!」
Sクラスにとって俺はあまり良く思われてはいないことを再確認させられる。まあ今はそちらを気にしている余裕はないな。
半分以上は戦闘不能に追い込んだが、まだ30以上のシャドーがいる。それらが一斉に襲いかかってきた。
「少し派手な技にしよう」
目立ちたがりのあいつの技を真似て、炎を身体に纏わせていく。シャドーを焦がすほど、白く強い炎を身にまとう。見ようによっては多分、フローラ姫の十八番に見えるだろう。
「光魔法?!」
「いや!あれはただの炎魔法だ!」
「バカ!あれが炎でたまるか!どんな練度で練り上げたらあんな光るんだ!」
「でも光魔法なんてもっとありえないだろ?! 」
「見掛け倒しじゃないのか?」
超高熱の炎は、一般的な火属性の魔法と異なり、周囲を焼いて焦がすことはない。
ただその光で闇を切り裂く。一点集中で放たれる超高熱魔法は、火属性とは似て非なる特性を兼ね備えるようになる。あの研究バカに教わった受け売りだが、そんな話だったはずだ。
「いくぞ」
かざした手を横薙ぎに振り回す。それに合わせて纏っていた炎が一本の線になってシャドーの束を切り裂いていった。
「あれが……炎魔法だけであんな威力なんて……」
「光魔法が使えるなら、すぐ追いつく」
フローラ姫がどこか悲しげな表情になっていたが、マリーがフォローしていた。珍しいな、マリーが他人を気遣うか。俺が見てない間に何か変化もあったのかもしれない。
「これでいいか?」
呆けていた講師に声をかける。
声が返ってきたのは学園長のほうだった。
「壊してないだろうな……?」
「シャドーが壊せるはずないじゃないですか」
「そう見えんから心配したんだ……そもそもあの魔法はなんだ……大賢者以外に白炎が使えるなど……」
どうもあの研究バカはいまは大賢者とか呼ばれているらしい。今度あったらそのネタで小一時間いじってやろう。
「賢者様の魔法だって?!」
「本当に何者なんだあいつ!?」
生徒が我に返ったように騒ぎ始めたことでようやく仕切り役の講師も意識が戻ってきた。
「認めよう……。リカエルをパーティーリーダーとする」
「ん」
「一段落ですね」
フローラ姫が駆けつけようとしてきたが、これ以上目立たないよう、学園長を急かして手続きをすすめさせた。
「さすがにアカデミーでは殺さないんじゃないのか……? 」
ズラッと並べられたのは30体のシャドー。周りの生徒は顔を引きつらせていた。
その一体一体がAランク、Sランク攻略者レベルに設定したようだ。
一年生のSクラスなど、まだ現役攻略者でいえばCランクかそこらと考えると、殺しにきてると言えないこともない布陣ではある。
「これは壮観だな。だが、少々数が少なかろう?」
「フォガード学園長!?これは……」
「よい。大まかなことはわかっておる。それより、リカエルくんがやる気になったというならこれでは数が足らんだろう。持ってきた」
そう言うとどこからともなく30の隊列が50、60と数を増やしていく。
「学園長……いくらなんでもこれは……」
「よい。それよりも、だ」
「はぁ……」
呆気にとられる講師。流石にここまでやるつもりはなかったようだ。
「リカエルくん、頼みがあるんだが」
「ここまで好き勝手しておいて……?」
「そうそう、その目を見て危惧してな……。頼むから、壊さんでくれよ……10体も壊れたらわしの首が飛ぶ」
「それはいいことを聞いた」
「おおい!?」
30くらいなら周りの生徒にはそれなりに見える形で終わらせられたのに……。100だと話が変わる。
「あの……学園長?一体なにを……」
「君もよく勉強させてもらいなさい」
「はぁ……」
毒気をすっかり抜かれた講師は、ほうけた様子で立ちつくすことになった。
「条件を変えるぞ。リカエルくんのパーティーリーダーの許可はこの100体の制圧じゃ。破壊ではないぞ?いいな?破壊ではないからな?」
「はぁ……。 わかったよ……」
それにまぁ、流石に壊してしまうとまずいだろう。制圧、停止なら言い訳できても、破壊は難易度がまた跳ね上がる。
「いよいよリカエルくんの本当の力が見れるんだね!」
「私も楽しみです……」
「ん。久しぶりに見れる。でも、気をつけた方がいい」
「え?」
マリーが警告してくれたならあれをやってもいいな。
「ほれ、仕切り直しじゃ。はじめよ」
「はっ!わかりました。それでは、覚悟はいいな?」
「いつでも」
「では」
意識を集中して身体を流れる魔力の量とスピードを上げる。
「始め!」
「きゃっ!」
「なんだ!?」
開始の合図と同時に、固めた魔力を一気に放出する。俺が2つ目のダンジョンをクリアして得た力。膨大な魔力量という武器をふんだんに使った、おそらく世界で俺しか使えないだろうとっておきの1つだ。
「これは……こんなことが……」
終始バカにしたような態度だった講師と生徒の表情が一変した。
「なんだこれ……立って……られな……」
「なんなの!?何が!?」
「これ、あの、Cクラスが何かしてるっていうの?!」
観客も余波を受けている。
Sランク最上位のフローラ姫でも、歯を食いしばってこちらを見ていた。
「これが……私が見たかった景色……」
「姫様も3年間でああなるんですね……」
「あれは、私も無理。真似しないでいい」
さて、そろそろ動こう。
魔力は普通、属性に変換することで力を発揮する。ただし、変換にあたって、少なからず魔力をロスするのが普通だ。それだけ考えると魔力を変換せずにぶつければ効率がいいという話があるが、純粋な魔力は扱いが複雑だ。
体内では大きな効果を持っていても、空気中に放出するとそのエネルギーを維持できない。結果的に、体外へ放つタイミングで属性に変換するのが最も効率がいい運用になっているというわけだが、俺の場合物量に任せて魔力波を放つだけで相手の動きも阻害できる。
「飛べるようになってからは使ってなかった力だ。光栄に思えよ」
目の前に対峙するシャドーだけに、聞こえないとわかっていたが声をかけた。
何体かのシャドーは危機を察知して動いたが、8割は動きがない。魔力波に気を取られて動けないのか、スピードについてこられなかったかはわからないが。
俺だけが早く動ける、スローモーションのような世界の中でシャドーの電源を1つずつ落としていく。
「おい……なんか見えないけどシャドーが」
「何が起きてるの……」
「俺、息が……」
「私も苦しい……」
シャドーだけでなく見学者にも影響が出てきてしまったようだ。放つ魔力を調整して、シャドーが動けるようにした。
「やっとシャドーが!」
「今までのはなんかおかしかったんだ……」
シャドーの不具合かと思ったらしい。
「これであいつも終わりだ!」
「やれ!」
Sクラスにとって俺はあまり良く思われてはいないことを再確認させられる。まあ今はそちらを気にしている余裕はないな。
半分以上は戦闘不能に追い込んだが、まだ30以上のシャドーがいる。それらが一斉に襲いかかってきた。
「少し派手な技にしよう」
目立ちたがりのあいつの技を真似て、炎を身体に纏わせていく。シャドーを焦がすほど、白く強い炎を身にまとう。見ようによっては多分、フローラ姫の十八番に見えるだろう。
「光魔法?!」
「いや!あれはただの炎魔法だ!」
「バカ!あれが炎でたまるか!どんな練度で練り上げたらあんな光るんだ!」
「でも光魔法なんてもっとありえないだろ?! 」
「見掛け倒しじゃないのか?」
超高熱の炎は、一般的な火属性の魔法と異なり、周囲を焼いて焦がすことはない。
ただその光で闇を切り裂く。一点集中で放たれる超高熱魔法は、火属性とは似て非なる特性を兼ね備えるようになる。あの研究バカに教わった受け売りだが、そんな話だったはずだ。
「いくぞ」
かざした手を横薙ぎに振り回す。それに合わせて纏っていた炎が一本の線になってシャドーの束を切り裂いていった。
「あれが……炎魔法だけであんな威力なんて……」
「光魔法が使えるなら、すぐ追いつく」
フローラ姫がどこか悲しげな表情になっていたが、マリーがフォローしていた。珍しいな、マリーが他人を気遣うか。俺が見てない間に何か変化もあったのかもしれない。
「これでいいか?」
呆けていた講師に声をかける。
声が返ってきたのは学園長のほうだった。
「壊してないだろうな……?」
「シャドーが壊せるはずないじゃないですか」
「そう見えんから心配したんだ……そもそもあの魔法はなんだ……大賢者以外に白炎が使えるなど……」
どうもあの研究バカはいまは大賢者とか呼ばれているらしい。今度あったらそのネタで小一時間いじってやろう。
「賢者様の魔法だって?!」
「本当に何者なんだあいつ!?」
生徒が我に返ったように騒ぎ始めたことでようやく仕切り役の講師も意識が戻ってきた。
「認めよう……。リカエルをパーティーリーダーとする」
「ん」
「一段落ですね」
フローラ姫が駆けつけようとしてきたが、これ以上目立たないよう、学園長を急かして手続きをすすめさせた。
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