旧 ペットショップを異世界にて
戦闘開始
「よし、じゃあいくか」
「はい!」
トパーズに現地のぎりぎりまで運んでもらいつつ、様子を伺う。
「手紙って、もう来ないんですか?」
「いや、方針を決めて一度出してはいる。余裕があれば返事もあるかもしれないし、もう少ししたら回収する」
「わかりました!」
「でもまぁ、手紙がなくてもなんとなく想像できることもあるしな」
すでに何度もぶつかっているエリスとプライドで飯を食ってきたような貴族、オルドル。
こいつらが正面からやりあっているわけだしな。
「サモン」
手紙は、あるな。
「何が書いてありますか?」
「まぁ、おおむね予想通りだ」
ほのかに読み終えた手紙を渡す。
「あ~……」
手紙の内容はシンプルだった。
――エリスが限界。
「本当なら一瞬で勝負を決めたいところだけど、相手は貴族だしギルドから依頼もでてるからなぁ」
「どうするんですか?」
「まぁ、そのあたりはエリスが何とかしてるだろうと思う」
時間はかけられないとはいえ、正面から殴り倒せば解決というわけではない。
そんな簡単に済ませられるなら、今頃エリスが少なくとも3回は集まった冒険者もろとも地の底に沈めている。
「フェイクエッグたちで協会側の気を引いている間が勝負だから、時間もないんだけどな」
「私は何をすれば?」
「冒険者が変な動きをしないか見といてくれ。その中に協会側の人間が混ざっていることも十分考えられるから」
「わかりましたっ!」
ほのかは魔力を凝らしてよく見れば、かなりミーナに近いことができると踏んでいる。
そうでなくても、冒険者に不穏な動きがあるならそれはもうほのかに任せようと思う。
オルドルの相手に集中しないと、下手に怪我でもさせると面倒だからな……。
「さて、じゃあそろそろさっき置いてきたフェイクエッグは開放する」
「もう着くんですね!」
あれで敵は混乱、味方には狼煙代わりってことになる。
手馴れた冒険者はあの程度で取り乱さないだろうが、慣れていない協会の人間だとぼろが出てもおかしくない。すくなくともオルドルなら崩しのきっかけくらいにはなってくれるだろう。
「さて、登場は派手に行こうか」
「どうやって……?って、また落ちるんですか!?」
「サモン!」
そうは言いながらもしっかり着いてくるほのか。
ひとまずほのかにはさっきまで乗り継いできた白竜の中でも、最初に乗って休めている子に乗ってもらう。
「アツシさん!?」
同じタイミングで白竜がに乗っていない俺に焦ったように声をかけながら追いかけてくる。
心配するなとジェスチャーを送りながら、こちらも着地を兼ねて召還の準備に入る。
「サモン」
今回はわかりやすくインパクトがあったほうが良いだろう。シンプルにインパクトを求めるなら、やっぱり竜だ。
「大きい……!」
「地竜の中でも最大種、赤地竜」
「この子って、ソウさんとレオさんのときの?」
「よく覚えてたな」
あのときに商品として見せた個体と同じ。
商品であってもパートナーとしての商品価値向上のために、トレーニングを兼ねてこうして実践に投入することは珍しくない。
地上を見れば、偉そうな服を着た人間が何かを指示する様子が見える。
フェイクエッグを見て騒ぎ立てているんだろうが、冒険者達はまだ静観ムードだ。
地上に到達する直前、トパーズの幻術を解く。
ほとんど同時に、巨大なそれは地面をえぐるように地響きを起こし、土埃を巻き上げ、その姿を見せる。
「ひっ……」
どこからともなく悲鳴に似た短い叫びが聞こえる。
「さて、うちの店に何か用かな。貴族さん」
固まるオルドルを尻目に、好き勝手冒険者達が騒ぎ始める。
「赤地竜に、乗ってる?!地竜ってそんな、えぇ!?」
「よく見ろ、白竜までいるぞ」
「昨日の大ムカデも竜と同じようなもんだった……どうなってるんだ……」
余り見ない顔の冒険者達だな。それもそうか。
依頼の内容を少し見ればうちがわかる。ギルドで俺と接点があった人間は積極的に参加していないだろう。
「美味しすぎる話だとは思ったんだ……森で簡単な討伐をするだけであの報酬なんて……」
「テイマーのスキルを持って辺境で小汚い店をやってるって話じゃなかったのか?」
「そもそもテイマーって言ったって、普通こんなのは扱いきれないだろ」
「どうするんだ?!」
冒険者がざわついている間にエリスの元へたどり着く。
「あら、来ちゃったのね」
「このままだとお前に店を壊されかねないと思ってな」
「失礼ね、ここまで店のお守りをさせておいて」
「それもそうか。よく我慢してくれた」
「腑に落ちないけれど、まぁいいわ。あとは任せていいのね?」
「こっちはな。エリスは森に蟲を」
「もうやってるわ」
「さすがだ」
役割分担は済ませた。
フェイクエッグでは騒がなかった冒険者もざわつきだしたわけだが、以外にもオルドルはこれを統制する能力は持っていたようだ。
自ら1歩前にでて、俺と向き合う。
緊迫した空気を感じ取った冒険者は再び静けさを取り戻し、俺とオルドルへ注目が集まった。
「貴様があの店の店主か」
「そうだ。見たところあまり友好的な雰囲気ではなかったな。うちのが何かやらかしたか?」
尊大に人を見下すその姿勢。典型的な貴族の子息といったところだった。
子息とはいえもういい年、そろそろ領主の地位も見据えていることだろう。立派に整えた髪と髭、見下すその角度のせいで、割れたあごがこちらへ向いている。
「ふんっ。この一大事に暢気なものだな……森がどうにかなってえいることくらい、お前もわかるだろう?」
「もちろんだ。俺はそのために森にいたわけだからな」
俺の発言にまた、不慣れな冒険者がひそひそと声を上げ始めた。
「もう森に?」
「竜をつれて……?じゃあもう森は」
「いや、万が一これでまだざわついてるといわれても、竜が必要なところに踏み込んでいくのか……?俺達」
装備を見たところDランクか、よくてC。
後ろで大人しくしている冒険者にはAランクやBランクとしてギルドで見かけたやつもいるが、大人しくしているな。
「森の様子のことなら俺から話せばいいだろう?うちの店は取り扱ってるものが特殊だからな。こうも店の前で大人数で騒がれると、影響がないとも言い切れない。散ってもらえると助かるけどな」
「その必要はない。お前がその邪魔なやつらをどかせば、私の兵が森のことなどどうとでもしてくれる」
「お言葉だが、この状況に対してろくに情報収集もせずに飛び込もうとするやつに任せろと言われてもなぁ?」
「くっ……無礼な!先ほどから私を誰か知っての発言だろうな?!」
思ったより早く権威にすがってしまったな。
「メイリル帝国オルドル男爵家長子、デイン=オルドルだろう?」
「そこまでわかっていて私にその口の利き方か。いいか?これは国家命令に基づく行動だ。私を止めるというなら、国に背く覚悟を持って行うが良い」
「そうさせてもらう」
権威を盾に強行突破。シンプルだが一番いい形に誘導できた。
あとは先に手を出してくれればそれでいい。
「焼き払え!」
「ん?!」
予定通り過ぎる流れに油断しきっていた。こうも典型的な貴族、典型的にプライドをコントロールしやすい相手だと楽勝かと思っていたが、オルドルの口から出た言葉は、こちらの予想を大きく外れていた。
「はっ!」
応えた私兵団の一角から魔力が溢れる。
溢れた魔力は光の柱のように空へ伸び、そして
店の真上に降り注いだ。
「はい!」
トパーズに現地のぎりぎりまで運んでもらいつつ、様子を伺う。
「手紙って、もう来ないんですか?」
「いや、方針を決めて一度出してはいる。余裕があれば返事もあるかもしれないし、もう少ししたら回収する」
「わかりました!」
「でもまぁ、手紙がなくてもなんとなく想像できることもあるしな」
すでに何度もぶつかっているエリスとプライドで飯を食ってきたような貴族、オルドル。
こいつらが正面からやりあっているわけだしな。
「サモン」
手紙は、あるな。
「何が書いてありますか?」
「まぁ、おおむね予想通りだ」
ほのかに読み終えた手紙を渡す。
「あ~……」
手紙の内容はシンプルだった。
――エリスが限界。
「本当なら一瞬で勝負を決めたいところだけど、相手は貴族だしギルドから依頼もでてるからなぁ」
「どうするんですか?」
「まぁ、そのあたりはエリスが何とかしてるだろうと思う」
時間はかけられないとはいえ、正面から殴り倒せば解決というわけではない。
そんな簡単に済ませられるなら、今頃エリスが少なくとも3回は集まった冒険者もろとも地の底に沈めている。
「フェイクエッグたちで協会側の気を引いている間が勝負だから、時間もないんだけどな」
「私は何をすれば?」
「冒険者が変な動きをしないか見といてくれ。その中に協会側の人間が混ざっていることも十分考えられるから」
「わかりましたっ!」
ほのかは魔力を凝らしてよく見れば、かなりミーナに近いことができると踏んでいる。
そうでなくても、冒険者に不穏な動きがあるならそれはもうほのかに任せようと思う。
オルドルの相手に集中しないと、下手に怪我でもさせると面倒だからな……。
「さて、じゃあそろそろさっき置いてきたフェイクエッグは開放する」
「もう着くんですね!」
あれで敵は混乱、味方には狼煙代わりってことになる。
手馴れた冒険者はあの程度で取り乱さないだろうが、慣れていない協会の人間だとぼろが出てもおかしくない。すくなくともオルドルなら崩しのきっかけくらいにはなってくれるだろう。
「さて、登場は派手に行こうか」
「どうやって……?って、また落ちるんですか!?」
「サモン!」
そうは言いながらもしっかり着いてくるほのか。
ひとまずほのかにはさっきまで乗り継いできた白竜の中でも、最初に乗って休めている子に乗ってもらう。
「アツシさん!?」
同じタイミングで白竜がに乗っていない俺に焦ったように声をかけながら追いかけてくる。
心配するなとジェスチャーを送りながら、こちらも着地を兼ねて召還の準備に入る。
「サモン」
今回はわかりやすくインパクトがあったほうが良いだろう。シンプルにインパクトを求めるなら、やっぱり竜だ。
「大きい……!」
「地竜の中でも最大種、赤地竜」
「この子って、ソウさんとレオさんのときの?」
「よく覚えてたな」
あのときに商品として見せた個体と同じ。
商品であってもパートナーとしての商品価値向上のために、トレーニングを兼ねてこうして実践に投入することは珍しくない。
地上を見れば、偉そうな服を着た人間が何かを指示する様子が見える。
フェイクエッグを見て騒ぎ立てているんだろうが、冒険者達はまだ静観ムードだ。
地上に到達する直前、トパーズの幻術を解く。
ほとんど同時に、巨大なそれは地面をえぐるように地響きを起こし、土埃を巻き上げ、その姿を見せる。
「ひっ……」
どこからともなく悲鳴に似た短い叫びが聞こえる。
「さて、うちの店に何か用かな。貴族さん」
固まるオルドルを尻目に、好き勝手冒険者達が騒ぎ始める。
「赤地竜に、乗ってる?!地竜ってそんな、えぇ!?」
「よく見ろ、白竜までいるぞ」
「昨日の大ムカデも竜と同じようなもんだった……どうなってるんだ……」
余り見ない顔の冒険者達だな。それもそうか。
依頼の内容を少し見ればうちがわかる。ギルドで俺と接点があった人間は積極的に参加していないだろう。
「美味しすぎる話だとは思ったんだ……森で簡単な討伐をするだけであの報酬なんて……」
「テイマーのスキルを持って辺境で小汚い店をやってるって話じゃなかったのか?」
「そもそもテイマーって言ったって、普通こんなのは扱いきれないだろ」
「どうするんだ?!」
冒険者がざわついている間にエリスの元へたどり着く。
「あら、来ちゃったのね」
「このままだとお前に店を壊されかねないと思ってな」
「失礼ね、ここまで店のお守りをさせておいて」
「それもそうか。よく我慢してくれた」
「腑に落ちないけれど、まぁいいわ。あとは任せていいのね?」
「こっちはな。エリスは森に蟲を」
「もうやってるわ」
「さすがだ」
役割分担は済ませた。
フェイクエッグでは騒がなかった冒険者もざわつきだしたわけだが、以外にもオルドルはこれを統制する能力は持っていたようだ。
自ら1歩前にでて、俺と向き合う。
緊迫した空気を感じ取った冒険者は再び静けさを取り戻し、俺とオルドルへ注目が集まった。
「貴様があの店の店主か」
「そうだ。見たところあまり友好的な雰囲気ではなかったな。うちのが何かやらかしたか?」
尊大に人を見下すその姿勢。典型的な貴族の子息といったところだった。
子息とはいえもういい年、そろそろ領主の地位も見据えていることだろう。立派に整えた髪と髭、見下すその角度のせいで、割れたあごがこちらへ向いている。
「ふんっ。この一大事に暢気なものだな……森がどうにかなってえいることくらい、お前もわかるだろう?」
「もちろんだ。俺はそのために森にいたわけだからな」
俺の発言にまた、不慣れな冒険者がひそひそと声を上げ始めた。
「もう森に?」
「竜をつれて……?じゃあもう森は」
「いや、万が一これでまだざわついてるといわれても、竜が必要なところに踏み込んでいくのか……?俺達」
装備を見たところDランクか、よくてC。
後ろで大人しくしている冒険者にはAランクやBランクとしてギルドで見かけたやつもいるが、大人しくしているな。
「森の様子のことなら俺から話せばいいだろう?うちの店は取り扱ってるものが特殊だからな。こうも店の前で大人数で騒がれると、影響がないとも言い切れない。散ってもらえると助かるけどな」
「その必要はない。お前がその邪魔なやつらをどかせば、私の兵が森のことなどどうとでもしてくれる」
「お言葉だが、この状況に対してろくに情報収集もせずに飛び込もうとするやつに任せろと言われてもなぁ?」
「くっ……無礼な!先ほどから私を誰か知っての発言だろうな?!」
思ったより早く権威にすがってしまったな。
「メイリル帝国オルドル男爵家長子、デイン=オルドルだろう?」
「そこまでわかっていて私にその口の利き方か。いいか?これは国家命令に基づく行動だ。私を止めるというなら、国に背く覚悟を持って行うが良い」
「そうさせてもらう」
権威を盾に強行突破。シンプルだが一番いい形に誘導できた。
あとは先に手を出してくれればそれでいい。
「焼き払え!」
「ん?!」
予定通り過ぎる流れに油断しきっていた。こうも典型的な貴族、典型的にプライドをコントロールしやすい相手だと楽勝かと思っていたが、オルドルの口から出た言葉は、こちらの予想を大きく外れていた。
「はっ!」
応えた私兵団の一角から魔力が溢れる。
溢れた魔力は光の柱のように空へ伸び、そして
店の真上に降り注いだ。
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