旧 ペットショップを異世界にて
魔法協会
「その話、皇帝の耳には入っていないところで行われているのよね?」 
「え、えっと、多分?私に声をかけてきたのは、協会関係者だから」 
「やっぱり……」 
「協会が絡んでるのか……」 
  
事態はさらにややこしくなる。
いや、考えようによってはシンプルになるのか? 
  
「協会?」 
  
ほのかが首を傾げる。
  
「あぁ。魔法協会。冒険者ギルドより小規模だけど、ある程度自分たちで生活基盤を構築できている団体だ。魔法の研究、発展のための組織ってことになってる」
「そんなものがあるんですね」
「ルベリオンでは協会の力も大きくてな。国民の4割くらいは協会員だと思っていい。特に何をするってわけじゃないけど、ここに所属しておくと例の派閥争いで有利に働くこともあるし、協会内で発言力をつければそれがそのまま国内での発言権になる」 
「もっとも、それを良しとしない人間も多いけれどね。今の皇帝は協会の人間ではないから、そこまで大きな影響力はなかったのだけど……戦争を利用して力を得るつもりかしら」 
協会の名前が出てきたことで事態は複雑になったが、一方で、協会ならやりかねないだろうという思いも同時に湧きあがる。
「聞いている限りだと、そんなにいいものではないんでしょうか?」
「んー。協会は魔法関係の利権を独占しようという動きがあるからな」
「あぁ……」
「でもまぁここの研究のおかげで生活が楽になったりって話もあるから、何とも言えないわけだ。俺としてはあまり関わらずに使えるものだけ使いたいってところだな」
「ほとんどの人間はそう考えているでしょうね」
魔法協会が開発した魔道具はギルドを通じてこちらに流れてくる。割と便利なものも多いが、そういった良い側面以上にがめつさが目立って毛嫌いされるところがある団体だった。
「話を戻すか。この魔法を南の森に使う計画はどこまで進んでるんだ?」
「一応は、私の依頼が失敗した時の保険ってことになってはいるけど……」 
当てにはできないな。
「仮にうちの商品を適当に連れて帰ったら、協会はどうするかな?」
「例の魔法を使うよりは明らかにリスクは少ないわけだし、それで皇国が有利になるだけのものならひとまずそれで皇帝のご機嫌を窺うかしら」
「となると、それこそ竜を百匹みたいな話になるよな?」
「そうね……」
それはできない。三年前と違って、そもそもそんな在庫が今はいない。
「てことは、ベルはうちに白竜が100匹もいると思ってたわけか」
「お恥ずかしながら……」
またもベルがたははと笑った。憎めない笑顔だ。
「それに関しては、ベルが悪いというより、アツシに問題があるわね」
「ええ?!」
ミーナから思いがけない批判が浴びせられた。
「店を名乗るなら、もう少し商品が明確になるようにするべきじゃないのかしら?」
「あー……」
「そうよね?」
ミーナがほのかに問いかける。
「はい。それは本当に、そう思います」
「あら、アツシのことを否定すると怒るかと思ってたけれど」
「そんなことはない」
「いい子を捕まえたわね」
「それはそう思う」
ただただ言う通り動く店員を雇う必要や余裕は、残念ながらうちにはなかった。
ほのかが十分戦力になるだけの考えと、それを表に出せる強さを持ってくれていたことは、うちにとっては大助かりだった。
「さて、話を戻すか。うちの商品でごまかしが効くならいくつか用意するけど、どうする?」
「んー……」
難しい顔をするベル。うちに実際にいるラインナップでは、説得の材料にはなり切れないらしい。
「私の正体は皇国の人間に知られてはいない。龍の姿で戻れば、依頼は無事達成したと判断するとは思うが」 
「龍なんか連れて帰ったら余計目をつけられるだろ」 
  
そんな店を捨て置いておくとは考えがたい。 
「本格的にどうするか決めて行かないといけないな」
「そうね……」
ミーナに目配せをする。
静かに頷いたところをみると、ここまでの話に嘘はない。少なくとももうベルやネロに敵意はないと信用していいだろう。
「どうするか」
ミーナがいる以上、この先の動きに関しては彼女に任せた方が良いだろう。
「人任せなのね……」
「適材適所ってやつだ」
「はぁ……まぁいいわ。とりあえずここまでの情報をまとめるわね」
小言を言いつつもテキパキ仕切り始める。
「ルベリオンでは皇帝も戦争に向けた準備を進めてはいる。これは私も持っていた情報ね」
「協会だけが黒幕ってわけではないんだな」
「残念ながら、そうね。でも、皇帝だっていざ戦争となれば甚大な被害が出ることはわかっているし、そこまで好戦的というわけではないわね」
「その点で協会をコントロールできていないところがあるわけだ」
「協会としては戦争に負けて皇国の力が落ちたとしても、自分たちの立場が良くなるなら良いと考えているでしょうね」
ひどい言われようだが、協会の黒い噂は帝国内や南部のギルドにも知れ渡っている。そう考えると、あながち間違っているとも言えないだろう。
「さて、ルベリオンからすればアツシは鬱陶しい存在だったでしょうし、その方法なら南部の冒険者や帝国を巻き込める。コントロールができるできないに関わらず、協会の動きを止めようとはしないでしょうね」 
「のんきに言ってるけど、結構やばいんじゃないのか。これ」 
ほのかのおかげで軌道に乗りはじめていたというのに……。いや、それは言い過ぎか。これから軌道になるところだったというのに……か。
「このお店としては相当まずいわね」 
  
先ほどまでの表情とは一転して楽しげなミーナ。こうして俺の不幸を楽しんでいる時が一番生き生きしているように思えるところは、本当にどうにかして欲しい……。仮にも皇女なのだから……。
  
「どうにかするつもりがあるのな、ここに手を出したことを後悔させるだけの戦力で迎い討てば良い」 
「あんたが出てくれればそうなりそうだけどな……」 
ネロの提案に切り返したものの、色よい返事を期待したわけではない。
「それはだめね」 
  
反対の声は、予想外にもミーナから上がった。 
  
「ミーナが反対する理由はなんだ?」 
「森の鎮圧だけで戦争を止められるかもしれない。そのためにはネロにここで動いてもらうわけにはいかないのよ」 
「戦争を止める?できるのか?」
そう簡単にこの動き出した流れを止めるのは難しいのではないかと思う。
両国の思惑以上に、協会やギルド員としては、第三者として如何に甘い蜜を吸うかの争いがすでに始まっている。こういった人間たちはむしろ、戦争へ向けた動きを加速させようと画策するはずだ。
 
「絶対とはいえないけれど、やってみる価値は生まれるかもしれないわね。私だって戦争はしたくないし」 
「前回と同じ程度で済むかもしれないってことか」 
「そうね……」 
  
前回を知る俺とミーナの見解は一致していた。 
「え、えっと、多分?私に声をかけてきたのは、協会関係者だから」 
「やっぱり……」 
「協会が絡んでるのか……」 
  
事態はさらにややこしくなる。
いや、考えようによってはシンプルになるのか? 
  
「協会?」 
  
ほのかが首を傾げる。
  
「あぁ。魔法協会。冒険者ギルドより小規模だけど、ある程度自分たちで生活基盤を構築できている団体だ。魔法の研究、発展のための組織ってことになってる」
「そんなものがあるんですね」
「ルベリオンでは協会の力も大きくてな。国民の4割くらいは協会員だと思っていい。特に何をするってわけじゃないけど、ここに所属しておくと例の派閥争いで有利に働くこともあるし、協会内で発言力をつければそれがそのまま国内での発言権になる」 
「もっとも、それを良しとしない人間も多いけれどね。今の皇帝は協会の人間ではないから、そこまで大きな影響力はなかったのだけど……戦争を利用して力を得るつもりかしら」 
協会の名前が出てきたことで事態は複雑になったが、一方で、協会ならやりかねないだろうという思いも同時に湧きあがる。
「聞いている限りだと、そんなにいいものではないんでしょうか?」
「んー。協会は魔法関係の利権を独占しようという動きがあるからな」
「あぁ……」
「でもまぁここの研究のおかげで生活が楽になったりって話もあるから、何とも言えないわけだ。俺としてはあまり関わらずに使えるものだけ使いたいってところだな」
「ほとんどの人間はそう考えているでしょうね」
魔法協会が開発した魔道具はギルドを通じてこちらに流れてくる。割と便利なものも多いが、そういった良い側面以上にがめつさが目立って毛嫌いされるところがある団体だった。
「話を戻すか。この魔法を南の森に使う計画はどこまで進んでるんだ?」
「一応は、私の依頼が失敗した時の保険ってことになってはいるけど……」 
当てにはできないな。
「仮にうちの商品を適当に連れて帰ったら、協会はどうするかな?」
「例の魔法を使うよりは明らかにリスクは少ないわけだし、それで皇国が有利になるだけのものならひとまずそれで皇帝のご機嫌を窺うかしら」
「となると、それこそ竜を百匹みたいな話になるよな?」
「そうね……」
それはできない。三年前と違って、そもそもそんな在庫が今はいない。
「てことは、ベルはうちに白竜が100匹もいると思ってたわけか」
「お恥ずかしながら……」
またもベルがたははと笑った。憎めない笑顔だ。
「それに関しては、ベルが悪いというより、アツシに問題があるわね」
「ええ?!」
ミーナから思いがけない批判が浴びせられた。
「店を名乗るなら、もう少し商品が明確になるようにするべきじゃないのかしら?」
「あー……」
「そうよね?」
ミーナがほのかに問いかける。
「はい。それは本当に、そう思います」
「あら、アツシのことを否定すると怒るかと思ってたけれど」
「そんなことはない」
「いい子を捕まえたわね」
「それはそう思う」
ただただ言う通り動く店員を雇う必要や余裕は、残念ながらうちにはなかった。
ほのかが十分戦力になるだけの考えと、それを表に出せる強さを持ってくれていたことは、うちにとっては大助かりだった。
「さて、話を戻すか。うちの商品でごまかしが効くならいくつか用意するけど、どうする?」
「んー……」
難しい顔をするベル。うちに実際にいるラインナップでは、説得の材料にはなり切れないらしい。
「私の正体は皇国の人間に知られてはいない。龍の姿で戻れば、依頼は無事達成したと判断するとは思うが」 
「龍なんか連れて帰ったら余計目をつけられるだろ」 
  
そんな店を捨て置いておくとは考えがたい。 
「本格的にどうするか決めて行かないといけないな」
「そうね……」
ミーナに目配せをする。
静かに頷いたところをみると、ここまでの話に嘘はない。少なくとももうベルやネロに敵意はないと信用していいだろう。
「どうするか」
ミーナがいる以上、この先の動きに関しては彼女に任せた方が良いだろう。
「人任せなのね……」
「適材適所ってやつだ」
「はぁ……まぁいいわ。とりあえずここまでの情報をまとめるわね」
小言を言いつつもテキパキ仕切り始める。
「ルベリオンでは皇帝も戦争に向けた準備を進めてはいる。これは私も持っていた情報ね」
「協会だけが黒幕ってわけではないんだな」
「残念ながら、そうね。でも、皇帝だっていざ戦争となれば甚大な被害が出ることはわかっているし、そこまで好戦的というわけではないわね」
「その点で協会をコントロールできていないところがあるわけだ」
「協会としては戦争に負けて皇国の力が落ちたとしても、自分たちの立場が良くなるなら良いと考えているでしょうね」
ひどい言われようだが、協会の黒い噂は帝国内や南部のギルドにも知れ渡っている。そう考えると、あながち間違っているとも言えないだろう。
「さて、ルベリオンからすればアツシは鬱陶しい存在だったでしょうし、その方法なら南部の冒険者や帝国を巻き込める。コントロールができるできないに関わらず、協会の動きを止めようとはしないでしょうね」 
「のんきに言ってるけど、結構やばいんじゃないのか。これ」 
ほのかのおかげで軌道に乗りはじめていたというのに……。いや、それは言い過ぎか。これから軌道になるところだったというのに……か。
「このお店としては相当まずいわね」 
  
先ほどまでの表情とは一転して楽しげなミーナ。こうして俺の不幸を楽しんでいる時が一番生き生きしているように思えるところは、本当にどうにかして欲しい……。仮にも皇女なのだから……。
  
「どうにかするつもりがあるのな、ここに手を出したことを後悔させるだけの戦力で迎い討てば良い」 
「あんたが出てくれればそうなりそうだけどな……」 
ネロの提案に切り返したものの、色よい返事を期待したわけではない。
「それはだめね」 
  
反対の声は、予想外にもミーナから上がった。 
  
「ミーナが反対する理由はなんだ?」 
「森の鎮圧だけで戦争を止められるかもしれない。そのためにはネロにここで動いてもらうわけにはいかないのよ」 
「戦争を止める?できるのか?」
そう簡単にこの動き出した流れを止めるのは難しいのではないかと思う。
両国の思惑以上に、協会やギルド員としては、第三者として如何に甘い蜜を吸うかの争いがすでに始まっている。こういった人間たちはむしろ、戦争へ向けた動きを加速させようと画策するはずだ。
 
「絶対とはいえないけれど、やってみる価値は生まれるかもしれないわね。私だって戦争はしたくないし」 
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