ペットショップを異世界にて~最強店長の辺境スローライフ?!〜
014 パーティー
「昨日のオリジナル魔法でもうドッキリは終わりだと思ってたんだけどな……」
「これは私も想定外よ……」
「あはは……」
次の日、ほのかの土竜たちはしっかり仕事を果たし、驚くべき報告を持ってきた。
「まさかほんとにあったなんてね……」
「まぁこりゃ、見つからないのも頷けるな」
土竜が見つけた金塊は、この周囲のボスになるライオン型の魔物の群れの下にあった。
周囲の魔物の平均レベルがランクB相当。ということは、ボスクラスはAランクパーティーで互角、万全を喫するならそれより上が必要ということになる。
「私達が来ていてよかったわね」
「可愛そうな気もするけどなぁ……」
「アツシがテイムしてあげたらいいんじゃないの?」
「流石にうちもキャパシティが……」
大型のパートナーたちは需要もあるとはいえ維持費が馬鹿にならない。
そして放し飼いでいいとはいってもある程度場所は用意してやる必要もある。
「金塊を見つけておいてちいさいことを気にするのね」
「これはほのかの取り分だからな」
「本人はちっともそんなこと、思ってなさそうだけど?」
ほのかは胸に手を当ててキョトンとした顔をしている。
「えっと……手伝ってもらってますし……お世話になってますし……」
ほのかの気持ちは嬉しいが、金額がわからない。場合によっては今後のほのかの生活のために持っておいてもらったほうがいいと思う。
「それと! できれば私も、あの子達を殺しちゃうより、アツシさんにお願いしたいです」
「まぁ、今の所何の罪もない魔獣だしね」
「そうか……じゃあ今回はパーティーでやるか」
「むしろあの群れにホノカ1人で挑ませようとしていたのね、アツシ……」
「え……?」
オリジナル魔法なんぞ作れる魔法使いならあの程度楽勝じゃないのか……?
ほのかのBランクなんてもはや飾りであることは誰の目にも明らかだ。
「実戦経験がないのよ。アツシだってハクをテイムしてからも最初は苦戦していたでしょうに……」
「あー……」
5年も前になると覚えていないものだな。
「確かに初陣でボスはきついか」
「はい……」
ほのかも心底安心したという顔をしている。
「じゃ、作戦を立てよう」
言わずともエリスには伝わっているだろう。今回の目的は勝利ではなく、ほのかに経験を積ませることだ。
◇
「確認するわね」
「はい!」
作戦はこうだ。
まず俺がハクを解き放ちダンジョンの群れに突っ込む。
あの魔物の性質として、戦いを挑まれれば群れのリーダーは受けざるを得ない。それがどれだけ彼我の差が明確であっても、だ。
リーダーを除いた群れのメンバーは散り散りになって逃げる。これは追わない。
一騎打ちになったところでほのかに行動封じの魔法を使ってもらう。
これを俺がテイムして終わりだ。
小回りの聞くエリスの魔法は今回遊撃補助として待機。万が一の守りに徹する。
「魔物の特性はアツシに聞けば間違いないわね」
「いや、エリスのほうがこの世界の知識は詳しいだろ」
基本的な魔物の情報に関しては、エリスはギルドでも知り得ない情報を持っている。そこに俺が元の世界の動物の行動パターンや経験から情報を加えていく。
「お2人についていけば大丈夫だということだけはわかりました……」
初陣のほのかは今回いちばん重要な役割を与えつつ、安全は確保した。
ゆくゆくは自分で色々考える必要が出てくるだろうが、今回くらいはサービスでいいだろう。相手も相手だ。
「じゃ、行くぞ。サモン」
「わっ! ハク!」
ほのかによく懐いているハクは手を広げるほのかの胸に飛び込んでいってじゃれつく。
「ふふ……可愛らしいわね」
「なんかこう、癒やされるよな」
さて、ハクを出したことで向こうの見張り役に気づかれたようだ。
「やるぞ」
「任せたわ」
エリスは周囲に虹をまとう蟲魔法を展開して備える。
ほのかも緊張した面持ちで頷いた。
「ハク!」
「グルルゥ」
ハクの纏うオーラが一気に開放される。
ライオン型の魔物たちが一気に身体を起こしこちらを見る。
「いけ」
「グルゥウウアアアアアアアアア」
ハクが動き出した瞬間、群れは2手に分かれた。
否、一匹が群れから飛び出しハクに飛びかかり、他のすべての魔物は反対側へ逃げ出した。
「流石。読みどおりじゃない」
「この手の魔物は他で見たことがあったからな」
「さて、じゃあ予定通り、頑張りなさい」
「はい……!」
あとはほのかの見せ場だ。もちろんこの周囲のボスであるあいつは強いが、ハクとあの魔物では力の差が大きすぎる。時間はいくらかけても問題はない。
「いきます……!」
「この魔法はね、多分今後、ホノカを何度も救う魔法」
「はい」
「記念すべき1回目ね」
「どんな魔法なんだ?」
エリスがそういうということは、昨日のオリジナル魔法と並ぶほどの魔法が出てくるということになる。
「ハク! 避けてね!」
ほのかの声に応えてハクが魔物の攻撃を交わしつつ射線を空ける。
魔物とほのかが一直線に繋がり、その視界にお互いの姿を捉える。
魔物が一気に駆け出す。ハクを相手にするよりはいい相手だと判断したのだろう。その判断自体は間違いではないが、甘かったな。
「ホーリープリズン!」
ほのかが魔法を紡ぐ。
光の柱が魔物を囲い込み、そのままその体を浮き上がらせる。
「これ……聖属性か」
「そう。この世界で生きる上で、多分一番使い勝手が良くて、一番便利な魔法の1つね」
「確かに、これはそうだなぁ……」
聖魔法はダメージを与えるための魔法ではないが、4大属性と異なり明確な弱点がない。
そのため純粋な魔力勝負でほのかに勝てなければ取り壊すことのできない檻となるわけだ。
「エリスより大きい魔力量がそのまま生きる魔法ってことか」
「そう。今この子が使える魔法でおそらく、最も強力ね」
「アツシさん、あとはお願いします」
手を突き出したままほのかがこちらを向く。
慣れない魔法のコントロールに苦戦しているかと思えば、その表情には余裕が見て取れた。
「わかった」
囚われた魔物に近づく。すっかり怯えた表情だ。そりゃそうだろうな……。周辺一帯では最強の種族、その中でも群れのリーダーとして君臨し続けていた強者が、逃げたくても逃げられないような魔獣に襲われ、次の瞬間には身動きも取れず捕らわれたわけだ。
「心配しなくていい」
ここまで追い込めば肉がどうこうも必要ない。
直接“テイム”にうつった。
「なるほど……」
助かるなら何でもいいという雰囲気だったが、群れの長としての矜持だけは失っていないようだ。
テイムの条件。
こちらはいつもどおり、こちらへの害を加えず、協力を要請するもの。
相手からだされた条件は、仲間へ手を出さないことだった。
「うまくいったかしら?」
「大丈夫だ。ほのか」
「はい!」
ほのかが魔法を解除し、魔物が自由になる。
テイム済みなので大人しく頭を垂れている。これから一緒にいるというのに元気がないのも気になるからな。
「ほれ」
「?」
いつもの肉を差し出すと、下を向きっぱなしだった魔物が恐る恐るという様子でこちらを見上げてきた。
「もうお前は仲間なんだ。さっきみたいに堂々としてろ」
すっかり自信を失って萎縮しているが、これでも普通のBランクの冒険者たちなら束になっても勝てない強力な魔物なんだ。
やはり恐る恐る近づいてきて、何度か肉の匂いを確認して目の色を変えた。自分で用意しておいてなんだが、この肉なんかやばいものでもはいっているのだろうか……?
「名前つけてあげませんか?」
「名前か。なんかいい案あるか?」
すっかり餌に夢中になった魔物を撫でながらほのかが言う。
「ライオンに似てますよね、リオンとかどうですか?」
「フランス語かなんかだったか? いい響きだな」
「ですよね! どうかな? リオン!」
ほのかが撫でながら声をかける。呼ばれたほうが自覚がないから不思議そうにほのかを見つめている。
「あれ? 気に入らなかったんですかね?」
「いや、そうじゃないな」
魔物の目に徐々に生気が宿る。自分がそう呼ばれたことに気づき始めたんだろう。
「もう一回呼んでやるといい」
「わかりました! じゃあ、リオン!」
そういって手を広げてリオンを呼ぶ。ようやくしっかりと呼ばれたことを自覚し、嬉しそうにほのかにじゃれついていった。
「動物の扱い、アツシより上手なんじゃないの?」
「やめろ。ほんとにそんな気がしてるんだから……」
ハクが慰めるように手に頭を擦り付けてくれていた。
「これは私も想定外よ……」
「あはは……」
次の日、ほのかの土竜たちはしっかり仕事を果たし、驚くべき報告を持ってきた。
「まさかほんとにあったなんてね……」
「まぁこりゃ、見つからないのも頷けるな」
土竜が見つけた金塊は、この周囲のボスになるライオン型の魔物の群れの下にあった。
周囲の魔物の平均レベルがランクB相当。ということは、ボスクラスはAランクパーティーで互角、万全を喫するならそれより上が必要ということになる。
「私達が来ていてよかったわね」
「可愛そうな気もするけどなぁ……」
「アツシがテイムしてあげたらいいんじゃないの?」
「流石にうちもキャパシティが……」
大型のパートナーたちは需要もあるとはいえ維持費が馬鹿にならない。
そして放し飼いでいいとはいってもある程度場所は用意してやる必要もある。
「金塊を見つけておいてちいさいことを気にするのね」
「これはほのかの取り分だからな」
「本人はちっともそんなこと、思ってなさそうだけど?」
ほのかは胸に手を当ててキョトンとした顔をしている。
「えっと……手伝ってもらってますし……お世話になってますし……」
ほのかの気持ちは嬉しいが、金額がわからない。場合によっては今後のほのかの生活のために持っておいてもらったほうがいいと思う。
「それと! できれば私も、あの子達を殺しちゃうより、アツシさんにお願いしたいです」
「まぁ、今の所何の罪もない魔獣だしね」
「そうか……じゃあ今回はパーティーでやるか」
「むしろあの群れにホノカ1人で挑ませようとしていたのね、アツシ……」
「え……?」
オリジナル魔法なんぞ作れる魔法使いならあの程度楽勝じゃないのか……?
ほのかのBランクなんてもはや飾りであることは誰の目にも明らかだ。
「実戦経験がないのよ。アツシだってハクをテイムしてからも最初は苦戦していたでしょうに……」
「あー……」
5年も前になると覚えていないものだな。
「確かに初陣でボスはきついか」
「はい……」
ほのかも心底安心したという顔をしている。
「じゃ、作戦を立てよう」
言わずともエリスには伝わっているだろう。今回の目的は勝利ではなく、ほのかに経験を積ませることだ。
◇
「確認するわね」
「はい!」
作戦はこうだ。
まず俺がハクを解き放ちダンジョンの群れに突っ込む。
あの魔物の性質として、戦いを挑まれれば群れのリーダーは受けざるを得ない。それがどれだけ彼我の差が明確であっても、だ。
リーダーを除いた群れのメンバーは散り散りになって逃げる。これは追わない。
一騎打ちになったところでほのかに行動封じの魔法を使ってもらう。
これを俺がテイムして終わりだ。
小回りの聞くエリスの魔法は今回遊撃補助として待機。万が一の守りに徹する。
「魔物の特性はアツシに聞けば間違いないわね」
「いや、エリスのほうがこの世界の知識は詳しいだろ」
基本的な魔物の情報に関しては、エリスはギルドでも知り得ない情報を持っている。そこに俺が元の世界の動物の行動パターンや経験から情報を加えていく。
「お2人についていけば大丈夫だということだけはわかりました……」
初陣のほのかは今回いちばん重要な役割を与えつつ、安全は確保した。
ゆくゆくは自分で色々考える必要が出てくるだろうが、今回くらいはサービスでいいだろう。相手も相手だ。
「じゃ、行くぞ。サモン」
「わっ! ハク!」
ほのかによく懐いているハクは手を広げるほのかの胸に飛び込んでいってじゃれつく。
「ふふ……可愛らしいわね」
「なんかこう、癒やされるよな」
さて、ハクを出したことで向こうの見張り役に気づかれたようだ。
「やるぞ」
「任せたわ」
エリスは周囲に虹をまとう蟲魔法を展開して備える。
ほのかも緊張した面持ちで頷いた。
「ハク!」
「グルルゥ」
ハクの纏うオーラが一気に開放される。
ライオン型の魔物たちが一気に身体を起こしこちらを見る。
「いけ」
「グルゥウウアアアアアアアアア」
ハクが動き出した瞬間、群れは2手に分かれた。
否、一匹が群れから飛び出しハクに飛びかかり、他のすべての魔物は反対側へ逃げ出した。
「流石。読みどおりじゃない」
「この手の魔物は他で見たことがあったからな」
「さて、じゃあ予定通り、頑張りなさい」
「はい……!」
あとはほのかの見せ場だ。もちろんこの周囲のボスであるあいつは強いが、ハクとあの魔物では力の差が大きすぎる。時間はいくらかけても問題はない。
「いきます……!」
「この魔法はね、多分今後、ホノカを何度も救う魔法」
「はい」
「記念すべき1回目ね」
「どんな魔法なんだ?」
エリスがそういうということは、昨日のオリジナル魔法と並ぶほどの魔法が出てくるということになる。
「ハク! 避けてね!」
ほのかの声に応えてハクが魔物の攻撃を交わしつつ射線を空ける。
魔物とほのかが一直線に繋がり、その視界にお互いの姿を捉える。
魔物が一気に駆け出す。ハクを相手にするよりはいい相手だと判断したのだろう。その判断自体は間違いではないが、甘かったな。
「ホーリープリズン!」
ほのかが魔法を紡ぐ。
光の柱が魔物を囲い込み、そのままその体を浮き上がらせる。
「これ……聖属性か」
「そう。この世界で生きる上で、多分一番使い勝手が良くて、一番便利な魔法の1つね」
「確かに、これはそうだなぁ……」
聖魔法はダメージを与えるための魔法ではないが、4大属性と異なり明確な弱点がない。
そのため純粋な魔力勝負でほのかに勝てなければ取り壊すことのできない檻となるわけだ。
「エリスより大きい魔力量がそのまま生きる魔法ってことか」
「そう。今この子が使える魔法でおそらく、最も強力ね」
「アツシさん、あとはお願いします」
手を突き出したままほのかがこちらを向く。
慣れない魔法のコントロールに苦戦しているかと思えば、その表情には余裕が見て取れた。
「わかった」
囚われた魔物に近づく。すっかり怯えた表情だ。そりゃそうだろうな……。周辺一帯では最強の種族、その中でも群れのリーダーとして君臨し続けていた強者が、逃げたくても逃げられないような魔獣に襲われ、次の瞬間には身動きも取れず捕らわれたわけだ。
「心配しなくていい」
ここまで追い込めば肉がどうこうも必要ない。
直接“テイム”にうつった。
「なるほど……」
助かるなら何でもいいという雰囲気だったが、群れの長としての矜持だけは失っていないようだ。
テイムの条件。
こちらはいつもどおり、こちらへの害を加えず、協力を要請するもの。
相手からだされた条件は、仲間へ手を出さないことだった。
「うまくいったかしら?」
「大丈夫だ。ほのか」
「はい!」
ほのかが魔法を解除し、魔物が自由になる。
テイム済みなので大人しく頭を垂れている。これから一緒にいるというのに元気がないのも気になるからな。
「ほれ」
「?」
いつもの肉を差し出すと、下を向きっぱなしだった魔物が恐る恐るという様子でこちらを見上げてきた。
「もうお前は仲間なんだ。さっきみたいに堂々としてろ」
すっかり自信を失って萎縮しているが、これでも普通のBランクの冒険者たちなら束になっても勝てない強力な魔物なんだ。
やはり恐る恐る近づいてきて、何度か肉の匂いを確認して目の色を変えた。自分で用意しておいてなんだが、この肉なんかやばいものでもはいっているのだろうか……?
「名前つけてあげませんか?」
「名前か。なんかいい案あるか?」
すっかり餌に夢中になった魔物を撫でながらほのかが言う。
「ライオンに似てますよね、リオンとかどうですか?」
「フランス語かなんかだったか? いい響きだな」
「ですよね! どうかな? リオン!」
ほのかが撫でながら声をかける。呼ばれたほうが自覚がないから不思議そうにほのかを見つめている。
「あれ? 気に入らなかったんですかね?」
「いや、そうじゃないな」
魔物の目に徐々に生気が宿る。自分がそう呼ばれたことに気づき始めたんだろう。
「もう一回呼んでやるといい」
「わかりました! じゃあ、リオン!」
そういって手を広げてリオンを呼ぶ。ようやくしっかりと呼ばれたことを自覚し、嬉しそうにほのかにじゃれついていった。
「動物の扱い、アツシより上手なんじゃないの?」
「やめろ。ほんとにそんな気がしてるんだから……」
ハクが慰めるように手に頭を擦り付けてくれていた。
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