ペットショップを異世界にて~最強店長の辺境スローライフ?!〜
008 ペットショップへようこそ
「さて、どれから紹介するかな」
店の外では、どれもこれも人より大きな、まさに魔獣という表現がぴったりの異形の生き物たちが各々自由に過ごしている。
「私、こんなところで寝てたんですか……」
ほのかの顔が若干引きつっているのも無理はない。
店の外は“テイマー”のスキルで手懐けた魔獣の待機場所だ。柵も檻もない。言うなれば庭で猫が集まってきて寝ているような、彼らからすればそのような認識でここにいる。
そこにいるのは猫ではなく、人の二倍の大きさはある大きな鳥、睨み合う地竜と風竜、横になって大きなあくびをする白い虎といった魔獣たちだが……。
「アツシさんが早起きだったことに感謝します……」
ここで倒れるように寝ていたことを知ったほのかは、手を合わせて俺を拝んでいた。
◇
そんなことを言っていたほのかだが、ものの数十分で怯えていた魔獣に打ち解けた。本当に適応能力の高い少女である。
今では地竜にもたれ掛かりながら、ゴロゴロ言って頭を押し付ける大きな猫、ハクを撫でている。
「可愛いですね」
「最初はあんなにビビってたのに……」
「仕方ないじゃないですか! サファリパークでのんきに寝ていたと思ったんです!」
「まあ概ね間違ってはいない……」
半水棲の魔獣たちは、店の裏に作った自作プールで涼んでいることだろうし、水陸両用サファリパークである。
「この子はアルビノっていうやつですか?」
ハクを指してほのかが言う。
「いや、アルビノは黒の色素を持たない個体を指すから、こいつみたいなのは白変種、リューシスティックって言うんだよ。アルビノは目が赤くなるからな」
ハクの目は深い碧をしている。見た目は完全にホワイトタイガーだ。魔法が使えると言う点が元の世界にいた虎との大きな違いだろう。
「元の世界の虎と、少しずつ違いますね。柄の入り方とか」
「え、そうだったのか。見た目はホワイトタイガーだなと思ってたから種族名は考えてなかったな……」
「良いんじゃないですか?ハクも気にしていなさそうですし」
二人して転がりながら抱き合って戯れている。すっかり意気投合したようだ。
「全部は紹介しきれないけど、他のパートナーも紹介するか」
「パートナーは一匹ではないんですか?」
「そういう決まりはない。ただ、スキルなしで生き物と信頼関係を維持するのは難しいから、普通はハクくらいのサイズなら一匹が許容範囲になるけど」
「なるほど……よくよく考えてみれば、ペットショップというなんとなく馴染みのある場所で過ごしていたおかげで抜けてましたが、この世界のことについて何も知りませんね。私……」
「そもそもスキルとか、まず国や文化も知らないといけないか」
ほのかに簡単な説明をする。
この世界はおおよそファンタジーの世界を思い描いたそれに近いという説明で、幸いなことにほのかには伝わった。よくあるゲームや物語の例に漏れず、魔法に頼った生活ゆえ科学力は元の世界ほどない。
「やっぱり同郷の人間だと、説明が楽だな」
ヨーロッパだとかゲームなんて単語、何年ぶりに使っただろうか。
あとはこの地域、帝国の領土に含まれているそうだが、ほとんど森に差し掛かった辺境の地だ。管理する貴族もいないため、実質この地を取り仕切るのは冒険者ギルドになり、帝国領でありながら多種多様な国から様々な種族が行き交う冒険者の街になっているといった説明も付け加えた。
「冒険者ギルド……行って思いましたが、剣と魔法のファンタジーの世界って感じですね」
「まさにその通りだ。五年住んでるけど今の所ほとんど期待を裏切られたことはないな」
あくまで俺個人の感想でしかなかったが、ほのかとは意見が一致して良かった。
「俺もペットショップだけでは食っていけないから、冒険者をやってるわけだ」
「こんなにたくさん商品があるのに、大変なんですね……」
「まあ、こんなにたくさん商品があるから、だな」
情けないことに、ペットショップ経営は未だ軌道に乗っていない。維持だけで金が飛ぶ一方、実入りはほとんどない状況だ。
「話を変えよう。どうだ? うちの主力商品たちは!」
沈みそうになる気持ちを無理やり切り替えていく。
放し飼いにしているにもかかわらず、あえて店の近くで待機する忠実な魔獣達は、まさにうちの主力商品と言っていいだろう。手塩にかけて可愛がってきた甲斐があるというものだ。
「この庭にいるのは、全部テイムしてあるって言ってましたよね?」
「そうだな。今いないのも含めて、半分放し飼いみたいになってるけど」
「すべてがアツシさんのパートナーですか?」
「いや、ハクや一部を除けば他は売り物になる。トレーニングってことでパートナーとしての活動をすることもあるけどな」
馬よりも丈夫で強く、移動能力だけでなく護衛能力も兼ね備える地竜。人や物を運ぶことのできる生物としては、速さで他を圧倒する翼竜。
こういった実用的なパートナーになる魔獣だけは、貴族が買い取ってくれることもある。
「なるほど……」
しばらく何か考えるようにうつむくほのか。まあ色々考えることはあるだろう。
その間に肉を焼こう。野菜もだ。一部の食材は外にいるやつらと共有する。
しばらくして、顔を上げたほのかが言いづらそうに問いかけてきた。
「“テイマー”って、実際のところどれだけの力があるんですか?」
ほのかの質問に対する答えを探す。
ほのかの言わんとする事はおそらく、テイマーの有効範囲と禁忌に関わる話だ。
店の外では、どれもこれも人より大きな、まさに魔獣という表現がぴったりの異形の生き物たちが各々自由に過ごしている。
「私、こんなところで寝てたんですか……」
ほのかの顔が若干引きつっているのも無理はない。
店の外は“テイマー”のスキルで手懐けた魔獣の待機場所だ。柵も檻もない。言うなれば庭で猫が集まってきて寝ているような、彼らからすればそのような認識でここにいる。
そこにいるのは猫ではなく、人の二倍の大きさはある大きな鳥、睨み合う地竜と風竜、横になって大きなあくびをする白い虎といった魔獣たちだが……。
「アツシさんが早起きだったことに感謝します……」
ここで倒れるように寝ていたことを知ったほのかは、手を合わせて俺を拝んでいた。
◇
そんなことを言っていたほのかだが、ものの数十分で怯えていた魔獣に打ち解けた。本当に適応能力の高い少女である。
今では地竜にもたれ掛かりながら、ゴロゴロ言って頭を押し付ける大きな猫、ハクを撫でている。
「可愛いですね」
「最初はあんなにビビってたのに……」
「仕方ないじゃないですか! サファリパークでのんきに寝ていたと思ったんです!」
「まあ概ね間違ってはいない……」
半水棲の魔獣たちは、店の裏に作った自作プールで涼んでいることだろうし、水陸両用サファリパークである。
「この子はアルビノっていうやつですか?」
ハクを指してほのかが言う。
「いや、アルビノは黒の色素を持たない個体を指すから、こいつみたいなのは白変種、リューシスティックって言うんだよ。アルビノは目が赤くなるからな」
ハクの目は深い碧をしている。見た目は完全にホワイトタイガーだ。魔法が使えると言う点が元の世界にいた虎との大きな違いだろう。
「元の世界の虎と、少しずつ違いますね。柄の入り方とか」
「え、そうだったのか。見た目はホワイトタイガーだなと思ってたから種族名は考えてなかったな……」
「良いんじゃないですか?ハクも気にしていなさそうですし」
二人して転がりながら抱き合って戯れている。すっかり意気投合したようだ。
「全部は紹介しきれないけど、他のパートナーも紹介するか」
「パートナーは一匹ではないんですか?」
「そういう決まりはない。ただ、スキルなしで生き物と信頼関係を維持するのは難しいから、普通はハクくらいのサイズなら一匹が許容範囲になるけど」
「なるほど……よくよく考えてみれば、ペットショップというなんとなく馴染みのある場所で過ごしていたおかげで抜けてましたが、この世界のことについて何も知りませんね。私……」
「そもそもスキルとか、まず国や文化も知らないといけないか」
ほのかに簡単な説明をする。
この世界はおおよそファンタジーの世界を思い描いたそれに近いという説明で、幸いなことにほのかには伝わった。よくあるゲームや物語の例に漏れず、魔法に頼った生活ゆえ科学力は元の世界ほどない。
「やっぱり同郷の人間だと、説明が楽だな」
ヨーロッパだとかゲームなんて単語、何年ぶりに使っただろうか。
あとはこの地域、帝国の領土に含まれているそうだが、ほとんど森に差し掛かった辺境の地だ。管理する貴族もいないため、実質この地を取り仕切るのは冒険者ギルドになり、帝国領でありながら多種多様な国から様々な種族が行き交う冒険者の街になっているといった説明も付け加えた。
「冒険者ギルド……行って思いましたが、剣と魔法のファンタジーの世界って感じですね」
「まさにその通りだ。五年住んでるけど今の所ほとんど期待を裏切られたことはないな」
あくまで俺個人の感想でしかなかったが、ほのかとは意見が一致して良かった。
「俺もペットショップだけでは食っていけないから、冒険者をやってるわけだ」
「こんなにたくさん商品があるのに、大変なんですね……」
「まあ、こんなにたくさん商品があるから、だな」
情けないことに、ペットショップ経営は未だ軌道に乗っていない。維持だけで金が飛ぶ一方、実入りはほとんどない状況だ。
「話を変えよう。どうだ? うちの主力商品たちは!」
沈みそうになる気持ちを無理やり切り替えていく。
放し飼いにしているにもかかわらず、あえて店の近くで待機する忠実な魔獣達は、まさにうちの主力商品と言っていいだろう。手塩にかけて可愛がってきた甲斐があるというものだ。
「この庭にいるのは、全部テイムしてあるって言ってましたよね?」
「そうだな。今いないのも含めて、半分放し飼いみたいになってるけど」
「すべてがアツシさんのパートナーですか?」
「いや、ハクや一部を除けば他は売り物になる。トレーニングってことでパートナーとしての活動をすることもあるけどな」
馬よりも丈夫で強く、移動能力だけでなく護衛能力も兼ね備える地竜。人や物を運ぶことのできる生物としては、速さで他を圧倒する翼竜。
こういった実用的なパートナーになる魔獣だけは、貴族が買い取ってくれることもある。
「なるほど……」
しばらく何か考えるようにうつむくほのか。まあ色々考えることはあるだろう。
その間に肉を焼こう。野菜もだ。一部の食材は外にいるやつらと共有する。
しばらくして、顔を上げたほのかが言いづらそうに問いかけてきた。
「“テイマー”って、実際のところどれだけの力があるんですか?」
ほのかの質問に対する答えを探す。
ほのかの言わんとする事はおそらく、テイマーの有効範囲と禁忌に関わる話だ。
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