剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure(サユレ)

さようなら

王城から、隣国コーリオへとウイプル王国増援軍が向かう。

城門付近で彼らの通る道の左右両脇に、リガード竜騎士団が列を組んで、見送った。

援軍の大将マダリアンテが、竜騎士団の団長アーマンに敬礼をして、それにアーマンが反応する。

勇敢なるウイプル兵士達に、栄光を、と。

アーマンは、声を張り上げて、戦に向かうウイプル兵達を讃えた。

大将のマダリアンテは、顔が真四角な形をしているけど、眼光は鋭いな。

悲観などしていない、その勇ましい表情は、立派だ。



貴方に、栄光を。



ジスエルの16日
              自分の部屋にて

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リガード竜騎士団のタスリアは、僕の2つ年上だ。

彼は、宿屋をするのが夢だと言った。

不思議な男だ。

なぜ、騎士をやっているのか、わからないな。

僕の夢は、何か、と聞かれた。

夢は、見ない事が、夢だ。

この僕らの戦いの末は、きっと幸せな事にはならない。

小国ウイプルが、帝国主義を持つ様な事をしても、身が持たないだろうから。

そう思えるのは、僕だけかな?

君達は、違うといいね。

僕の場合は、きっと。



たとえ戦に勝っても。



結末は、変わらない。



ジスエルの17日
               王城の見張り台にて

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リガード竜騎士団のアーマンは、僕の肩を叩いた。

暗い顔をするな、そう言って、笑っていた。

明るい顔をできる貴方は。

とても不思議だ。

僕は、戦いの中で、信頼を置ける男だから、と。

アーマンは、僕の肩を叩いた。

戦っている間は、仲間になれる、か。

ウイプルのために。

僕の居場所は、このウイプルだから。

居場所を守るために。

ウイプルのために。

そう思えれば、

それが、お母様の希望。


ジスエルの18日
               王城の見張り台にて

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今夜は、北の空が明るい。

マッドク王国の方角だ。

聖バハール王国らのドメイル教。

そして、聖戦。

何かにつけ言いがかりをし、聖戦を始める。

その聖戦の先に、見るものは何だろうか。



全ては理想のために、か。



世界は弱肉強食だ。

弱者は、滅びる。

それだけの事なのかも知れない。


ジスエルの19日
              王城の見張り台にて

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ミスルタは、無事だろうか。

僕と関わらない方が、幸せだろう。

だから、会わなくなった。

幼い頃、色々と面白い話をしてくれたな。

猫がたくさんいる街とか、林檎だけ食べて暮らしている民族の話とか。

作った話だったのか、本当の話なのか、わからないけど。

面白かったよ。

お互いに、成長して。

そして変わった。

悪い方に変わったのは、僕だけだろうね。

君は、いつも優しかった。

そう。

いつも。

そんなミスルタは、素敵だ。

いつまでも、

その優しい君でいて。

ミスルタ。



さようなら…




ジスエルの20日
              王城の見張り台にて

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