殺伐とした別世界に、変態なる国家が現れり リメイク版

ELDIAN

第四話:landing. And witness. (上陸。そして目撃)


 _ネオ・クレセント・シティ港


 埠頭横の階段を駆け上がる青と白の兵士達。彼らはあっという間に上へと登り切ると、即座に周囲警戒を開始する。
 彼らにとって一番の脅威は魔術師。単体での戦闘能力は高くはないものの、集まって攻撃でもされたら兵士は一瞬でお陀仏だ。それは船団であっても変わらない。死ぬことを防ぐためにも、目の前の街で物色するためにも、彼らは万全を期して警戒を行う。
 続いて隊長のクテスが上がると、先行していた兵士より報告を受ける。

 「隊長、周囲に敵らしきものは確認できません!」

 「ご苦労だ!どうやら奴ら、怯えて出てこないみたいだな……!」

 彼は勝手な妄想を口に出し、手に持つ魔導式ライフルを地面に置き肩に背負っていた袋の中から通信魔石を取り出す。
 それを口元に近づけ、はっきりとした声で報告を行う。

 「クテスだ。いつでも上陸できるぞ!」

 彼がそう言い数秒後、今度は船団あちら側から荒い音声で返事が届く。

 『ガッ…かった。お前…はその…ま待機せよ』

 「わかった!待機を続ける!」

 クテスは再度魔石を袋の中に戻し、魔導式ライフルを持ち直す。

 「それにしても隊長……この地面……」

 頃合いを見計らい、その場にいる誰もが疑問に持っていたことを兵士の一人が発言する。

 「継ぎ目も何もない……レンガでも石でもないのに……」

 一同が小さく頷く。確かに、彼らが立つ地面は今まで見たどの舗装道路の材質でもなく、加えて均一な面で構成されている。靴のかかとで蹴ってみれば、強度も確保しているようだった。
 一度とてつもなく巨大な石を切り出したのかとも思ったが、どうやら表面はザラザラとしているようで、一層疑問が深まる。

 「ま、それもこの国デルタニウス王国を占領すれば手に入る!まずは蛮族の掃討といこうじゃないか!」

 「まぁ……それもそうですね」

 そんな彼らを他所《よそ》に、揚陸船は次々と港内部へと侵入。その辺りの小舟を蹴散らし埠頭の一角へと船を着け、細長い木製の板が下される。そこからは続々と……我々から見れば——そう。鞍《くら》を背負った生命体が現れる。その数——約μ'40騎。
 それらは皆一様に青と白を基調とした兵士により縄で引かれ、板を通り地上へと降り立ったところで専属の魔獣騎兵が騎乗する。
 彼らが遠路はるばるここまで連れてきた生命体の名前はエクセリキィΕ ξ έ λ ι ξ η。我が帝国の機動戦の主役、大型肉食系魔獣・・だ。特徴的なのは何と言ってもその速さと持久性で、総合的に見れば、馬を大きく上回る。

 「健闘を祈りますッ!無理はしないで下さいね!」

 エクセリキィの飼育員であろう者は、魔獣騎兵の一人にはっきりとした声で戦果の期待を込めた口調で声をかける。

 「あぁ!」

 一方の魔獣騎兵も笑顔で答えると手綱を持ち、この場から向こうの街めがけてあっという間に走り去る。

 「そろそろ良さそうだな……行くか!」

 歩兵であるクテスらも、全魔獣騎兵が街へと向かったことを確認した時点で行動を開始した。


 _市内


 市内沿岸部から着々と爆発の手が迫り来る中、土埃が充満する道路を、白黒のパトカーがヘッドライトを付け、走行していた。

 「……了解。これより現在港に急行する。オーバー」

 警部のクレインは通信を終了し無線機を置く。
 つい先ほど本部からの通信が届いた。内容は至ってシンプル。”沿岸部に急行し、首謀者を捕縛せよ”だった。未確認の情報らしいが、どうやら港にあの木造船舶が錨を下ろしたらしい。

 「にしても酷い有り様ですね……」

 隣の席に座る巡査のジューンは暗い声で呟く。

 「あぁ……」

 道路のあちこちに放置車両が点在し、建物は爆発でボロボロになり、爆発により生み出された炎は周囲を燃やし、その煙は空高くまで立ち上っている。根元には大小多数の瓦礫が転がり、そして、中には人の形をした……。それが何なのか、わざわざ言う必要はないだろう。

 「噂じゃ中華連邦《C F》の攻撃だとか言われてますけど……どうなんですかね」

 「それは俺にもわからんさ。だが……」

 クレインはショットガンに赤色のショットシェル12Gaugeを装填しながら、確信に満ちた表情でジューンに顔を向ける。

 「こいつが役に立つことだけは確かだな」

 ガシャァン…………

 彼がそう言ったと同時に、車両前方から何かが潰れるような音が響く。
 どうせ瓦礫が放置車両の上に落ちたのだろうと考える。が、それは立て続けに何度も、さらにこちらに近づいてくるようにも聞こえる。

 「……警部」

 車内に電気駆動特有の音が響く中、ジューンは小さな声でクレインの方を向く。

 「……あぁ」

 クレインもこの音に違和感を抱いたのか、そっとパトカーの自動運転をストップ。路上で停止させる。

 「武器の安全装置セーフティは解除しておけ。念のためだ」

 「了解」

 クレインとジューンは素早い手つきでドアを開けると、道路脇の放置車両へと身を潜めた。
 その間も相変わらず、何かを潰すような音は断続的に響いている。

 「うーむ……よく見えないな……」

 「どうにも土埃が邪魔ですね……」

 後少しで見えそうなんだがなぁ、と呟くと目を細め——彼はその、この世のものとは思えないソレを見てしまう。

 「ッ!!!」

 クレインは一瞬ではあったものの、その姿に恐怖を感じた。

 ガッ!ガシャァンッ!ガッ!

 そりゃそうだ。彼が見たのは特徴的、且《か》つ発達した2つの脚。そして、小さな前腕。加えて鱗に包まれ、発達した頭部……その生物。シルエットだけ見ても、それはすぐに分かった。
 ……ヴェロキラプトル・・・・・・・・。ソレに酷似した生物と、その上に乗る誰か・・が、まるで前時代に存在した、騎兵のような様相でこちらに向けて高速で向かってきているなど、誰が想像できただろうか?


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 恐竜ってロマンいっぱいよね。
 今回、執筆頑張った(こなみ。
 なんだかんだで戦闘は次回に引き伸ばされました。作者の気まぐれでs——ごめんなさい。

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