白の血族

九条一

幕間一(05)

 ――織田大陸(おだ たいりく)。近畿地方を中心に勢力を広げ、天下人を名乗っている大大名だ。先進的な装備と斬新な戦術で、敵対勢力を次々に撃破、もはやこの周辺に織田に対抗できる勢力は存在しないと言われていた。
 ……リック……大陸、か。わざわざ『大』をつける傲岸さは、先ほどの武将と重なる。
「お父さん、ごめんなさい。私のせいで……」
「……そんなことはない。……老い先短いワシを……父と呼んでくれて……嬉しかった……ありが…とう……」
 そう言うと、弥平は力尽きた。久しぶりに抱きしめた父は、あまりにも軽かった。
「――お父さん! ああ……ごめんなさい……ごめんなさい……」


 それから村じゅうを回ったが、全ての村人が殺されていた。
 歯向かうものには容赦しない、という噂を、身を以て確かめることになってしまった。
 父の名前を口にしてしまったのが決め手になったのだ。自分の浅はかさを呪った。

 夜通しで村人全員の墓を作った。こんなことで許されるとは思わない。ただ、自分の心を整理するためにやっているのだ。
 空が白む前に村を出た。織田の軍勢がまた押し寄せてくるのは目に見えていたからだ。

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