白の血族

九条一

第一章(20)

『有缘自会相见』

 縁があればまた会える、という意味だろうか。
 古代文字でそれだけを記した手紙が届いたのは昨年の春。オヤジの話だと、おそらく千梨が亡くなる直前だろう。
 その手紙に消印はなかった。今思うとオヤジがウチの郵便受けに直接投函したのだろう。ただ、彼女がオレを忘れていないこと、そして何かしらの事情があって会えないことが伝わってきた。
 いつかきっと、また会える――。
 そう信じていたのに、まさかもうこの世にいないなんてな……。

 涙を堪えて立ち上がる。さあ、今出来ることをしよう。

 ランタンを掲げ、他に変わったものがないか調べていく。
 光の関係でさっきは気づかなかったが、線香立ての影に白い紙が敷いてあり、ペンダントのようなものが置いてある。
 手に取ると、それはロケットペンダントだった。開いてみるとそこには母の写真が入っていた。紙には『お前にやろう』とひと言だけ書かれている。
「……母親の写真を持ち歩くなんて、どんなマザコンだよ」
 そうつぶやきつつも、ジーンズのコインポケットに入れてみた。鎖はその下のポケットに入れ込む。妙にしっくりと納まった。

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