白の血族

九条一

第一章(17)

「――で、その地下室は調べたの?」
「……いや、まだだ。後で調べてくるつもりだ」
「わたしも行っていい?」
 綺華はおそらく母さんのことは覚えていないだろう。まずはオレひとりで何があるか確認してからにするべきかもしれない。
「いや、オレひとりで行ってくるよ。手記に気になることが書いてあったからな」
「……統詞くんがそう言うならしょうがないか。でも、後で何があったか聞かせてよ」
「ああ」
「……じゃあわたしたち、お買い物に行ってくる。杏奈ちゃんの服とか身の回りのものを買わないといけないから」
「あー、そうだな。そっちは頼むわ。金は足りるか?」
「大丈夫。特別費用がまだ残ってるから」
 榊家は代々この富士原市付近に地盤を築いている資産家であり、オヤジは婿養子ということになっている。収入に直結しない遺跡研究を続けられているゆえんだ。
 普段の生活費は榊家が保有する金融資産の利回りや家賃収入で十分やりくりできている。もっとも、ここ最近起きたバブル経済の崩壊から利回りは激減しているので節約は必要だ。そのあたりの管理は綺華が高校に入ってから任せてしまっている。
 ちなみに全ての資産は母が亡くなった際にオレ名義になっており、形式上ではオレがオヤジを養っていることになっている。
「昼メシは外で食べてきてくれ。オレは適当に食べる」
「じゃあ、なんか作り置きしておくよ」
「おう、助かる」

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