白の血族

九条一

第一章(16)

「あと、オヤジの書斎には地下室があるんだ。杏奈にもらった鍵のひとつがそこの鍵らしい」
「地下室? そんなのあったんだ?」
「オレも初めて知ったよ。オヤジのデスクの下に床下収納みたいな扉があったんだ。たぶん、後から作ったものだと思う」
「ああ、統詞くんの部屋にあるみたいな?」
「……なんで知ってる?」
 オレの部屋には自作した床下収納がある。床下収納といってもオレの部屋は二階なので深さ三十センチ程度の簡易的なものだ。現在はその上にじゅうたんを敷いているので、綺華は存在自体を知らないはずだが……。
「統詞くんさー、ビデオテープは見終わったら巻き戻したほうがいいよ。いきなり見せられるこっちの身にもなってよ」
「――だ、誰がお前に見せた! 勝手に見るんじゃねえ!」
「……今はもう分かってるからいいけどさ、一時期、男子全体に幻滅しちゃったんだから」
「お、男はそういうもんだ」
「まあね。でも、中学生だったわたしにはちょっとね……」
 確かに女子中学生にとってアレ系のビデオは刺激が強すぎる。それが見つけられないようにわざわざ簡易的に床下収納を作ったのに……。
「……ねえねえ、ビデオテープって何?」
 杏奈が不思議そうな顔をして尋ねた。その純真な瞳を、直視できない……。
「杏奈ちゃん、聞かないであげてね。統詞くんにもプライドってものがあるんだよ」
 妹に守られるプライド……。なんてちっちゃいんだ……。

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