白の血族

九条一

第一章(11)

『先日山中湖遺跡の奥で、内部に進む新たな通路を発見した。私はこれからその先に進んでみるつもりだ』
 その遺跡の奥には何が隠されているのか……。今までは純粋な好奇心からオヤジの手伝いをしていたが、これからは自分の娘に関連することということになる。千梨が死んでしまった理由も気になる。すぐ、ということはないだろうが、杏奈に突然死なれても困る。
『渡した鍵束の中に金色の鍵がついているだろう。それは地下室の鍵だ。デスクの下を調べてみるがいい』
 地下室? この家にそんなものがあったのか?
 デスクチェアを引き、デスクの下を調べる。六十センチ四方の床下収納のような蓋があった。
『地下室といっても、ただのほら穴に近い。電気は通ってないから十分な準備をして入るがいい。綺音の遺品が保管してある』
 ――榊綺音(あやね)。オレと綺華の母親で、綺華を産んで一年後に病気で亡くなった。その時、オヤジは悲しみのあまり、写真などの母を思い起こさせるものを全て処分した、と言っていた。
 ……なんだよオヤジ、ちゃんと残してたんじゃねーか。
『今回はここまでにしておこう。いきなり多くの情報を与えられると混乱するだろう。続きは地下室を調べてから読むといい』
 …………ふぅ。さて、どうするかね。

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