黄金の将《たった3人の軍団》

ごぼうチップス

第一章 3

魔装具。
別名《アルゲイド》。
アルゲイドは、魔装具の最初の開発者、タリフォン・アルゲイドから名をとってつけられた。
魔装具はその性能から、破壊兵器や殺戮武器と呼ばれその絶大な威力から、その使用の際にいくつかの制限をしている国や、使用を禁止している国さえあった。
アルティミィ大陸中央に位置するアルゲイドの出身国『ハーシェノム王国』では、他の都市国家以上の魔装具を保有しながら、一定以上の権限を持つ者しか使用を許されず、使用する際にも国王の承認が必要だった。
ハーシェノム王国内。
城門前。
二人の警備の兵士が立っていた。
「なあ、そう言えば知ってるか?」
「何がだ?」
「例の光の柱だよ。光の柱」
「ああ、北東の方角に上がったって言う」
「それだよ、それ」
「それがどうしたって?」
「あれ、巷じゃ、アルゲイドの光なんじゃないかって、もっぱらの噂だぜ」
「アルゲイドの?」
「そうさ、あんな離れた距離からぶっとい光の柱が見えたんだ。俺たちの知らない何らかの秘密兵器か、はたまたアルゲイドの光じゃないと説明がつかないってな」
「しかし、東の国々にはアルゲイドの保有国はそんなに存在しなかったはずだよな?」
「いや、おそらく俺の見解だと、あれはフォルデギウスのアルゲイド。ソイツが発動した光だったんじゃないかって睨んでる」
「へえ、フォルデギウスのね・・・」



3週間前。
西の城塞《レイバーン城塞》城門前。
フォルデギウスには4つの城塞がフォルデギウス王国の大城壁にくっつく形で併設されていた。
西の城塞レイバーン、軍港を兼任する北の城塞ホーディル、東の城塞ヘルケド、南の城塞セプテン。
4つの城塞と、王国内に存在するいくつかの通りの名は、かつてこのフォルデギウスを守護していたとされる英雄たちの名を冠してつけられたものだ。
「着け心地は抜群。流石は、エレクト工房の逸品」
レムリは装備した防具を確認するようにいじくりながら、エレクト工房が製作した軽装鎧と外套を眺める。
「この外套は鮫皮を鞣したなめした物か。そして、こっちの鎧は鰐皮を何重にも合わせて作られている。それに思った以上に軽い」
「どう・・はぁはぁ・・ですか?問題・・はぁはぁ・ないですか?」
エレクト工房の新米職人であるクラフトは息を切らしながら、そうレムリに聞く。
「お前さんが息を切らしながら追ってきたから、何事かと思ったが、まさかこいつを届けるために追ってきたとはな」
「はぁ・・はぁ・・はい」
「もしかして、こいつはお前さんが作ったのかい?」
「はぁ、ふぅ・・・いえ、いや、まあ、私だけでと言うか、親方との合作なんです、それ」
「合作、そうか。それで」
「はい」
外套の内側、今さっき気づいたのだが、色糸によって文字が書かれていた。
《簡単に死ぬなよ》
「あの男らしい。どうせ俺よりも、俺が死んだ時の魔装具の心配でもしていたんだろうな」
「・・あははっ」
図星か。
「兎に角、助かった。あいつに礼を言っておいてくれ」
「はい!必ず、伝えます!」
「じゃあな、行ってくる」
「あの」
「んっ?」
「お、お気をつけて!」
「ああ」
レムリはクラフトに見送られ、レイバーン城塞を後にした。



レイバーン城塞を後にして2日後。
レムリは道中にあるバイソン大森林にいた。
「さて、今日の獲物はウサギ2羽か」
川の水を汲んで野宿元に戻る途中、獲物を捕るために仕掛けていた罠にウサギが掛かっていた。それも2羽である。
「まあ、俺一人だけだからな。十分だろ」
テント前に火をおこし、ウサギを丁寧に捌いていく。
そして、焚き火の炎で吊るし焼きにしていく。
「さて、肉が焼ける間、敵軍の現在の予想位置を確認しておくか」
レムリは大陸の地図を広げ、思案する。
アドート軍の進軍スピードと、敵軍の規模を計算に入れて、だいたいの居場所を推察する。
「相手は何万規模、少しぐらい予想が外れても奇襲と言うかたちで先制攻撃が可能かもしれん」
これができるのも、出発前に少しばかりだが、情報を貰っていたからだ。
「ダレルの爺さんさまさまだな。情報こそ最も重要な要素。これこそ、戦場を左右する・・」
しばらく考え込んでいると、レムリは焼いている肉の方を見る。
おっ、お肉さん焼けたかな。
レムリは、焼けたウサギ肉を取ると、ふぅふぅとしながら思い切りかぶりつく。
「うん、旨いな。ふぅふぅ」
レムリは2つ目のウサギ肉も平らげると、ふぅと一息吐いて夜空を見上げた。
「数は数万、魔装具があるとは言え、敵にも魔装具保有者がいないとも限らない」
とは言え、アドート軍に魔装具が存在するとは聞いた事がないが。
「とりあえず、寝るか」
睡眠は大事だ。これを怠る兵士はいざ戦場に立った時、役に立つ事は少ないだろう。
「お休み・・・」
レムリは誰に伝える事もなく、床につく。




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