黄金の将《たった3人の軍団》

ごぼうチップス

第一章 1

アルティミィ大陸。この大陸には、いくつもの都市国家が存在していた。
なかでも、巨大な軍事力を誇る国が2つ存在する。
それがフォルデギウス王国とアドート帝国だった。
フォルデギウス王国は、大陸の北東部に位置し、巨大な壁に囲まれた港湾都市として、他の都市国家との海洋貿易によって栄えた歴史ある国だった。
一方、アドート帝国は、フォルデギウス王国の西部に位置し、新興国でありながら、強力な騎馬軍団を率いて他国を次々と侵略、一大版図を築き上げた軍事国家である。
「それで、次にアドート帝国が狙う国がこのフォルデギウスと言うわけか」
「そうだ」
「ですが、早すぎるのではありませんか?アドート帝国がフォルデギウス王国の隣国オベファルを陥落させたと一報が入ったのが約一週間前。少なく見積もっても、次に侵攻を開始するには1ヶ月は掛かるはず、それなのにこの早さは異常と言うしか・・」
「ああ、ワシもそう踏んでおったが、どうやら奴らの背後がきな臭いようでな」
「バックについている連中がいるって言うのか?」
「まあ、ワシが送り込んだ情報屋の話によるとじゃ。まだ、現段階では情報不足なのだ。精査する時間があまりにも足りない」
「・・そうか、仕方がないだろうな。それよりだ、その前に気になった事がある」
「?・・何じゃ?」
「なぜ、こんな重要な話を、俺たちだけに話した?どこからどう見ても、他の連中も交えて、作戦室で話すべき内容だと思うが」
「・・・」
「おい、爺さん」
ダレルは急に口を閉ざすと、深刻そうな顔が更に深刻になる。
珍しいな、いつもの爺さんらしくない。
「何か口にできない事でもあるのですか?」
「いや、そうではない。だが、これがおおやけになると、まずい事になる」
「何だよ、いったい」
「・・・・・・」
ダレルは黙ったまま席を立ち、紙と羽根ペンを出してきて、そこにスラスラと文字を書き始める。
「「!?」」
そこに書かれた事は衝撃の内容だった。
《我が軍の上層部に裏切り者がいる》と。
「どう言う事だ」
「そ、それでは、この事が」
「ああ、可能性が高い」
なんて事だ。俺たちフォルデギウス軍内部に裏切り者がいるだと!?
レムリは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、ノヴァは顔面蒼白と言った感じだった。
「あ、あの、珈琲が入りました?み、皆さん、どうされたのですか?」
そう3人が固まっていると、温かい珈琲を持ってネアがキッチンから戻ってきてところだった。
「すまんな。ネアちゃん」
「いえ、どうぞ。冷めないうちに飲んでください」
「・・いただくわ」
「・・・」
「レムリ様?」
「ああ、すまん。貰おうか」
3人がネアの入れた珈琲を飲んで、落ち着いたところで、ダレルが口を開く。
「つまり、この侵攻の早さはこの情報に基づいたモノ、だったわけじゃ」
「連中は少なくとも、王国祭の期間中を狙い、こちらへと侵攻してくると?」
「祭りには軍も駆り出されるわ。もしかして、防備の手薄な状況を狙って侵攻してくるなんて」
「そのための間者、そのためのこの異常な早さと言うわけじゃ」
王国祭。
初代国王生誕を祝い一年に一度、2週間の間、王国ではパレードや数々の露店が並び、王国中がお祭り騒ぎになる。
「間者を早急に見つけ出す事も重要じゃが、まずは侵攻してくるアドート軍に対する対抗策を考える事が先じゃ」
「王国祭まで、後一週間しかないわ。その間、いえ、今も敵軍はこちらへと進軍してきている」
「そうじゃ。だが、全軍での防衛はできない。祭りに参加する軍人や兵士が一人もおらず、その事が民に知られれば、国中はパニック状態になるじゃろう。そうなれば、民からの軍への信頼は落ち、ひいては国王への敬愛も地に落ちることになる」
現国王、フォルデギウスⅩⅦ世(52歳)。
彼の優れた統治手腕と民から愛されるその人柄は民たちから賢王と呼ばれ、この時代『フォルデギウスの永久なる平和』と囁かれるようにまでなっていた。
「あの方の耳に入るのも問題じゃ」
「国王様なら、お前たちの好きにせよって言うさ。大丈夫だろ」
「あんた、勝手にそんな事言っていると、いつか酷い目にあうわよ」
「国王様直属の親衛隊にか?」
「それだけじゃないって言ってるの」
「はぁ~・・・まあ、何じゃ。色々とどうするかはこの二日位に考えを纏めんといかんと言う話じゃ」
「おい、そんないい加減でいいのかよ」
「あんたのせいじゃないの?ダレル様、ホトホト困り果てているわよ。あんたのそのいい加減さに、ね」
「そんなお困りなら、俺が片してこようか」
「なんじゃと?」
「えっ?」
「レ、レムリ様!?まさか・・」
さきほどから口を挟まないでおこうとしていたネアの口からも、驚きの声が漏れる。
「だから、俺一人でアドート軍を相手にしてきてやるって言っているんだ」
「「!?」」
「・・・はぁ、やっぱり・・」


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