俺だけが知っている学年マドンナの裏の顔
2話 拡散される事実
彼女の言葉に、耳を疑った。
「今、なんて?」
「だ、だから、私と付き合ってって言ったの!」
どうやら自分が耳にした情報は確からしい。今、彼女は自分に対して交際を持ち込んできた。
「ごめん、なんでさっきの展開からそうなるのか全くわからない。明らかに俺、嫌われるような感じだったよな?」
「そ、そう言う意味じゃないわっ!あくまでも、告白を止めるのに協力して、って意味よ!」
「はぁ?」
つまり、告白が鬱陶しいからデコイとして自分を連れることで彼氏持ちとして諦めさせたいというわけだった。
「だって、なんでもするって言ったわよね?」
「いや、なんでもするなんか一言も........」
「言ったわよね?」
「あっ、はい............」
結局、無言の威圧をかけてくる輝夜に対抗しきれず、形だけの新たなカップル(?)がここに誕生したのだった。
+++
翌日、何も変わることなく登校する。いつも通り自分の席に座れば、見える景色は変わらない..........はずだった。
「ねぇ霞夜、あんた輝夜さんと付き合ってるんだって?」
クラスに1人は必ずいる情報通、そんな役割の女子生徒が、明らかに周りへ聞こえる声でそう聞いてきた。昨日の今日ではあるが、だいたい犯人の予想がついている。
「まぁ、そうだな」
「へぇ〜え?.........え?マジで?」
「おう」
自分と輝夜が付き合っているという情報は、周りに知らせる必要があった。それを彼女が望むからだ。昨日、有無を言わさず承諾された後に言われたのである。
水面が冗談無し、至って真面目に返すと驚愕したように目を開きながら固まってしまった。
クラスメイトはそのやり取りを耳にして一斉に水面の方を向く。
「「はぁぁぁぁぁ!?」」
なんと、昨日と同じ展開になってしまった水面である。
ーー霞夜水面と雪女輝夜が付き合っている
その情報は、2年3組の情報通に始まり、昼休みが訪れる頃には学年全体に知れ渡っていた。その影響は、他のクラスの女子が教室へ顔を見に来るほど。クラスの男子からは一斉に敵視されたような幻覚に陥った。
「やっぱり水面は隅に置けないなぁ」
「やめろ...........やめてくれぇ.........」
頭を抱えて、ありえないくらい大事になった現実から逃避していた。裕司はそれに対して苦笑いで対応する。
「ほら、昼飯食おうぜ」
「ああ..........」
そうして裕司と弁当を開こうとした瞬間。
「お邪魔するわね」
その聞きなれた声に、クラス全員の視線が前方のドアへと注がれる。そこに立っていたのは、案の定、雪女輝夜で。
「あ!水面くん!どうしたの?お昼は一緒に食べようって言ったじゃない。ほら、行きましょう」
そういうが早く、水面の腕を欲望の詰まった双丘で包み、連れ去ってしまった。残されたクラスメイトは、誰一人として数秒間喋ることがなかった。
一方、柔らかい感触を腕に感じながら輝夜に連れ去られた水面は屋上へ来ていた。カップルが屋上で弁当を食べるという、テンプレ的なあれだ。
「ちょ、放せって!」
そう言いながら腕を振り切る。
「あら、こんな美少女のこんな胸に包まれるのは嫌?」
「自分の武器を理解しながら言ってるところが君はあざといぞ。........で、なんであんなことしたんだよ」
「言葉の通りよ?はい、これ」
そう言って彼女が差し出してきたのは、可愛らしいクマのデザインをあしらった包み。持ってみると重量感がある。
「.........なにこれ」
「何って、お弁当だけど」
「.........あのさ、俺達って付き合ってる訳じゃなく、俺が一方的に利用されてるだけだよな?」
「だって、素で愚痴言える相手なんてあなたくらいだし、こうでもしないと予定合わせられないでしょ」
「俺は愚痴のはけ口ですかって.......」
「フフ、愚痴だけに?」
「意識してねーよ」
そこから、なし崩し的に彼女との食事が始まった。弁当を開けてみれば、ひとつの偏りもないバランスのとれた食べ物、かつ色も重視してどこか華やかに見えた。
「.......美味い」
「お口に合うようでよかったわ」
そう言いながら、ふわりと笑う。そんな笑みに、少しでもドキッとしてしまうのはやはり男の性か。そもそも、彼女に笑いかけられれば誰でもこうなってしまうだろう。
その後は、彼女の手作り弁当を食べながら彼女の愚痴を聞きいれていた。不思議と嫌な気がしないのだ、おそらく弁当のせいだろうが。
「あら、もうこんな時間」
「そうみたいだな」
特に時間を惜しむことなく、二人は弁当を片付けて、各自の教室へと解散した。しかしそこには案の定、好奇と嫉妬の視線が入り交じっている。
「おかえり」
「おう。ただいま」
「水面のは代わりに俺が食べといた」
「いやお前、何勝手に........」
「どうせ手作り弁当を食べさせてもらったんだろ?俺、サッカーで激しく動くからちょうどいい量だったよ。水面は手作り弁当で満足して食べれない、俺はちょうどいい補給、winwinだろ?」
「上手いこといいくるめやがって.......」
その後、午後の授業が始まり、瞬く間に時間は過ぎた。授業中に彼女の事を考えてほうける..........なんてことも無く。
「なぁ水面。今日はどうすんだ?」
「どうするって?」
「雪女さんと帰るか?」
「いつも通り一人で帰るよ........全く」
そのまま逃げるようにして水面は帰路へ着いた。
「みーなーもー!」
「ちょ!うわっ!」
とぼとぼ歩く彼の背に柔らかい感触と重量感が。
「何だ、咲希か.......」
「何だってなによ!せっかく可愛い幼馴染がハグサービスしてあげたのに!」
彼女は一夜咲希、彼の幼馴染の1人である。少し茶色に染まった髪をポニーテールで纏め、セーターを腰の辺りで巻いている。いわゆるギャルに近しい服装だ。ちなみに一部の彼女のファンの話ではDカップであるという。
普段は部活をしており、陸上部に所属している。今日はたまたま休みなのだろう。
「咲希ちゃん!ちょっと待ってよ〜........!」
「あ、ごめんごめん。大丈夫?優良」
肩で息をしながら、その少女は顔を上げた。
丁寧に肩甲骨辺りで切られた艶のあるセミロングの髪が揺れる。その顔を見ると、何となく『お淑やか』という印象を受ける。しっかりと学校指定のブレザーを来て、清楚な印象がとても強い。
「え、水面くん.......?」
「久しぶり、優良」
彼女は。彼女も幼馴染の1人である。普段は茶道部と和楽器部を兼部しており、放課後はそのどちらかの部室か図書委員であるため図書室にいる。
その清楚なイメージから学年で雪女輝夜に次ぐナンバー2の位置についており、人望もあった。例の如くファンの話ではEカップであるという情報が。
霞夜水面、一夜咲希、此ノ木優良、彼らは小学校、果てには記憶が無い水面を除いて、3人とも幼稚園からの知り合いであり、幼馴染である。
「久しぶりだね、水面くん」
「そうだな。最近全然会えなかったもんな」
「あんたらクラス違うもんね。ま、私は優良と同じ五組ですけど?」
「なんでそんなに誇らしげな顔してんだよ......」
そのまま彼らはいつも帰る友達のように自然と合流して帰路に着く。やはり幼馴染の絆は深いということなのだろう。
「そういえばお前ら、部活は?」
「あたしは休みー。大会の振り替え〜!」
「私も休みだよ、茶道部も和楽器部も。今日の図書は他の子が当番だし」
「よしっ!じゃあ久しぶりに3人揃ったってことで水面の家行こー!」
「はぁ?なんで俺の家なんだよ」
「いーじゃん。こっからあんたの家が一番近いし、可愛い妹ちゃんもいるし!」
「あ、私も佳奈ちゃんに会いたいな!」
どうやら二人とも合意のようだ。二人して目を輝かせている。結局、水面が折れて美少女二人を家へ連れ込むことに。文面上では変な意味合いになってしまうのは触れてはいけない。
「.....ただいまぁ〜」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します」
その声を聞いて、リビングから騒がしい音がひとつ。髪を肩で綺麗に切りそろえ、ゆったりとしたシャツに半ズボンを着た少女がこちらへ向かってくる。
「おかえり兄さん!........と、後は」
「妹ちゃんやっほー!久しぶりー!」
「久しぶりだね、佳奈ちゃん」
「わぁ!咲希ちゃんに優良ちゃん!久しぶり!」
奥から出迎えたのは霞夜佳奈、水面の妹であった。
「今、なんて?」
「だ、だから、私と付き合ってって言ったの!」
どうやら自分が耳にした情報は確からしい。今、彼女は自分に対して交際を持ち込んできた。
「ごめん、なんでさっきの展開からそうなるのか全くわからない。明らかに俺、嫌われるような感じだったよな?」
「そ、そう言う意味じゃないわっ!あくまでも、告白を止めるのに協力して、って意味よ!」
「はぁ?」
つまり、告白が鬱陶しいからデコイとして自分を連れることで彼氏持ちとして諦めさせたいというわけだった。
「だって、なんでもするって言ったわよね?」
「いや、なんでもするなんか一言も........」
「言ったわよね?」
「あっ、はい............」
結局、無言の威圧をかけてくる輝夜に対抗しきれず、形だけの新たなカップル(?)がここに誕生したのだった。
+++
翌日、何も変わることなく登校する。いつも通り自分の席に座れば、見える景色は変わらない..........はずだった。
「ねぇ霞夜、あんた輝夜さんと付き合ってるんだって?」
クラスに1人は必ずいる情報通、そんな役割の女子生徒が、明らかに周りへ聞こえる声でそう聞いてきた。昨日の今日ではあるが、だいたい犯人の予想がついている。
「まぁ、そうだな」
「へぇ〜え?.........え?マジで?」
「おう」
自分と輝夜が付き合っているという情報は、周りに知らせる必要があった。それを彼女が望むからだ。昨日、有無を言わさず承諾された後に言われたのである。
水面が冗談無し、至って真面目に返すと驚愕したように目を開きながら固まってしまった。
クラスメイトはそのやり取りを耳にして一斉に水面の方を向く。
「「はぁぁぁぁぁ!?」」
なんと、昨日と同じ展開になってしまった水面である。
ーー霞夜水面と雪女輝夜が付き合っている
その情報は、2年3組の情報通に始まり、昼休みが訪れる頃には学年全体に知れ渡っていた。その影響は、他のクラスの女子が教室へ顔を見に来るほど。クラスの男子からは一斉に敵視されたような幻覚に陥った。
「やっぱり水面は隅に置けないなぁ」
「やめろ...........やめてくれぇ.........」
頭を抱えて、ありえないくらい大事になった現実から逃避していた。裕司はそれに対して苦笑いで対応する。
「ほら、昼飯食おうぜ」
「ああ..........」
そうして裕司と弁当を開こうとした瞬間。
「お邪魔するわね」
その聞きなれた声に、クラス全員の視線が前方のドアへと注がれる。そこに立っていたのは、案の定、雪女輝夜で。
「あ!水面くん!どうしたの?お昼は一緒に食べようって言ったじゃない。ほら、行きましょう」
そういうが早く、水面の腕を欲望の詰まった双丘で包み、連れ去ってしまった。残されたクラスメイトは、誰一人として数秒間喋ることがなかった。
一方、柔らかい感触を腕に感じながら輝夜に連れ去られた水面は屋上へ来ていた。カップルが屋上で弁当を食べるという、テンプレ的なあれだ。
「ちょ、放せって!」
そう言いながら腕を振り切る。
「あら、こんな美少女のこんな胸に包まれるのは嫌?」
「自分の武器を理解しながら言ってるところが君はあざといぞ。........で、なんであんなことしたんだよ」
「言葉の通りよ?はい、これ」
そう言って彼女が差し出してきたのは、可愛らしいクマのデザインをあしらった包み。持ってみると重量感がある。
「.........なにこれ」
「何って、お弁当だけど」
「.........あのさ、俺達って付き合ってる訳じゃなく、俺が一方的に利用されてるだけだよな?」
「だって、素で愚痴言える相手なんてあなたくらいだし、こうでもしないと予定合わせられないでしょ」
「俺は愚痴のはけ口ですかって.......」
「フフ、愚痴だけに?」
「意識してねーよ」
そこから、なし崩し的に彼女との食事が始まった。弁当を開けてみれば、ひとつの偏りもないバランスのとれた食べ物、かつ色も重視してどこか華やかに見えた。
「.......美味い」
「お口に合うようでよかったわ」
そう言いながら、ふわりと笑う。そんな笑みに、少しでもドキッとしてしまうのはやはり男の性か。そもそも、彼女に笑いかけられれば誰でもこうなってしまうだろう。
その後は、彼女の手作り弁当を食べながら彼女の愚痴を聞きいれていた。不思議と嫌な気がしないのだ、おそらく弁当のせいだろうが。
「あら、もうこんな時間」
「そうみたいだな」
特に時間を惜しむことなく、二人は弁当を片付けて、各自の教室へと解散した。しかしそこには案の定、好奇と嫉妬の視線が入り交じっている。
「おかえり」
「おう。ただいま」
「水面のは代わりに俺が食べといた」
「いやお前、何勝手に........」
「どうせ手作り弁当を食べさせてもらったんだろ?俺、サッカーで激しく動くからちょうどいい量だったよ。水面は手作り弁当で満足して食べれない、俺はちょうどいい補給、winwinだろ?」
「上手いこといいくるめやがって.......」
その後、午後の授業が始まり、瞬く間に時間は過ぎた。授業中に彼女の事を考えてほうける..........なんてことも無く。
「なぁ水面。今日はどうすんだ?」
「どうするって?」
「雪女さんと帰るか?」
「いつも通り一人で帰るよ........全く」
そのまま逃げるようにして水面は帰路へ着いた。
「みーなーもー!」
「ちょ!うわっ!」
とぼとぼ歩く彼の背に柔らかい感触と重量感が。
「何だ、咲希か.......」
「何だってなによ!せっかく可愛い幼馴染がハグサービスしてあげたのに!」
彼女は一夜咲希、彼の幼馴染の1人である。少し茶色に染まった髪をポニーテールで纏め、セーターを腰の辺りで巻いている。いわゆるギャルに近しい服装だ。ちなみに一部の彼女のファンの話ではDカップであるという。
普段は部活をしており、陸上部に所属している。今日はたまたま休みなのだろう。
「咲希ちゃん!ちょっと待ってよ〜........!」
「あ、ごめんごめん。大丈夫?優良」
肩で息をしながら、その少女は顔を上げた。
丁寧に肩甲骨辺りで切られた艶のあるセミロングの髪が揺れる。その顔を見ると、何となく『お淑やか』という印象を受ける。しっかりと学校指定のブレザーを来て、清楚な印象がとても強い。
「え、水面くん.......?」
「久しぶり、優良」
彼女は。彼女も幼馴染の1人である。普段は茶道部と和楽器部を兼部しており、放課後はそのどちらかの部室か図書委員であるため図書室にいる。
その清楚なイメージから学年で雪女輝夜に次ぐナンバー2の位置についており、人望もあった。例の如くファンの話ではEカップであるという情報が。
霞夜水面、一夜咲希、此ノ木優良、彼らは小学校、果てには記憶が無い水面を除いて、3人とも幼稚園からの知り合いであり、幼馴染である。
「久しぶりだね、水面くん」
「そうだな。最近全然会えなかったもんな」
「あんたらクラス違うもんね。ま、私は優良と同じ五組ですけど?」
「なんでそんなに誇らしげな顔してんだよ......」
そのまま彼らはいつも帰る友達のように自然と合流して帰路に着く。やはり幼馴染の絆は深いということなのだろう。
「そういえばお前ら、部活は?」
「あたしは休みー。大会の振り替え〜!」
「私も休みだよ、茶道部も和楽器部も。今日の図書は他の子が当番だし」
「よしっ!じゃあ久しぶりに3人揃ったってことで水面の家行こー!」
「はぁ?なんで俺の家なんだよ」
「いーじゃん。こっからあんたの家が一番近いし、可愛い妹ちゃんもいるし!」
「あ、私も佳奈ちゃんに会いたいな!」
どうやら二人とも合意のようだ。二人して目を輝かせている。結局、水面が折れて美少女二人を家へ連れ込むことに。文面上では変な意味合いになってしまうのは触れてはいけない。
「.....ただいまぁ〜」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します」
その声を聞いて、リビングから騒がしい音がひとつ。髪を肩で綺麗に切りそろえ、ゆったりとしたシャツに半ズボンを着た少女がこちらへ向かってくる。
「おかえり兄さん!........と、後は」
「妹ちゃんやっほー!久しぶりー!」
「久しぶりだね、佳奈ちゃん」
「わぁ!咲希ちゃんに優良ちゃん!久しぶり!」
奥から出迎えたのは霞夜佳奈、水面の妹であった。
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