異世界でバイオハザード

チーズフォンデュ

主人公一切でない話

「初めましてバケモノくん。」

ラリスは目の前に立つバケモノに対して不敵な笑みを浮かべて話し始める。

「最低でもA級脅威の魔物と聞いてどうせまたつまらない魔物かと思ったけど、君は僕の想像以上だよ!!
その禍々しい見た目に攻撃力、耐久力、そして初めて見る生物…素晴らしい!!僕は君みたいな面白そうな魔物を待っていたんだよ!!
……ここらへん一体の魔物はほとんど敵にならないし、そろそろ場所を変えようと思っていたところだったんだ。…そんなところに、君が現れた!!……フフ、君には期待してるんだから僕を失望させないでくれよ!!」

話を一方的に話した後にラリスは目の前に立つバケモノに向かって走り出す。それは直線的な動きではなくジグザグに走り、翻弄する。

『Gaaaaaaaaxaxaxaxaxaxaxa!!』

バケモノはラリスに向かって右腕を振るうが当たらない。何度も何度も何度も攻撃するが当たらず、すでにラリスはバケモノの後方に回っていた。

「ふんっ!」

ラリスが腰に巻いているウエストポーチから10センチほどの小さな短剣をバケモノの頭部へ向かって放つ。

見事にバケモノの頭部へと刺さるがバケモノは何事もなかったかのように振り返り、ラリスに向かって右腕を振るう。

ラリスは後ろに下り、いったん思考を巡らせていた。

(やっぱり、この魔物には物理攻撃が効かないのか?しかし物理攻撃無効と言うわけではなさそうだし、蓄積はされるが痛みは感じないといったところか…。となるとやはり生命活動を停止させるまで攻撃を続けるしかないということか…、まったく大変だな♪
弱点となりそうなのは頭部か心臓のどちらかが定番だが、こいつに関してはあの大きく肥大した心臓かな?とりあえずやってみるか。)

ラリスは思考を終え、バケモノに向かって走り、その勢いのまま腰につけている片手剣である《聖剣アロンダイト》でバケモノの心臓を突き刺す。

『Guwaaaaaaaxaxaxaxaxaxaxa!!』

バケモノは苦しみだし、周辺に腕を振るって攻撃するがすでにラリスは剣を抜いて場を離れているため、攻撃が当たることはない。

「やはりか…。その大きな心臓が弱点となると、かなり的も大きいし意外と大したことのない、A級程度の実力か…。つまらないな…。」

ラリスは完全に勝負が決まったと思って油断していた。もちろん、冒険者を長年続けているため周囲への警戒、トラップなどに注意をはらうがラリスが油断したのはこれ以上、バケモノが奥の手があるようには思わなかった点だ。

『Gu、guwawawawawawawawaxaxaxaxaxa!』

「な、なんだ!?」

ラリスは初めて見る現象に驚く。それもそうだ、なぜなら目の前のバケモノは突然右腕、右肩が盛り上がり、右腕が3本に増えたのだ。さらにその3本の腕は全て鋭利な爪を持ち、肥大化している。全長5メートルはあり、皮膚は分厚い皮で覆われ、心臓も赤黒い表皮によって先程よりも防御力が上がっている。

そして変化が終わったバケモノはラリスの方を見て、静かに睨む。その目は憎悪と怒りが混じった目でラリスを殺すこと意外は何も考えていない。

「お、驚いたな…。まさか身体が変異するとは…。いや、実にいいよ、また外れかと思ったけど君はどうやら違いそうだ!!」

ラリスは背を低く保ちながら走り、バケモノの前まで行くとバケモノが右腕の一本で攻撃してくる。それを右側に回転するように避け、懐に入るが、バケモノは二本目の腕で後ろに回ったラリスを狙う…が、ラリスは地面を蹴り、バケモノの腕の上を走りだし、顔に向かって剣を振るう。

ザシュッ!!

『Guuuuuu…。』

しかしその剣先を頬をかすらせるだけで終わり、バケモノの左腕がラリスの真上から振り下ろされる。

「が、はっ!!」

ラリスは地面に叩きつけられ、体勢を崩した状態だ。バケモノはそれを好機と三本の腕でラリスを襲う。だがラリスはブリッジの体勢から腕を使いバケモノ攻撃をギリギリで避け、蹴りを食らわせる。

バケモノがその程度の攻撃でひるむことはないが、ラリスは身体を立て直すことができた。 

(ハハ、なかなかやるようだな…。ここまでやるとは思わなかったな…。……このままやっても膝をつくのは僕だ…。仕方ない、この力は使いたくなかったんだけどな。だって…この力を使えば確実に僕が勝つからね。)

「君との楽しい時間もここで終わりだ…。じゃあね、楽しかったよバケモノくん。……《鬼人化》」

途端にラリスの表面に赤い光が包み、ラリスの頭から二本の対になる黒い角が生え、身体はところどころに対称の割れ目ができており、その割れ目から赤い光が漏れる。割れ目は腕は勿論、顔にもあり、頬から目まで繋がった割れ目が見た目を禍々しくする。

ラリスは手を開いたり、握ったりして感覚を取り戻す。バケモノは先ほどから近づいてきており、ラリスが何かをする前に三本の腕で攻撃するも、ラリスは一瞬でバケモノ懐に入り、拳で殴る。

『Gagagagagagagagagagga……!!」

バケモノの腹からラリスの右腕が飛び出ている。そしてラリスは手を抜いて、回転しながら蹴りを食らわす。先ほどは大した威力もなかった蹴りが今回はバケモノを吹っ飛ばすほどの威力になっていた。

「やっぱりね…。この力は戦闘をさせてくれない。何も面白くない。ほんとはドキドキするようなあつい展開を期待するものだが、この力は強くなりすぎる…。君は当たりに位置するんだろうけど…、僕を本当に楽しませたいなら、この程度じゃ満足できないよ。」

ラリスは消えるようにその場に赤い光を少し残して消え、バケモノの前に現れる。そしてラリスは冷めきった目でバケモノの頭を力ずくで取った…。

その後はバケモノは顔だけでも動いていたものの結局何も起こらず、最後には活動を停止した。

「ふぅ…。」

ラリスは《鬼人化》を解いて、元の姿に戻る。

「やはり、この力はまだまだ扱いきれないな。ほんの30秒使っただけなのに疲労度が桁違いだ…。明日は筋肉痛だな…これ。」

ラリスはギルドにバケモノも持って帰るために頭部に近づいていく。

「さすがはラリス・ユリアードだな。」

ラリスの右斜め上の木の枝に立つ男がいきなり現れ、話し始める。その姿は黒いマントに身を包んだ男で、ところどころに紫色のカラスの羽のようなマークが刺繍されている。顔は髪を目元まで伸ばしており、影と同化してあまり、見えない。

「誰だ、お前は?」

「あ〜そういえば自己紹介がまだだったか。俺は闇組織《ヤタガラス》の一人の名をイービル。覚えておくといい。」 

「何?《ヤタガラス》だと?どうしてそんな最大最悪の闇組織と言われている大物メンバーがこんなところに?っとまあ状況的にこのバケモノを作ったのが君と考えれば、全て納得がいくけどね。」

「ところがそうじゃないんだよこれが。俺も騒ぎを知ってからここに来たもんでね。まさかこんな怪物を作れるヤツがいるとすると…ハハハ!!面白いだろ?」

「何?《ヤタガラス》はこの事に関与していないと?」

「あぁ…。だいたいうちに研究者なんていないよ。こんなバケモノを生み出せるなら、もっと有名になっているだろうし、いきなりポッと出てきた天才だ。確実に見つけ出さないとな…。」

「……。」

ラリスは混乱していた。ここまでのバケモノも作り出す奴がいきなり現れた事に。こんなバケモノを生み出せる奴を考えてみたが一人も見当たらない。そもそも研究者など三人しか会ったことがないがいずれも才能のない者がする事で一人として良い結果が生まれたことなど無いのだ。

「っと、少しおしゃべりが過ぎたようだな…。悪いけどそのバケモノの死体は貰っていくぜ。いろいろと調べて、製作者を見つけださなきゃいけないんだ。」

「フフ、その前に僕から逃げ切れるとでも?僕と出会った瞬間に君の運命は決まっているんだよ。」

ラリスは《鬼人化》を発動させる。

「おーおー怖い怖い。けど、もう終わったから無駄だぜ。」

すると目の前の男は霧のように消えていき、同時にバケモノの死体も消えていく。すでにイービルが話に集中させて気を紛らわし、バケモノの死体を回収、のちにフェイクまで置いてすでに逃げていた。

ラリスは《鬼人化》を解いて小さな声で呟いた。

「逃げ足の速い奴め…。」


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