1も始まらない魔王の世界征服
第2話 領地拡大
魔王の部下トロールは魔王の平和的領地拡大に反対し、近くの村を襲撃、建物の破壊を試みたが、それもあまりの村の平和さに戦意喪失。結果的に村は魔王が村に泊まる事を許可した。
その結果に満足した魔王は居ても、村の人間はこの男が魔王である事に気付いていない。
そんな事も気づかない魔王は現在、鎧を脱ぎ捨て、素顔を晒した状態でウルフと日向ぼっこをしていた。
「あぁ〜やっぱり陽の光って気持ちいいなぁウルフ」
「ワフゥ……」
そんな所にニコニコしながらゴブリンが魔王に報告をしてくる。
「魔王様!魔王様!ここの村人達はみんな優しいお方が多くて良いですねぇ〜」
「どうした?ゴブリン?」
「魔王様がのんびりしている間、魔王城との交易と更なる領地拡大の為、周囲の街の人間の呼び込みがされる事が確立しました!」
「へぇ〜やるじゃん。ま、今はそんな事は忘れて、陽に当たろうぜ〜」
「やっぱり気休めは大事ですよね〜」
こうしてゴブリンも日向ぼっこの輪に入り、魔王の周りの状況は更に和む。
しかしそんな状況がいつまでも続く訳が無く、横から入ってきたフロガは肩に担いだ木の丸太を、魔王の腹目掛けて勢い良く叩きつける。
「オラァッ!サボってんじゃねぇ!」
「ぐへぇっ!?何すんだよ!?」
「あぁ?こちとら、襲撃したせいで村が壊滅状態なんだぞ!少しは手伝え!」
フロガは腹を抑えながら蹲る魔王に対し、丸太を魔王の背中目掛けてフルスイングする。
「ぎゃあっ!?マジやめて!?背骨折れたらどうしてくれんの?」
「あぁ?もう一発くらいてぇか?」
「分かった!分かったから!手伝うから待てええええええ!」
フロガは謝る魔王の脳天目掛けて最後の追撃を下す。
「わ……分かった……から……」
「良し!立て!やるぞー!」
しかし魔王は、あまりの強烈な連撃にその場の陽の下で気絶した。
「ワン!ワン!クゥン……」
「良し!ウルフ!テメェは……犬だから狩りでもするか?犬と言ってもあくまで魔狼だからな。他の動物を殺す技術はあんだろ」
魔狼とは、名前通り魔物の狼で、普通の狼とは違い血中に魔力が流れる事で、その魔力が体の外から受ける温度や衝撃に反応し、凡ゆる環境に対応出来るようになっている。
フロガは村の交易が確立したと言えど、村側は畑の副産物で応する事ができるが魔王城には交易に使える産物とも言えず、対等な価値のあるものが城には一切無い事を理解しており、ならば代わりにとウルフが狩った動物の肉でどうだろうか?と考えた。
「ワンワン!ヘッヘッヘ……」
ウルフは動物を狩るという言葉に興奮し涎を垂らす。この涎にはウルフにとっては、狩った後にその場で喰らっても良いという理解の涎である。
決して動物を狩る事自体に興奮しているわけではない。単純に今ウルフは腹を空かしていた。
そんな事も知らずにフロガはウルフに村の周囲にいる動物を狩って来いと、命令した。
二時間後・・・
魔王はやっとの事で気絶から目を覚ました。魔王は自分は気絶していた事を思い出し、空を見れば既に夕方。そして今隣にウルフがいない事に少し心配になる。
「うんん……あれ?ウルフは?」
作業を一旦終了させたフロガは、魔王の目覚めに気がつくと、魔王の問いに呆れた表情で答える。
「やっと目が覚めたかよ魔王。気絶長すぎてもう時間だから作業終わっちまったじゃねぇか……。あ?ウルフ?そういやまだ戻ってねぇな……」
「戻ってない?どこに行かせたんだ?」
「いや、動物の肉を狩ってこいって頼んだんだが……」
魔王はフロガの答えを聞いた瞬間、頭に冷や汗を掻く。
基本ウルフは、仲間意識が高く、懐き易い。しかし、命令は命令でも所詮は犬と変わらない為、忠実に熟す。いや、し過ぎる。
つまり、動物の肉を狩って来いという命令に、『肉を狩る』というワードを犬(狼)なら当然、持って来いとは理解しない。
魔王はウルフが家畜、野生構わず喰い散らかして居るのでは無いかと心配する。
「嫌な予感しかしねぇな……」
魔王は、すぐ様、ウルフを探しに村の外へ出る。
三十分後・・・
「おーいウルフー!」
「ワンワン!」
やっとの事ウルフを見つけた魔王は、目の前に広がる光景が予想通り過ぎて最早何も言葉は出てこない。
魔王の呼び掛けに反応したウルフの足元周囲は、血に染まった草原が広がり、周辺には一切の食べ残しが無く、骨だけ綺麗に残された、恐らく家畜も混ざっているであろう白骨体が沢山転がっている。
「いやぁ、ウルフ沢山食べたなぁ……」
「ガッフ……ワフゥ……ッ!」
ウルフはげっぷをすると、キリッとした顔で自慢げに良い姿勢を取る。
魔王は諦める。ウルフはペットでは無く、元は野性の動物である事を認めなくてはいけないのだと。
それから七日が経ち、村は魔王の手下と村人によって漸く復興が終わった。そして魔王は、村のとある宿の一室で、またこれからどうするべきか頭を抱えている。
「平和だぁ〜暇だぁ〜やっぱり世界征服なんて無理だよ!」
「自分が言い出したんだろうが!」
「誰か案を考えてくれぇ……」
そこでウルフが一つの提案を出す。
「ワンワン!」
「どした?ウルフ?」
ウルフは、魔王が作った魔王特製ウルフ専用おもちゃ箱から積み木を取り出し、一つの立方体の積み木を部屋の中心に置くと、片手を上に置く。
「ワフッ」
「え?また一つ街を潰せって?だから駄目なんだってその方法じゃあ……」
するとウルフは首をぶるぶると振り、否定の姿勢を見せる。
「え?」
ウルフは、おもちゃ箱から積み木を一つ、また一つと取り出すと、部屋の中心に置いてある積み木にくっつけ始めた。
「ワフッワフワフッ……ワン!アウウウウ!」
沢山の積み木をくっつけて一つの纏まりにすると、ウルフは一度強く吠えてから、遠吠えをした。
「あ?何言ってんだ?コイツ?」
「そう言う事か!この調子で同じ様に領地を拡大すればいいんだ!」
「何で分かるんだよ……」
魔王以外はウルフの表現したい事が分からないが、魔王はしっかりと理解し、ウルフの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「っしゃあ!なんかやる気出てきたぞー!」
「お、おう……」
「アオオオオン!!」
こうして魔王は、次の目標をさらなる領地拡大と決めた。
その結果に満足した魔王は居ても、村の人間はこの男が魔王である事に気付いていない。
そんな事も気づかない魔王は現在、鎧を脱ぎ捨て、素顔を晒した状態でウルフと日向ぼっこをしていた。
「あぁ〜やっぱり陽の光って気持ちいいなぁウルフ」
「ワフゥ……」
そんな所にニコニコしながらゴブリンが魔王に報告をしてくる。
「魔王様!魔王様!ここの村人達はみんな優しいお方が多くて良いですねぇ〜」
「どうした?ゴブリン?」
「魔王様がのんびりしている間、魔王城との交易と更なる領地拡大の為、周囲の街の人間の呼び込みがされる事が確立しました!」
「へぇ〜やるじゃん。ま、今はそんな事は忘れて、陽に当たろうぜ〜」
「やっぱり気休めは大事ですよね〜」
こうしてゴブリンも日向ぼっこの輪に入り、魔王の周りの状況は更に和む。
しかしそんな状況がいつまでも続く訳が無く、横から入ってきたフロガは肩に担いだ木の丸太を、魔王の腹目掛けて勢い良く叩きつける。
「オラァッ!サボってんじゃねぇ!」
「ぐへぇっ!?何すんだよ!?」
「あぁ?こちとら、襲撃したせいで村が壊滅状態なんだぞ!少しは手伝え!」
フロガは腹を抑えながら蹲る魔王に対し、丸太を魔王の背中目掛けてフルスイングする。
「ぎゃあっ!?マジやめて!?背骨折れたらどうしてくれんの?」
「あぁ?もう一発くらいてぇか?」
「分かった!分かったから!手伝うから待てええええええ!」
フロガは謝る魔王の脳天目掛けて最後の追撃を下す。
「わ……分かった……から……」
「良し!立て!やるぞー!」
しかし魔王は、あまりの強烈な連撃にその場の陽の下で気絶した。
「ワン!ワン!クゥン……」
「良し!ウルフ!テメェは……犬だから狩りでもするか?犬と言ってもあくまで魔狼だからな。他の動物を殺す技術はあんだろ」
魔狼とは、名前通り魔物の狼で、普通の狼とは違い血中に魔力が流れる事で、その魔力が体の外から受ける温度や衝撃に反応し、凡ゆる環境に対応出来るようになっている。
フロガは村の交易が確立したと言えど、村側は畑の副産物で応する事ができるが魔王城には交易に使える産物とも言えず、対等な価値のあるものが城には一切無い事を理解しており、ならば代わりにとウルフが狩った動物の肉でどうだろうか?と考えた。
「ワンワン!ヘッヘッヘ……」
ウルフは動物を狩るという言葉に興奮し涎を垂らす。この涎にはウルフにとっては、狩った後にその場で喰らっても良いという理解の涎である。
決して動物を狩る事自体に興奮しているわけではない。単純に今ウルフは腹を空かしていた。
そんな事も知らずにフロガはウルフに村の周囲にいる動物を狩って来いと、命令した。
二時間後・・・
魔王はやっとの事で気絶から目を覚ました。魔王は自分は気絶していた事を思い出し、空を見れば既に夕方。そして今隣にウルフがいない事に少し心配になる。
「うんん……あれ?ウルフは?」
作業を一旦終了させたフロガは、魔王の目覚めに気がつくと、魔王の問いに呆れた表情で答える。
「やっと目が覚めたかよ魔王。気絶長すぎてもう時間だから作業終わっちまったじゃねぇか……。あ?ウルフ?そういやまだ戻ってねぇな……」
「戻ってない?どこに行かせたんだ?」
「いや、動物の肉を狩ってこいって頼んだんだが……」
魔王はフロガの答えを聞いた瞬間、頭に冷や汗を掻く。
基本ウルフは、仲間意識が高く、懐き易い。しかし、命令は命令でも所詮は犬と変わらない為、忠実に熟す。いや、し過ぎる。
つまり、動物の肉を狩って来いという命令に、『肉を狩る』というワードを犬(狼)なら当然、持って来いとは理解しない。
魔王はウルフが家畜、野生構わず喰い散らかして居るのでは無いかと心配する。
「嫌な予感しかしねぇな……」
魔王は、すぐ様、ウルフを探しに村の外へ出る。
三十分後・・・
「おーいウルフー!」
「ワンワン!」
やっとの事ウルフを見つけた魔王は、目の前に広がる光景が予想通り過ぎて最早何も言葉は出てこない。
魔王の呼び掛けに反応したウルフの足元周囲は、血に染まった草原が広がり、周辺には一切の食べ残しが無く、骨だけ綺麗に残された、恐らく家畜も混ざっているであろう白骨体が沢山転がっている。
「いやぁ、ウルフ沢山食べたなぁ……」
「ガッフ……ワフゥ……ッ!」
ウルフはげっぷをすると、キリッとした顔で自慢げに良い姿勢を取る。
魔王は諦める。ウルフはペットでは無く、元は野性の動物である事を認めなくてはいけないのだと。
それから七日が経ち、村は魔王の手下と村人によって漸く復興が終わった。そして魔王は、村のとある宿の一室で、またこれからどうするべきか頭を抱えている。
「平和だぁ〜暇だぁ〜やっぱり世界征服なんて無理だよ!」
「自分が言い出したんだろうが!」
「誰か案を考えてくれぇ……」
そこでウルフが一つの提案を出す。
「ワンワン!」
「どした?ウルフ?」
ウルフは、魔王が作った魔王特製ウルフ専用おもちゃ箱から積み木を取り出し、一つの立方体の積み木を部屋の中心に置くと、片手を上に置く。
「ワフッ」
「え?また一つ街を潰せって?だから駄目なんだってその方法じゃあ……」
するとウルフは首をぶるぶると振り、否定の姿勢を見せる。
「え?」
ウルフは、おもちゃ箱から積み木を一つ、また一つと取り出すと、部屋の中心に置いてある積み木にくっつけ始めた。
「ワフッワフワフッ……ワン!アウウウウ!」
沢山の積み木をくっつけて一つの纏まりにすると、ウルフは一度強く吠えてから、遠吠えをした。
「あ?何言ってんだ?コイツ?」
「そう言う事か!この調子で同じ様に領地を拡大すればいいんだ!」
「何で分かるんだよ……」
魔王以外はウルフの表現したい事が分からないが、魔王はしっかりと理解し、ウルフの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「っしゃあ!なんかやる気出てきたぞー!」
「お、おう……」
「アオオオオン!!」
こうして魔王は、次の目標をさらなる領地拡大と決めた。
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