桜餅師匠

穴ぐらの遺体

ほんの小さな町に住んでいる赤大路は、祠の真下の穴ぐらに死体があったのを見つけた。しかも何故か生活感があった。だが祠は明らかに寂れている。性格柄謎を見過ごせない彼は調査をすることにした。
「なぜここに死体。白骨化してない。まだ新しいぞ。」
周りを調べた。土はふかふかだった。彼はありえない仮説を立てて、中に様々物入れた。肉や時計、インテリアなどを入れた。しばらくして、彼はまたここへ訪れた。すると大いに驚くべきことが起こった。
「なんだ、、、懐中時計入れたときの針向きから微動だに、今もしていない。肉は、腐るどころか只の一つも形を変えていない。」
彼の「穴の中のものは時間が止まる」という仮説は、正しいと証明されたも同然だった。しかし、肉と時計を穴の外へ出したとき、また驚くべきことが起こった。肉は急激に腐りきって異臭を放ち、時計は短針すらも急速に動いた。
「これは、、、穴ぐらから出してしまうと、物は過ごせなかった時間を急速に取り戻してしまうのか。」
そのようなことがあっても、彼はあくまで冷静なままだった。肉はそのまま自然返し、時計はまた普段の生活の中になじんでいった。赤大路はまた思考する。祠はすっかり寂れているので、少なくともここを誰かが通った形跡すらない。ましてや祠の下にこのような穴ぐらがあるなどとは気づきしないだろう。つまりこの死体は先人たちが、ここに何かものを入れるとそれらの時間が止まることを知りながら、この死体を遺棄した。
「でもそうだとするならおかしいぞ。死体を自分より長く生かして何が目的だろう。穴ぐら奥なら何か新しい手がかりが掴めるかもしれない。行ってみよう。」
そうして、彼は死体のある場所より、奥に奥に進んでいった。ここまで行くと流石に暗いので、携行していたライトで照らす。するとすぐに行き止まりだった。
「危ねぇ、びっくりした。」
何も手がかりはなかった。思わず肩を落とすがいや、手がかりがないことが手がかりだった。
「先人たちは何がしたかったんだ。死体保存なんてばかげたことを。」
祠の起源は遡るほどだが、ただの一度もこの国に死んでも殺してもいいという規則や政策はなかったはず。だったら、殺した者にとって死体は証拠であるからして脅威。消えてなくならせるが安泰だ。
「待てよ、そいつに傷らしい傷はなかった。衰弱なんてありえない。」
では、どうやって殺したのだろうか。謎はさらに深まってしまった。赤大路は思考の糸を手繰り寄せる。
「傷のない死体、時間止める穴ぐら、誰も来ない、見向きもしない祠、先人たちの理解不能な行動、、、」
彼は裏をつかれたように顔をしかめる。全ては繋がった。
「まさか!前提が間違えていたのか!先人は何もしていない!これは、これは、これは!」
祠が独りでに閉じられたとともに、彼は穴ぐらの外に向かって、最後にこう発信した。
「他殺ではなく、自殺なんだ。」

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