転生したら妖狐な幼女神になりました~前世の記憶と時空創造者~

じゃくまる

目覚めたらベッドの上でした

 ふと、目が覚める。
 周囲を見渡すと、ちょうど窓から徐々に日が差し込んでくる様子が見えた。
 どうやらうっかり長時間寝てしまっていたようだ。

「……」

 体を起こそうとすると、むにゅんと柔らかい感覚に阻まれる。
 原因をそれとなく探ってみると、すぐにわかった。

「クレハお母様にアルマとエリスがなんでボクのベッドの上に寝てるのかな」

 ボクの広めのベッドの上には三人の女性が眠っていた。
 それぞれが思い思いの寝相で寝ているけど、エリスとクレハお母様はボクに上下逆になるように抱き着いている。
 まぁ、エリスは尻尾に抱き着いているんだけどね。
 まるで抱き枕のような扱いである。

「エリス、ボクの尻尾は抱き枕じゃないよ……」

 ボクがそう言っても、エリスは起きない。
 幸せそうに涎をたらしながら尻尾に埋もれている。
 ぐぬぬ。

「アルマは……。うん、あれはだめだ」

 アルマの方を見ると、短めのスカートがめくれ上がり、白いパンツと少しだけはみ出たお尻が丸見えになっている。
 短いスカートを穿いて寝てるからそうなるわけで、ちゃんと寝間着くらいは着てほしいものだ。

「それにしても、まだ早朝も早朝かぁ。日の出時刻ってやつだね」 

 ボクはまだ暗い部屋の中で、設置された時計を見る。
 時間は午前四時半。

「にしても、時計は便利だよね。まぁ完全に正確ではないみたいだけど」

 エリュシオンは球状の世界になっている。
 なので、お日様の方向に背を向けている場所もあり、当然その場所はまだ暗いわけ。
 だからみんなが同じように同じ時間を使うことはできなかった。
 まぁこの辺りの知識は、ボクの中のボクの知識だけどね。

「んふふふ~」

「…………」

 ゆっくりと光量が増してくる世界をぼんやりと眺めていると、ボクの近くで寝ているアルマが不気味な声を上げてくる。

「アルマ、うるさい。黙って寝て」

「アリス様はプニプニすべすべで気持ちいいですな~」

「いや、誰だよ、君」

 寝言とはいえキャラ崩壊し始めているアルマに若干苛立ちを覚えたので、ボクはその無礼なお尻をぺちんと叩いた。

「あんっ」

「ぐぬぬ」

 一回叩いてみると良い音がした。
 お尻からも口からも。
 なのでもう少し叩くことにした。

 ぺちんぺちんぺちん

 そのたびに、アルマの口からは妙な声が漏れ出すので、ボクは何とも言えない気分になる。
 そして――。

「アリス様のえっち~」

 ボクはものすごく笑顔になっていたと思う。
 生まれて初めて顔が引きつる感覚を味わった。
 そして同時に、ものすごくイラッとした。

「裸にひんむいて外に放りだそうかな……」

 ボクの思考がだんだんと怪しい方向へと向かいそうになるころ、アルマが目を覚ました。

「うぅ。おはようございます、アリス様~」

「おはよ」

 寝ぼけまなこのアルマにそう返すと、ボクはベッドを抜け出した。


*********


 ベッドから抜け出したボクは、尻尾に付いたエリスの涎を洗い落とすべく、屋敷内の浴場へと向かう。
 屋敷にある浴場は二十四時間温かいお湯が張られており、いつでも入れる状態になっているのでいつ汚れても安心だ。

「おはようございます、アリス様。これから入浴ですか?」

 浴場前の脱衣所では数人のメイドたちが服を脱いでおり、今まさにこれから入浴しようとしているところだったようだ。
 なのでボクもご一緒することにした。

「うん。エリスに抱き着かれて寝てたんだけど、抱き枕にされた挙句に尻尾を涎まみれにされて……」

 ボクがそう言うと、メイドたちはひそひそと囁き合い始めた。

「うわぁ、エリスったら羨ましい!」

「私もアリス様をもふもふしたいのに……」

「ちょっと、エリスもアルマも良い目に遭い過ぎなんじゃないかしら」

「これはぜひともお話しなければなりませんね」

「でも、考えようによっては今がチャンスでは?」

「ちょっと、どういうこと?」

「今ここにアリス様がいるということは、つまりご入浴される」

「アリス様、お風呂、入浴……。ひらめいた」

「通報」

「通報」

「通報やむなし」

「はい、通報」

 うわっ、だんだんとメイドたちから不気味なオーラが立ち昇り始めて来た!?

 ボクがその光景を見ながら若干引き始めていると、メイドたちの中から一人が代表して出て来て、ボクに「アリス様、一緒に入りませんか? お体を洗わせてください!」と提案してきた。

「ええっと。まぁいいんだけどさ。どうせボクの尻尾が目当てなんでしょ?」

 本音を言えばいいじゃんとか思いながらメイドたちを心持半眼で見つめていると、悪びれもせずに「えへへ」と照れ笑いを返してくる。
 まぁ、別に嫌じゃないからいいけどね? 「代わりにボクもみんなの胸に埋もれさせてもらうけど」とか心の中で考えつつ、二つ返事で了承することにした。

 さっそくメイドたちによって服を脱がされたボクは、みんなを伴って堂々と浴場へと入場を果たす。
 ここから先はお湯と欲望にまみれたパラダイスなのだ。
 そう、まさに肉林!! お酒はないので酒池肉林とは言わない。
 敢えて言うならば湯地肉林だと思う。

「それにしても大なり小なり、みんな個性的だよね」

「アリス様? それはセクハラですよ?」

「あっ、でもカーラは大きいわよね」

「そういうマリエルはスレンダーで可愛いじゃない。いいな~、そういうの。大きいと変な目で見られるから嬉しくないのよ」

「アリス様くらいなほうが一番かわいいと思うけど……」

「そう言えばサマンサは小さな女の子が大好きだよね? 変な目でアリス様を見てないでしょうね?」

「そ、そんなことはないよ!?」

「図星か」

「図星ね」

「へんた~い」

「女の子なら許されるとでも思ったか!」

「あはは、君たちが仲良くてボクは嬉しいよ」

 一緒に入るメイドたちの体はなかなかに個性豊かだった。
 大きさもそれぞれ、形もそれぞれ。
 大きいと疲れそうだし、なさすぎると寂しさを感じるかもしれないのがバストというものだ。
 しかし、ここでは誰憚ることもなくみんな裸なのだ。
 ボクのように眺めながらそれぞれ点をつけて楽しむのもありだろう。

「アリス様~? えいっ、ぷにぷに~。おぉ!? もちすべぷにぷに!?」

「ちょっと!?」

「えぇ!? 本当!? うわっ、本当だ!」

「これは良いツルペタ」

「尊い」

 メイドの一人がボクのお腹にダイレクトプニプニアタックを繰り出した。

 だが、ボクを触ったメイドはなぜかその瞬間に衝撃を受け、何度も指先でプニプニモニモニと突っついたり触ったりを繰り返す。
 挙句、それにつられてやってきた他のメイドたちもボクを触りだす始末だ。
 ボクは抵抗するも空しく、触られるがままだったので、恥ずかしいやらくすぐったいやらでものすごく消耗した。

 でも若干一名、拝むような感じでボクを見ているのがものすごく気になるけど……。

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