転生したら妖狐な幼女神になりました~前世の記憶と時空創造者~

じゃくまる

人界では魔導技術が進歩していないようです

 うちの決まり事その一。
 ティータイムと休憩、そしてご飯はみんなで一緒に同じ時間に。

 なので、ティータイムの時間はみんなが思い思い休みを取ることになっている。
 ずっと働いていても良いことはないので、基本的に夕方の十六時半くらいまでは自由にしていいことになっている。

「アリス様が下界――失礼、人界に降り立つことは関係者にはすでに連絡済みです。昨日のティータイムにお越しになられていた『フェルド様』『クレハ様』『ガリア様』のお三方が引き続きアリス様の保護者をお勤めになります。同日に人界に同行されるのは『ガリア様』と『クレハ様』で、『フェルド様』は自身の神殿の司祭の任があるため、後での合流になる予定です」
 
 ティータイムの最中、アクアが今後の予定について話してくれた。
 ボクはもうすぐで、人界にある『グランアルベスタ王立学園』の初等部に通うことになっている。
 この学園には第一校舎と第二校舎があり、第一校舎が下級貴族を含んだ一般のための学び舎となる。
 王族や中級・上級貴族は皆第二校舎で学ぶことになる。
 学園内で敷地が分断されているらしく、自由に行き来することは不可能となっているようなので、意地の悪い貴族の子供からは一応守られている。

「ふぅん。ガリア叔父さんが行くことになったのかぁ」

 ガリアという人物は、ボクの叔父に当たる人で、お爺様の息子で母の兄にあたる神だ。
 普段は神界で仕事をしているんだけど、こうしてたまにエリュシオンにやってくる。
 本業は『武神』で、主に拳を武器にして戦っている。
 
 ガリア叔父さんは身長が高く、百八十センチくらいある。
 髪は赤毛で、短髪にして綺麗にまとめている。
 特徴的なのは、髪の毛と髭が一体化しているところだろうか。
 顔の両脇にあるもみあげが髭と繋がっているため、そう見えるのだ。
 それと、ガリア叔父さんの青い眼はキリッとしていてかっこいいと思う。
 ちなみに、肌の色は日焼けしたような色をしており、その体を覆うようにエリュシオン産のグレーのスーツを纏っている。
 槐色のネクタイをしていることが多く、がっちりとした鍛えられた身体も相まって、犯罪組織のボスのような雰囲気を醸し出している。

「友達ができたら、怖がらないようにだけしてもらおうかな」

「そうですね。ガリア様は見た目だけでしたらインパクトが大きいですから」

「おう、そうだな。でも、拳で戦ってるところはかっこいいと思うぜ? オレは火の精霊王だから、やっぱり熱い戦いってのにはわくわくしちゃうからな!」

「はいはい。ルビはわかりやすくていいよね。あたしは熱いのは鍛冶場だけで十分だよ」

「ボクは落ち着いた戦いの方が好き。でも、どっちかというと戦いは嫌い。どうしてもというなら、落ち着いた方がいい」

「私もオニキスと同じですね。そういう意味ではクレハ様の戦い方がスマートで好みに思えます」

「姉様に同じ」

 みんな口々に自分の好きな戦い方について語ってるけど、ガリア叔父さんはあれでも冷静に戦ってるからね?
 熱いというよりどっちかというとクール寄りだからね?

 ボクはみんなの話を聞きながら、そんなことを考えていた。
 
「それと、アリス様? アリス様が人界に降りた後、あちらにある運命神の神殿に赴いていただきます。アリス様の神殿ですので、どのように改装されたいかとまとめなくてはなりませんので」

「あ~、そっか。ボクって運命神にされたんだっけ……」

「はい。女性のホムンクルスに転生された理由の一つでもありますね」

 ボクの転生事情の裏側は実に単純なものだった。
 お爺様曰く「男神枠がないから女神枠にしました」だそうだ。
 それを聞いたボクは、お爺様自慢の白い髭を半分くらい引き抜いたけどね?

「向こうについても魔道具作りは続けたいから、何か欲しいものあったら言ってよ」

「それは助かります。一品物ではなく生活に重点を置いたものが良いでしょう。下手なものを作って戦争などに使われては元もこうもありませんから」

「確かにね~。あ、でも防衛用のやつは何か作ろうかな。さっき作った魔術式バリスタも良いけど、防衛用だけど要塞用みたいなものだし」

 さっき作った魔術式バリスタはどこかに拠点を作った時のために使うことにしよう。
 となると、大型の汚物浄化装置とか汚水浄化装置が必要かな?

 現在エリュシオンにある街には、大型の汚物浄化装置とか汚水浄化装置が標準装備されている。
 そのおかげで街は清潔だし、臭くなることはない。
 水洗式トイレも設置出来てるし、トイレも苦痛ではないのだ。
 技術の進歩って素晴らしい!!

「一応要望は色々来ていますけど、商会内の工房では荷が重いものが多いようです」

「そうなの? 講習用の資料とか作った方がいい? エメ」

 エメの報告を聞いて、もっとわかりやすい魔道具開発入門セットを用意しようかと本気で考え始める。

 人界の魔道具製作理論は複雑怪奇になりすぎてしまっていて、未経験で参入できる人が少なくなってしまっているようだ。
 実際、この辺りの話って前世の時代からあったことなんだよね。

「ん~。学園では教えてくれないのかなぁ?」

 ボクは何気なく呟いた。
 人界の学園では、第二校舎のみ魔道具作成についての講義を行っているようだ。
 つまり、第一校舎では教えてくれないことになる。
 となると、各地を探索したり村などを魔物から守る『探求者』たちは、気軽に魔道具開発の知識を得られないことになる。
 なぜなら、『探求者』になるのは基本的に第一校舎の人だからだ。
 
『探求者』とは、かつて存在した冒険者の上位互換で、必ず学園を卒業しないと就けない職業となっている。
 冒険者時代は誰でもなることが可能だったけど、学ばない冒険者は実力がつくと粗暴になったり、ひどい事件を引き起こしたりしていた。
 それ以降、冒険者というのはアウトロー集団をさす言葉になり、盗賊と同じような視線を向けられるようになってしまった。

 それではいけないと奮起した冒険者たちが自身のルールを再確認し、しっかり学ばせるために新たな教育制度を確立させたのだ。
 それが『探求者制度』だ。
 ちなみに、第一校舎は平民も貧民も学べる。
 学費と食費はすべて『グランアルベスタ王国』にある『アーレスタ財団』が持っている。
 なので、基本的にすべて無料なのだ。

 ……まぁ、『アーレスタ財団』の資金供給元は『アーレシオン商会』なんだけど。

「魔道具技術については未だ特権階級のものという意識があるようです。たしかに攻性魔術を使った魔道具が量産されてしまうのは困りますが、生活必需品まで規制されてしまうのは問題があるように思えますね」

 エメは少し悲しそうにそう言った。
 エメはボクが魔道具を作る理由を知っているから、そんな顔が出来るんだよね……。

「なら、革新技術の一部をボクが展開する方向で考えるよ。法律的には問題なければね」

「はい。アーレシオン商会はその辺りについて教導の許可を得ています。ですので、関係者であることを示せば問題ないでしょう」

「そっか。ならその方向で」

「かしこまりました」

 こうしてボクたちのティータイムは終わった。
 ほとんど人界に関する話だったけど、学園入学というイベントが控えているから仕方ないよね。

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