ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる
147話「片手剣士の青年」
《ふはははははははははは!!お前も“それ”が使える人材だったか!!生前はその力に敗れたが、今度はそうはいかんぞ、小僧がっ!!》
地面のはるか下へ突き落してから僅か数秒後、哄笑しながらバルガが戻ってきた。内臓いくつかと脊髄を破壊したつもりだが、その割には元気そうだ。血を吐いているところ一応効いてるみたいだが。
「超高速再生」ザイ―トと同じ、一瞬で全快するようだな。また面倒になりそうだ。
「同じ結末だ。テメーはこの力に敗北し、死んで消えるんだよ。この運命は絶対に覆らねー。だからさっさと死ね」
《つれないなぁお前は。少しは戦いを愉しむ矜持は無いのか、お前ら人族どもは?それに、お前程度の力では俺を消すことなど不可能だ。絶対にな!》
「「オラァ!!!」」
ギィン!!ガィンガキン.........!!
再び魔剣と武装でつくりあげた聖なる黒剣での斬り合い。
黒拳・黒脚と魔槍での撃突。
聖魔法と滅魔法の撃ち合い。
世界の終末を思わせる戦光景が、二人の争いでつくられた。
(ゾンビの体じゃなくとも、何度も使い続けた“連繋稼働”は使える!半年間の修行で、身体が自壊することなく正確にパスできるようになった!だから思い切り全て放てる!俺の全力を!!)
“飽和拳脚打突《ガトリング》”
ズッドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
正拳、ストレート、フック、振り下ろし、肘撃ち、ローキック、ハイキック、ミドルキック、サイドキック...両拳両足(脚)へ全身同時パスによる、拳と蹴り同時に放つ究極の連続打撃技。
その様はまさにタコ殴り、あるいはタコ足を全て使った掘削機。繰り出す拳と蹴りは弾丸のように、速度は光、パワーは核爆弾を凌ぐ。
俺が今出せる最強の攻撃だ!!
ドドドドドドドドドドがガガガガガガガガガガガガ!!!
《こ、これ程と、は...!こんな攻撃は、初めてだ...!
は、はは...やはり異世界人との戦い、は...飽きな...い......》
ズガガガガガガガガガガガガ!!
ゴドドドドドドドドドドドド!!
「お...らああああああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」
ドッガガガガガガガガガガガガ!!!
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!―死・ね・ええええええええええ!!!」
そして、連打が終わり、同時に両者は地に伏した。
「はぁっ、はぁっ!がはっ!ぜぇ、ぜぇ...!!」
全身汗と血が噴き出し、腕と脚の筋肉が千切れて、手足の骨が砕けた俺は、過呼吸に陥り血を吐いてうつ伏せに倒れた。今にも意識が落ちそうだ...。
《やって......くれた、な...!!》
「っ!!」
声がした方に顔を向けると、全身余すところ無く傷がついて、体が歪んでいて、内出血が無い箇所が無い状態で、頭の形が変形していて、虫の息状態で死にぞこないだが、それでも両の足で立っている...。
《だが、俺が立っていて、お前が地に伏している...勝者は、俺だ!!》
バルガの姿が――》
―スパッ...!!《―あ...?》
刹那、鋭利なモノで斬った音が、バルガの耳元すぐから生じ...
――ブシイイイイイイイイイイィ...!!
バルガの頸動脈から勢いよく、血が噴き出た...!
《な...あ”あ”?......そんな”、奴は...そこに伏してい”、で―!!まさ、か...!?》
“分裂”!?
「正解」
――ドス...!《ぐ...がぁ!!》
バルガの真後ろに現れ「迷彩」を解いた俺は、聖属性が纏った“片手剣”で、心臓を突き刺した。
「この武器はこうやって相手の懐に入ることで、ある意味最強の凶器となる。ほら...こうやって人体の急所を確実に斬って、突き刺すことができる...。
俺の職業は“片手剣士”なんでね。こいつで締めさせてもらうぜ。
じゃあな魔人王。その肉体滅んで死ね」
“暗殺”
剣を引き抜くと、夥しい血を流しながら、バルガは糸が切れた人形のように力無く倒れた。そして、もう立ち上がることは二度となかった。
体力0...確実に死んだ、と。
殺すべきクソ野郎を殺すことに成功した。
俺の勝ちだ――!!
*
「禍々しい戦気が消えた...!コウガが勝ったんだ!!」
センとスーロンが魔神バルガの戦気が感知できない、消失したことを確信して、歓喜の声を上げた。
それにつられて他の鬼たちも、人族たちも喜びの声を上げた。
だが...ただ一人、彼らとは全く違う反応をしている者がいた。
「あ、あぁ...!!」
「サヤ...?」
突如小夜が顔を青くさせ、その場で膝を着いてガタガタ震えだした。そのただならぬ様子にセンたちがどうしたんだと問いかける。
「私...死霊魔術を会得して以降、霊感が強くなったみたいで、特に死後の生物...モンストールや甲斐田君みたいなのが持つ“霊気”を感知できるようになってるの。
で...今、たった今、今まで感じたことのない強い霊気が...それも凄く邪悪な霊気が現れている!場所は、甲斐田君がいるところに!!」
「それって...まさか!?」
小夜の言葉に、ルマンドが何かに気付いた。同時に冷や汗を流した。小夜は震えながらも頷いて続きを言う...。
「まだ最後の戦いは、終わっていない...!」
*
俺の勝ちだ―!
そう、思い込んだ...まさにその直後――
《何も...終わってなどいないぞ!》
脳内に直接あの声が響いてきた...!そんな感覚がして、咄嗟に奴いた場所を確認した。
そこには、バルガが死んだことで元の肉体...ヴェルドの姿があった。体の損傷はバルガが受けたのを引き継いでいるらしく、首と心臓部分から血が大量に出て全身内出血状態になっている。あれならもう死ぬだろう。
だが、肝心のさっきの声はヴェルドのじゃない...アイツだ!!
《肉体は確かに終わったが、“俺そのもの”を終わらせることなど、たかが人間どもには不可能だ!フフフ、ファーハハハハハハハハハハハ!!!》
瘴気とともに、霊体状態のバルガが、俺を見下しながら哄笑していた。嗤いながら滅魔法を放ってくるのに対して、聖魔法を纏わせた拳で弾き飛ばした。威力がだいぶ劣っている。
《ふむ...霊体では滅魔法ですらこの程度にまで低下するか。物理的干渉も不可能である以上、武器も振るえない。だが、お前からの攻撃は全てすり抜けて躱す
ことが出来る。お前ら人間も魔族も誰一人!今の俺を殺すことなど不可能だ!俺はまた闇の底で次の“器”が現れるのを待てば良いだけ。
その間は誰も俺の存在を認識できない、感知できない、俺の元に辿り着くことなど、出来やしない!俺が完全に消えることなど、未来永劫に訪れはしないのだっ!!》
「......」
《ショックのあまりに声も出ないか?まったく残念だよ、お前は器に相応しい男だったのに、魔人族ではない故に不適格だというのだから。まぁいい、お前には特別に誰にも話したことない俺のことについて教えてやろう。
百数十年前に俺は討伐されたが、実は俺が死んだのはあの時が初めてではない。あの時の体も、他の魔人族のを乗っ取ったものであり俺のではない。数百年前...いや数千年前からずっと...俺は“魔神バルガ”として存在し続けてきた!器に相応しい同胞の中でずっとな!敵に討伐される度にこうやって霊となって闇に潜み、そしてまた新しい魔神バルガとなる!》
「......」
《今回も同じだ!俺はまた闇の底へ戻り新しい器の誕生を待つ。今度は同胞じゃなくても俺の力が引き出せるようにしてみせよう!それでいつかは俺がこの世界を全て支配するのさ!!》
再び哄笑を上げて自分の勝利を確信した様子でいるバルガ。それに対する俺は、ゆっくり息を吐いて...
「そういうわけね」
大して動揺することもなく冷えた声を発した。
《...?お前、絶望しないのか?悔しさに悶えはしないのか?お前がどう足掻こうが俺を消すことはできないのだぞ?》
「何となく...あの肉体を滅ぼしたところでテメーそのものは完全に消滅しないんじゃないかって、そう予想していた。やっぱりその通り、テメーが言った通りだそうだな。数千年もそうやって在り続けていたのは驚いたが...」
どこまでもドライな態度と平坦な声でに返す俺に、バルガの表情に怒りが感じられた。が、構うことなく俺は続けて...
「まったく...とんだ大クソジジイ野郎だな。テメーマジで」
そう毒を吐いて―
ガシィ...!《っ!?ぐっ...!?》
霊体状態のバルガの頭を、左手で思い切り鷲掴みにした。
《馬鹿な...霊体の俺に物理的干渉などあり得―
お前...その手は!?》
「ああ。その通り、いつもの聖属性だ。さらに“聖水”でびしょびしょに濡らした状態のな!!
どうやら、テメーみたいな超絶邪悪な存在に、こいつは干渉できるみたいだな?お陰で掴めたぜ...!」
獰猛に嗤う俺を見て、先程までの余裕を失くしたバルガはまだ吠える。
《だが...聖水で消える前に俺はやがて闇へ消えて行く!残念だったな!?結局俺を消すことなど不可能―》
「―そうか?というより、こうやって掴めれば十分だ。後は...
《《コレ》》で何もかも終わらせるから」
というわけだ。
最後の最後に、あなたの切り札を使わせてもらうぜ...
―――藤原先生!!!
「“時間回復《リバース・ヒール》”!!!」
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