ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

116話「甲斐田皇雅vs魔人族序列1位ザイ―ト」


 俺にとって最強の復讐相手...ザイ―トがついに現れた。奴の見た目は、半年前とは少し変わっていた。
 背が2mくらいの高さになっていて、 頭は黒が混じった紫色の髪に尖った耳、口からは発達した犬歯が見える。目はあの時と同じ...いやあれ以上に鋭く威厳がある目だ。獰猛な猛禽類を思わせる。そして無駄肉が全て取り除かれたような逆三角形の筋肉質体躯を、特攻服を思わせる黒い上着で覆っている。
 外見で分かる、以前よりも数段強いと。そりゃ当然だ、あの時のこいつは本体ではなく分裂体として現れたのだから。今のこいつこそが、本来の姿であり、隠していた本当の力も出すつもりでいる...!
 
 「俺の留守中に随分勝手やってくれたなぁ?ま、準備運動で外出していた俺にも非があるわけだが。同胞が二人やられ、ベロニカが疲弊しきっている、あとは屍族が全滅ってところか。
 まったく...こっちの戦力をかなり減らしてくれたな?人族と魔族を根絶やしにしようって時に割り込みやがって。お前は俺たちの戦争に乱入したということを、自覚しているのか...?」
 「戦争...やっぱりそうか。世界各地でテメーらと人族の手練れ戦士たちがぶつかっているのを感知していた...ああ、魔族ともやりあってるそうだな?実質《《4強》》による戦争だなこれは」
 「4強...?よもやお前自身がこの戦争における、一つの勢力と名乗るつもりか?くくく......しばらく見ないうちにかなり傲慢になったじゃないか若造が...!粋がってるなぁ?」
 「テメーこそ、雑魚どもを集めて威張りくさってるサル山大将が、デカい面してんじゃねーぞ?あの時の俺と、思ってんじゃねーぞ...!!」

 ゴゴゴゴゴゴゴ......!!
 「...っ!!」

 軽口叩き合ってから互いに殺気をぶつけ合う。それだけで周囲の空気が重苦しく、割けそうになっていた。そのピリピリと殺伐とした空気にあてられたベロニカが、完全に萎縮してしまっている。それを見たザイ―トが先に殺気を解いて、彼女に声をかける。

 「ベロニカ、お前はここから去れ。どこか遠く、それこそこの地の裏側くらいまで離れろ。下手すればこの世界が滅びかねない規模の戦いが、これから始まる」
 「ザイ―ト様.........どうか勝利を」

 ザイ―トの意図をすぐに察したベロニカは、勝利祈願を言ってすぐその場から消えた。彼女の気配が完全に消えたことを確認してから、俺に向き直って再びあのピリつく殺気を放ってきた。

 「準備運動って言ってたな?テメーくらい強いんだ、人族どもの相手じゃなくて...この時の為にアップしてたんだろ?やる気満々じゃねーか...嬉しいぜ。しっかり準備する必要があるって認識してるんだろ、俺のことを」
 「......そうだな。お前の戦気、以前とは比べ物にならない程上がっている。油断ならないくらいに。といっても、油断しなければ今のお前でも、この“成体”化した俺にまだ及ぶことはないがな。あれから今日までの間、お前はろくにレベルを上げられなかったのではないか?」
 「ああその通りだ。モンストールも魔物、その上位互換である魔獣すらもほとんど相手できなかった。テメーの作戦だな?やられたよ全く...。が、別に大きな損失じゃないけどな」
 「そうなのか?まあいい。ところで、こうして喋るのも時間の無駄だ。そろそろ始めるか。俺を殺す為にお前はわざわざやって来たのだろう?人族と魔族の全種族を殲滅する前に、お前をここで完全に潰してやろう...!」

 その場で軽くジャンプしながら、ザイ―トがさらに殺気を強める。この後の奴の行動は予測済みだ。まずは駆けて突っ込んでくる。そしてあの得意な鉤爪技を放ってくる―。
 
 「死纏う雷爪デスガロン―」
 「そう、くるよなぁ!!」
 ガキン―!

 読み通りのタイミングで、奴のどす黒くスパークが走ってる爪がとんでくるのに対し、こっちは紅蓮の炎を纏った日本刀で応戦した。雷と炎が迸り、ギリギリと押し合って数秒膠着。
 流れを変えたのは俺。空いた右腕を使って、自分の刀ごと奴の腕へ渾身のアッパーを放った。
 自分の左手を吹き飛ばし、そのままザイ―トの爪も破壊してやった。

 体勢を立て直すべく後ずさるザイ―トだが、俺はむしろ前で突っ込み、もう完治した右腕から光の魔力光線を放った。

 「何!?もう回復して―」
 ザイ―トの驚きの感想は最後まで聞くことなく、光線の中に消えていった。

 「...光が収束したその場には、ザイ―トだった残り滓がそこに―」
 「そんなものはねーよ馬鹿。勝手に殺すな」
 「やっぱり?」

 「魔法弱体化鎧」によってほとんど無傷でいたザイ―トが「武装硬化」した拳で殴りかかってきたので、こっちは「身体武装硬化」の蹴りで対抗した。
 何回か応戦して、互いに魔法を放ち合い、武器を用いて斬り合い、撃って燃やしてなどなど...しばらくそういったじゃれ合いを続けた...。そうじゃれ合い。
 これはただの小手調べ、全く本気じゃない。何故なら奴も本気じゃないからだ。

 「テメー、まだウォーミングアップのつもりか?俺の力を試してる素振りしやがって...。そのせいでこっちも本気出せてねーんだよ」
 「まぁな、様子見だ。にしても驚いたよ。お前、あの妙な強化をしないままで今の動きをやって見せたな?想像していたよりも強くなって―「10000%」―ぁ?」


 ザイ―トが喋っている途中、何の捻りも無いただの左ストレートを奴のどてっ腹にヒットさせた。

 「...ぐふぅ!!」

 ザイ―トのうめき声からやや遅れて、建物に激突してそれが崩壊する音が響いた。さらに複数の建物を巻き添えに壊れていく様を眺めながら俺はぺッと唾を吐いた。すぐさま崩壊した建物から出てきてここに戻ってきたザイ―トに中指突き立てながら言葉を吐き捨てる。

 「何が 様子見だ?何が想像以上だ?本当は分かってんだろ?俺相手に様子見なんて余裕かます場合じゃないって。お互い手の内は前回の戦いでほぼ見せ合ったんだ、この再戦に温存なんて必要無いはずだ!
 そっちがまだ様子見だって舐めプし続けるってんなら......こっちは今すぐ本気出して殺すぞ?」

 温度の無い声で恫喝気味に言って、ステータスプレートを取り出す。腹を擦りながら不敵な笑みを浮かべるザイ―トにそれを投げ渡す。同時に「鑑定」で奴の本当のステータスを見破った。今なら文字化けも発生なく正式な数字が出てきた。

 「まぁその前に名刺交換という体で、お互いのステータスを確認しようぜ。因みに、そのプレートにある能力値は、さっきみたいに力を解除していない状態だからな?」
 「.........ほう?お前のステータス。なるほどな」

 何か納得しているザイ―トのステータスを、改めて確認する。お互い、敵の情報を目にした...。


ザイ―ト 135才 魔人族 レベル800
職業 ―
体力 50269000
攻撃 20050000
防御 10307000
魔力 5000000
魔防 10530000
速さ 19050000
固有技能 武装硬化 瞬神速 瘴気強化 気配感知 存在遮断 武芸百般 
魔法弱体化鎧 魔力防障壁 全属性魔法レベル9 魔力光線全属性使用可 
超高速再生 限定進化



カイダコウガ  18才 屍族 レベル700
職業 片手剣士
体力 1/1000000
攻撃 99900(20276470)
防御 67810(8825000)
魔力 77380(9603500)
魔防 75110(8913000)
速さ 176260(30027000)
固有技能 全言語翻訳可能 逆境超強化 五感遮断 自動高速再生 過剰略奪 
制限完全解除 瞬神速 身体武装硬化 魔力防障壁 迷彩 複眼 夜目 
危機感知 気配感知(+索敵、追跡) 早食い 鑑定 見切り 怪力 
魔法全属性レベルⅩ 魔力光線全属性使用可 武芸百般 技能具現化 王毒 
毒耐性 超生命体力 瘴気耐性


 単純なレベル・能力値ではザイ―トに劣ってはいるが、それでも俺は負ける気は一切していない。何故なら、そこからさらに無限に強くなれるのだから...!

 「分かるかザイ―ト?俺にとってテメーより下の魔人族も雑魚で、テメーにも負ける気はしない。半年間で俺はテメーに復讐することを目標に鍛えてきた。しっかりとな。絶対に俺がテメーをぶち殺す、もう決まっている...!」
 「お前...実力以外にも性格とかも変わったな?その自信とかな」
 「俺は変わってなんかねーよ......あの時と同じ復讐に駆られて、不快にさせた奴も気に入らない奴も全員殺さないと気が済まない、キチな男だ...!」

 投げ返ってきたプレートをしまって、改めて攻撃の構えをとる。ザイ―トも、集中している構えをとっている。奴の周りの空間が歪んで見える。あの時見せなかった最悪の進化を、やるようだな。

 「さっきはすまなかったな?お前の言う通り様子見などもう不要だ。こうしてまた遭った時は、なりふり構わず全力で潰しにかかるべきだ。その為に“成体”になったのだから...進化するためにな。
 ...さて、では始めようか。そして終わらせよう。お前との因縁の決着ってやつを」
 「......ああ。今日俺がいちばんしたいと思っている復讐を、させてくれ」


 そして―

 
 「限定進化」


 イレギュラーゾンビと魔人族トップとの―


 「60000% 解除」


 再戦が、始まった―! 

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