ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

39話「情報収集その2」

 決着はついた。目の前にいる竜人も、俺を馬鹿にしたゴミ虫どもも一緒に凍り付いた。まるで時が止まったかのような空間と化したこの場で無事でいるのは、魔法放った本人の俺と、あえて魔法を当てないようにした情報屋の二人だけだった。

 彼は顔面蒼白でこの光景を見つめていた。言葉も出ないといった様子だ。
 また、凍らされた奴らにも、意識はある。今は自分が凍らされて指一本も動かせないのを自覚させられる恐怖を味わっている最中だろう。指どころか表情筋さえも動かせないから、恐怖に染まった顔は見られないが。

 「これで、分かってくれたかな、情報屋さん?」

 俺が話しかけてもまだ呆然としているので、胸ぐら掴んで軽く締め上げる。
 激しく咳き込んだところでようやく我に返った眼鏡はどうにか口を開く。

 「じ、十分見せてもらった!本物だ!これ以上疑うなど馬鹿なことをするものか!すまなかった!」
 「だから、さっさと救世団について教えろって。これ以上引っ張るなら殺すよ?」

 わざわざ情報のやり取りする場所に来たというのに、こんな茶番劇をさせられて情報が全然得られないので、いい加減イライラして口が悪くなった。

 「教える!だからそう荒げないでくれ...
 それと、彼らを戻して―「情報が先だ。早く言え」...分かりました」

 こうして、俺は救世団―元クラスメイトどもの現状について知ることができた。情報をまとめるとこうだ。

 あいつらは今、英気を養うとかで、この大陸内にいる。全員が国内にいるとは限らないらしい。外にもあいつらの興味を惹く娯楽要素があるのかねぇ。

 戦力は、5~6人のグループ1つでGランクモンストールと匹敵するくらいのようだ。半月ちょっとで一応そのくらいにはレベルアップしていたようだ。ま、ステータスが匹敵しているだけで、戦闘経験はゴミだろう。ステータスが高いだけの素人など、俺にとっては赤子同然だ。

 素行が悪いのは本当のようで、どこでもデカい態度でのし歩いているようだ。ドラグニア国民はあいつらへの評価は、戦力で好反応、素行不良でマイナス反応と半々のようだ。あんな生きる価値無い人間のゴミカスどもの評価がイーブンとか、それだけ戦力に期待している証拠だ。そんな組織が滅ぼされたら、この国の心は完全に折れそうだな。

 あとは、イードで聞いた通りだった。これで、あいつらの動向は完全に掴めた。
 次はグループ構成が分かればいいのだが、これはまぁいいか。全員殺すんだし、誰が誰と組もうと同じだ。
 元クラスメイトのことはもういい。もう一つ、訊きたいことがある。この情報眼鏡ではなく、氷漬けにされている竜人にだ。
 魔法解除で氷を一瞬で消した。

 「「「「「―っは!!?」」」」」

 竜人と周りの野次馬どもが一斉にその場に崩れ落ちて、呼吸のしかたを忘れたみたいに息を乱している。
 まずは、俺を馬鹿にしたゴミ虫どもにちょっかいをかけることにする。

 「で?誰がクソガキだって?誰が雑魚だって?もう少し俺の実力見せておくか、お?
 面白半分で馬鹿にされると、こっちはクッソ殺意が湧くの。俺は沸点が低いから、ああいうことされるとホントに殺しにいくから。分かった、かな!?」

 言っている途中で、その辺に転がっているゴミ1匹の頭を乱暴に掴んで、適当に他の奴に投げ捨てる。ゴッチィン!とヤバい音を立てて倒れたが無視。俺は感情の無い瞳で周りをじっくりと見回す。誰一人、俺を馬鹿にしてる顔はしていなかった。すぐさま土下座姿勢になって謝罪の言葉を叫ぶくらいだった。
 とりあえず満足したので、こいつらはスルーする。そして肝心の人物の前に立つ。

 「......」

 先程、俺に対しての噛ませ犬に使わされた竜人は、無言で俺を見返してくる。氷漬けにされたにもかかわらず、大して表情に動きはなかった。元々表情に乏しいタイプなのか。

 「お前にも訊きたいことがある。」
 「......」

 何も言わないので、そのまま続ける。

 「俺の仲間に鬼族の女がいてな。彼女は同胞を探し回っている。そして同胞を集めて、鬼族を復興しようと、今も俺とともに世界を回っている。
 ただ、情報によれば、鬼族の生き残りは他の魔族の国に匿ってもらっている者がいれば、隷従させられていたりもすると聞いてね。
 で、竜人族で鬼族がいないかどうか確かめたいのだが、そこのところどうなんだ?」

 じっと、竜人の目を捉えて質問する。その間、竜人も俺を凝視していた。何考えているのだか。俺が言い終えてから少しした後、ようやく口を開く。

 「結論から言うと、鬼族はいる。族長の家族のもとに住ませている。たしか5人はいたやもしれん。」
 思った通り、鬼族の生き残りがこの大陸にいたようだ。それも、魔族に保護されている。
 「いきなりで悪いんだが、俺たちをお前の国?里?に案内してくれない?仲間に鬼族と会わせたいんだ」

 アレンにとって大事なイベントだ。同胞たちと再会して、彼らとともに鬼族再興させて、昔の生活に戻りたいというのが、復讐と同じ、いや、それ以上に優先している目標だ。
 俺の復讐を肯定してくれて、仲間として接してくれているアレンに協力したいと思った俺はこうして行動している。
 それに、俺はこれからドラグニア王国に攻め入る予定で、そこに彼女たちがいると厄介に巻き込まれる恐れがある。だから、竜人族のところに一時的に避難させることも目的としている。

 で、竜人の返答は、

 「俺の顔を立ててもらってどうにか入国を許可してもらおう。俺はお前に敗れた。勝者に従うのは鉄則だ。その要求を受け入れよう。」

 竜族の国へ行けることになった。

 「俺はドリュウという。一族の中では指折りの強さを持つ戦士のつもりだ。」

 そう自己紹介をして案内してくれる。
 未だ恐怖で震えている野次馬どもと情報屋をスルーして、アレンたちがいる店に行く。



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