ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

34話「死んだことで変わったこと

 戦いが終わった後、クィンが率先して村の生き残りがいないかを確かめる作業をした。生き残りは一人も見つからなかったが。
 死骸を全部焼却した頃には、もう日が暮れていた。イードへ帰って、それで今日は終わりだ。
 帰り途中、アレンにあの強化のことを聞いてみたところ、
 
 「コウガのこと考えてた。コウガみたいな強さを想い続けていたら、力が溢れて、倒せた。」

 とのこと。俺を参考にしたといったところだろうか?人の気持ちを理解するなんて無理ゲーだから分からん。

 「何にせよ、やったなアレン。一人でAランクを倒せたんだから。以前よりすごくパワーが増したみたいだし、いい感じだな!」

 そう言ってアレンを労いながら肩をぽんぽんする。アレンは、尻尾が付いてたらブンブン振りそうなくらい嬉しそうにした。顔もにやけきっている。可愛い。
 アレンとは正反対に、クィンからは負のオーラが立ち込めていた。

 「クィン?」
 俺が声をかけると、クィンは虚ろ目でこっちを見て呟くように返事する。

 「...私は、コウガさんの助けを借りました。私一人では、あのモンストールを倒せませんでした。兵士の私がこんなのでは、ダメですよね...。アレンさんみたいに一人で倒せるくらいじゃなきゃ、まだまだですよね...。はぁ...」

 自分の力不足を嘆いているクィン。アレンの顔を見ると彼女はコクコクと何か促してきた。フォローしろってことやな。

 「兵士だからって気負うことないんじゃないか?そもそもアレンはそこいらの兵士や冒険者とは格が違うから、あと俺とか。俺たちと違って、クィンには数の利がある。連携プレイがある。個の力より数の力で対抗すれば良いんじゃないか?
 まーようは、思いつめるな!ってこと!オーケー!?」

 後半やけくそになったが、俺の言いたいことは伝わったらしく、クィンの顔に少し明るさが戻った。

 「ありがとうございます...。気にかけてくれて。」

  まぁ、結局個の力がものを言うんだけど、それはチート級でのお話。普通の奴らにとっては、数で戦うのが基本だ。
 そうなれば、俺がクラスメイトどもとやりあう時、全員相手にするか、少しずつ殺していくか、になる。俺は、どうするかね。

 「...というか、コウガさん。左腕、いつの間に治ったのですか...?前回の時もそうでしたが、アレ確実に吹き飛んでましたよね...?」

 思い出したように、クィンは俺の左腕のことに触れてくる。

 「あ...。これは、俺の特殊体質だ。実は俺、トカゲみたいに欠損部分が再生するんだ!...ってことで。」
 「何ですかそれ!?怪しいです!もっと詳しく教えて下さい!!」
 「あー。帰って完了報告済ませたらな?」
 「絶対ですからね!?今度こそあなたの秘密を教えていただきます!」

 さっきまでの落ち込みは完全になくなり、今度は彼女の興奮を治めるのに苦労した俺だった。



                     *
 
 すっかり日が暮れた頃、ギルドへ帰還した。早速、依頼完了の報告をする。前に来た時とは別の受付嬢だったので、緊急クエスト完了の報告したらめちゃくちゃ驚かれた。騒ぎを聞きつけたもう一人の受付嬢―レイさんとやらがやってきて、俺たちを見て納得がいったような顔をした。

 「本当に、3人で討伐なさったのですね...。噂通りの規格外の強さをお持ちのようで!あ、礼が先でした。ありがとうございました!これでこの国も少しはモンストールへの脅威が減りました!」

 そう言ってレイさんは丁寧にお辞儀をする。もう一人の受付嬢もお辞儀した。

 「ま、あいつらが本腰入れて、ここを落とそうとするなら、災害レベルの奴が出張ることになってくるだろうな。そこのところ、王様とやらに忠告した方がいいかもな。」
 「災害レベル...。ドラグニア王国から遭遇報告が出ていましたから、対策しなければなりませんね...。忠告感謝します!」

 では、このことを王宮に報告するので、と挨拶してレイさんはこの場を去った。続いて、現在の受付嬢が報酬の手続きをしてくれる。
 指名依頼と緊急クエストによる特別手当もついて、報酬金が前回より多い600万ゴルバを手に入れた。冒険者登録して1週間経たないうちに、資産が1000万超えた。投資でテンバガー儲けをした気分だ。そんな儲けしたことはないが。

 「なお、今回の成績により、オウガさんと赤鬼さんは、Sランク冒険者に昇格です!」

 その一言に、ギルド内が騒然となる。

 「Sランク冒険者の誕生がこの目で見られるなんて!」
 「世界に10人もいないとされている伝説の冒険者が、まだ若いあの子が!?」
 「今日は伝説の誕生だ!祝おうぜ!!」

 口々に騒いで、俺らのことを称えてくれた。
 この世界に来て、こうして人々に称えられるのは初めてかも。死ぬ前は、ハズレ者などと罵られ、蔑まれ、石を投げつけられるような扱いだった。それが、今では伝説扱いか。
 アレンは、照れくさそうな反応をしている。クィンはぎこちなく手を振っている。俺はというと、

 「.........」

 ただ無表情に、うるさそうな反応をして、歓声に応えることは一切しなかった。
 死んでゾンビになってから、俺の感情機能はどこかおかしくなっているのかもしれない。喜怒哀楽のほとんどが欠如してしまっているのだろうな。代わりに、憎しみと復讐心といった負の感情が強まっているのが感じられる。

 歓声に応えることなく、俺は2階へ移動する。それを見たアレンとクィンは慌てて後を追った。



                     *
 
 夜中も営業しているギルドのレストランでひとまず祝勝会を開くことに。元の世界で食べた料理をここで食えることを楽しみにしていたので、気分が良い。料理がテーブルに置かれたと同時に、乾杯も忘れて、がっついてしまう。それを見た二人は温かな笑みを浮かべる。
 
 「コウガ、ご飯食べてる今がとても生き生きしてる。さっきはつまらなそうだった。」
 「ですね。よほどお腹空いていたのでしょうか。ふふっ。とてもいい顔です。」
 
 二人とも食事中の俺の顔を何故か嬉しそうに見ている。ったく、お前らの分も全部食うぞ?
 食事をしなくても大丈夫な体だが、すっかり食事が習慣化してしまった。この世界ではゲームも書籍もアニメも、何の娯楽も無いから、食事がある意味娯楽だ。
 やがてアレンも食事に夢中になる。鬼族はやっぱり人族よりもたくさん食べるようで、あっという間に俺より多くの料理を平らげた。

 「人族の食文化はスゴイ。私たちが知らない料理がいっぱい。村を再興したら、人族の料理を取り入れる!」

 とてもお気に召した様子で新たな目標を追加した。

 「確かに、私の国ではこんな美味しい料理などありませんので、手が進みますね。
 ...ところでアレンさん」

 とアレンを見据えて、周りの客に聞こえない声量で言葉を続ける。

 「先程の発言といい、モンストールとの戦闘といい、あなたは人族ではありませんね?亜人族でしょうか?」

 アレンの種族について掘り下げて来た。まぁ当然気付くわな。

 「アレンは鬼族、それも金角鬼の生き残りだ。戦闘力がピカイチなのもこれで納得いったんじゃないか?」
 「あの金角鬼の...。だから今まで隠していたのですね。今は見えませんが、戦闘中に角が見えたので、もしやとは思っていましたが」

 そういや、クエスト中は「迷彩」を解除していたな。まぁここまで一緒のクィンならもうバラしてもいいか。

 「そして、俺のことだが。少し長くなるが、一応聞いてくれ。」
 
 ここで俺のことも話すことにした。だが、復讐のことは、まだ伏せることにした。


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コメント

  • ノベルバユーザー381330

    クィンって奴マジでキメェw

    0
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