ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

21話「戦闘、そして入国」

 
 これまで、イレギュラーな展開に散々遭いまくっていたため、この洞窟で本来現れるはずのないモンストールが今、目の前にいるという状況でも、俺の心は全く揺らがなかった。アレンは若干動揺していたが。
 
 このモンストールの形は、手足に鋭い爪、見えてなさそうな目、全体像の形からして、モグラ型だろうか。強さは、5mサイズっぽいから、ギリ上位レベルか。
 どちらにしろ、本気出す相手じゃないな。あ、そうだ。
 
 「アレン、こいつと戦える?」
 「......(クンクン)。これなら、今の私でも勝てる。」
 
 鬼族は匂いで強さを測れるのか。
 
 「なら、ここは任せていいか?」
  
 そう、せっかくの機会だ。アレンの実力を知っておきたい。ま、敵のレベルからして本気にはならないだろうが。

 「?別にいいけど。じゃ、倒してくる。」
 
 そう言うと、アレンは一瞬でモンストールに接近した。「神速」か。
 
 アレンの急接近に反応できずにいたモグラは、ガードする間もなく、彼女にボコスカ殴られる。
 鬼族の拳闘術は、荒々しい動きだが確実に臓器にあたる部分を打ち抜くものと先程の雑談で聞いたが、こうして見ると嵐のような打突だ。適当に殴っているように見えるが実際は正確に急所を射抜いている。俺のイメージしていた鬼とえらい違いだ。
 最後に、止めと言わんばかりに、電撃を纏った拳で顔面を砕いた。これが「雷鎧」か。10秒間でモグラ型モンストールが斃された。体力を消費しているにも関わらず、圧倒した。
 強いな。拳闘術といい、最強の戦士の称号は伊達じゃない。
 
 「お疲れ様。何つーか、カッコいい拳闘術だった。特に最後の一撃、電撃纏ったやつ。ああいうの良いな!」
 
 戦闘を終え、長く息を吐くアレンに労いの言葉と称賛の言葉をかける。するとアレンは、慣れていないのか、くすぐったそうに身を捩り、頬を赤らめた。

 「『雷鎧』のこと...?カッコいいって、言われたの、初めて...。嬉しい。(赤面)」
 
 その仕草は年相応でかわいい。少しドキッとした。
 
 「次は、コウガの戦っているとこ見たい。コウガの強さ、匂いじゃ分からないから...。」
 
 「オーケー。冒険者登録して適当にクエスト行った時に、な。」
 

 そう約束して、俺たちは洞窟を抜ける。結局、モンストールがなんでここに現れたのかは明らかにならなかった。ま、いっか。生態変化か何かだろ。



                                                                   
 洞窟を抜けるとそこはサント王国、なんてことはなく、林道が続いていた。空は、洞窟に入る前より少し暗かったが、太陽の位置を見るにどうやら朝になったばかりだ。洞窟内でアレンと談笑して休んでいたからほぼ1日経っていたみたいだ。
 林道を歩いていると、途中で小さな池があったので、自分の姿を見てみることに。   
 そういえばゾンビになってから一度も自分の顔を見たことなかったな。
 
 水面に映った男の顔は、ぼさぼさの短い黒髪で、少し鼻ひげと顎ひげが生えていて、肌の色は生きていた頃より白くなり、眼球は黒く瞳は黄色になっていた(某死神漫画で見たことあるヤツ)。肌や目が変わると、別人みたいだな。
 いつの間にかアレンも俺と同じように、水面に映る顔を眺めていた。彼女もあの瘴気の暗闇にいたため、長い間自分の顔を見てなかったのだろうか。
 
 小休止を取った後、のんびり歩くこと数分。サント王国に着いた。
 アニメでよく見るような背景だ。防壁が王国を囲んでいて、入り口を通ってしばらく歩いた先には、大勢の人々が歩き、屋台がいくつか並んでいる。前を見ると王宮っぽいのが見える。
 因みに、王国に入るには、通行証が必要で、入り口に検問を務める門番にそれを見せなければならないが、洞窟にいた冒険者の死体から運よく手に入れたので、二人そろって普通に入国できた。
 
 ここでまずすることは、アレンの服選び、かな。女の服選びなんか知らねーよ、でも今のアレンの格好はみすぼらしいので、買わねば。
 
 「まず、アレンの服をどうにかしないと。鬼族ってどういう服を着ていたんだ?」
 
 勝手に選ぶわけにはいかないので、鬼族の民族衣装を参考に聞いてみる。だが、返事は...
 
 「私の村では、服を着る習慣はあまりなかったなぁ。男女とも半裸でいるのが基本で、下はパンツで、私みたいに上に何か着る人はあまりいなかったかも。
 あ、上といっても、薄い布1枚だけだよ?」
 「オウ...さいですか......。」
 
 
 ほぼ裸族暮らしだった。さすが鬼族、そういうとこは元の世界の昔話とかと一緒かよ。しかも、アレンの格好でさえ稀なのか...。


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