君に伝えたい思い
君に伝えたい思い
俺は夢を叶える為、この田舎から出て───上京したのが五年前。
片想いの幼馴染に俺の思いを伝える事なく田舎を出た。
幼馴染と一緒にいるか、歌手になる夢を叶える為に上京するか。
その選択肢で俺は後者を取った。
俺が上京してからも、幼馴染とは連絡をとっているが、週に一回あるかないか……。
たわい無い話をしたり、近況を伝えたりするだけの簡単なやり取り。
この春、ようやく仕事も波に乗り、CDデビューもした。
俺は夢が叶ったら幼馴染に告白しようと考えていた。
──一人前になって彼女と共に生きて行きたい。
俺は決意を胸に電車を降りる。
五年ぶりに帰って来た故郷は全く変わらず、木造の無人駅に川のせせらぎ。
懐かしさを噛みしめながら駅から出ると見覚えのある女性が立っていた。
「おかえり、悠真!直接会うのは五年ぶり……かな?」
眩しい笑顔に風になびく長い黒髪。
その大きな瞳に俺を映していた。
「ただいま、初海。連絡取ってたからそんな感じしないな。」
「確かにっ!でも、全然連絡くれない時とかあったから、やっぱり久しぶり、かな?   これからどっか行く?って言っても行く所なんて東京に比べたら無いかもしれないけどね!」
隣で笑う幼馴染に俺も自然と笑顔になる。
「もっと電車の本数があれば早く着いたんだけどな。」
空を見上げると、もう太陽が傾き始めている。
「じゃあさ!いつもの場所に行こっ!」
「ははっ。お前、あそこ好きだよな。今から行って、暗くならないか?」
「大丈夫だって!行こう!!」
俺は荷物を持ち直し、初海と並んで歩く。
学生の頃の背丈は俺と同じ位だったのに、今の初海の背丈は俺よりも頭一つ分程低くなっていた。
会わない内に初海は凄く綺麗になり、隣から香る甘い薫りに俺は頬が熱くなっていく。
「きょ、今日は暑いな。」
「まだ暑いよねー!でも日が沈むと涼しいよっ!」
「……風邪ひくなよ?」
「なっ!私は子供じゃないよ!?それを言うなら、悠真だって向こうで体調崩さないでよ!」
「俺は丈夫に出来てるから大丈夫だ。」
「そういえば、悠真は昔っから風邪とかひかないよねー?……バカだから?」
「なんだとぉ!?」
「わー!悠真が怒ったー!」
きゃっきゃっと初海は笑いながら坂道を駆け登る。
スカートが左右に揺られ、風になびく。
心臓に悪いから  おしとやか にして欲しい。
再び頬に集まる熱を感じながらも俺は初海の後を追う。
坂を登った先にあるのは拓けた丘。
俺達はこの町を見渡せる、この場所がお気に入りだった。
学生の頃もよくここで遊んだり、勉強したり、喧嘩もしたりした思い出の場所だ。
「あ、そうだ。初海にお土産があるんだ。」
「え!そうなの!?なになに!?」
俺は鞄から小さな袋を取り出して初海に渡す。
ラッピングをしようかとも考えたが、照れ臭かったのでお店の袋のままだけど。
「開けてもいい?」
目を輝かせながら初海は聞いてくる。
俺が頷くと初海はその袋を開けた。
「これ、ブレスレット?」
初海は不思議そうにブレスレットを眺めている。
その顔が、珍しいね?と俺に向けられた。
「それはアクアマリンって言う天然石なんだ。初海は三月生まれだろ?その誕生石がアクアマリンらしい。」
「へぇ!……でも、これって高くない??」
「そんな事気にするなって。」
「……そっか。うーん……えへへ、嬉しいな!ありがとうっ!!」
初海は悩んだ後、すぐに笑顔に戻りブレスレットをつけた。
腕に光るアクアマリンの色が眩しく感る。
「なんだか、悠真が遠くに感じるなぁ。」
ブレスレットを太陽にかざしながら、初海は遠くを見つめていた。
「今近くにいるだろ。」
「そうだけど、そうじゃなくって。……なんて言うのかな。悠真がテレビや雑誌の人になっちゃって、私には手の届かない存在になっちゃったなーって。」
「俺自身は何も変わって無いけどな。」
「そんな事ないよ。悠真はどんどん前に進んでる。……凄くカッコいいよ!」
振り向いた初海の笑顔に俺は全身が暑くなっていくのを感じた。
多分、俺はここで言わなきゃ後悔するだろう。
「あのさ……初海、聞いて欲しい事があるんだ。」
「ん?なに??」
俺は一歩初海に近付き、早鐘を打つ心臓の鼓動を抑えながら言葉を絞り出す。
「あの、さ。俺……俺は……」
「??」
心臓の鼓動が鼓膜を破りそうな程に強く打ち鳴らされる。
俺は息をゆっくりと吐き、一度目を閉じる。
背中には緊張の為、汗が流れて行くのが分かった。
その石に託した、もう一つの意味。
誕生石だから、じゃなく……。
その意味は──
『幸福な恋愛・結婚を望んでいる。』
──俺は意を決して目を開く。
目の前にいる初海は首を傾げながらも俺の言葉を待っていた。
「俺、初海の事が好きだよ。」
片想いの幼馴染に俺の思いを伝える事なく田舎を出た。
幼馴染と一緒にいるか、歌手になる夢を叶える為に上京するか。
その選択肢で俺は後者を取った。
俺が上京してからも、幼馴染とは連絡をとっているが、週に一回あるかないか……。
たわい無い話をしたり、近況を伝えたりするだけの簡単なやり取り。
この春、ようやく仕事も波に乗り、CDデビューもした。
俺は夢が叶ったら幼馴染に告白しようと考えていた。
──一人前になって彼女と共に生きて行きたい。
俺は決意を胸に電車を降りる。
五年ぶりに帰って来た故郷は全く変わらず、木造の無人駅に川のせせらぎ。
懐かしさを噛みしめながら駅から出ると見覚えのある女性が立っていた。
「おかえり、悠真!直接会うのは五年ぶり……かな?」
眩しい笑顔に風になびく長い黒髪。
その大きな瞳に俺を映していた。
「ただいま、初海。連絡取ってたからそんな感じしないな。」
「確かにっ!でも、全然連絡くれない時とかあったから、やっぱり久しぶり、かな?   これからどっか行く?って言っても行く所なんて東京に比べたら無いかもしれないけどね!」
隣で笑う幼馴染に俺も自然と笑顔になる。
「もっと電車の本数があれば早く着いたんだけどな。」
空を見上げると、もう太陽が傾き始めている。
「じゃあさ!いつもの場所に行こっ!」
「ははっ。お前、あそこ好きだよな。今から行って、暗くならないか?」
「大丈夫だって!行こう!!」
俺は荷物を持ち直し、初海と並んで歩く。
学生の頃の背丈は俺と同じ位だったのに、今の初海の背丈は俺よりも頭一つ分程低くなっていた。
会わない内に初海は凄く綺麗になり、隣から香る甘い薫りに俺は頬が熱くなっていく。
「きょ、今日は暑いな。」
「まだ暑いよねー!でも日が沈むと涼しいよっ!」
「……風邪ひくなよ?」
「なっ!私は子供じゃないよ!?それを言うなら、悠真だって向こうで体調崩さないでよ!」
「俺は丈夫に出来てるから大丈夫だ。」
「そういえば、悠真は昔っから風邪とかひかないよねー?……バカだから?」
「なんだとぉ!?」
「わー!悠真が怒ったー!」
きゃっきゃっと初海は笑いながら坂道を駆け登る。
スカートが左右に揺られ、風になびく。
心臓に悪いから  おしとやか にして欲しい。
再び頬に集まる熱を感じながらも俺は初海の後を追う。
坂を登った先にあるのは拓けた丘。
俺達はこの町を見渡せる、この場所がお気に入りだった。
学生の頃もよくここで遊んだり、勉強したり、喧嘩もしたりした思い出の場所だ。
「あ、そうだ。初海にお土産があるんだ。」
「え!そうなの!?なになに!?」
俺は鞄から小さな袋を取り出して初海に渡す。
ラッピングをしようかとも考えたが、照れ臭かったのでお店の袋のままだけど。
「開けてもいい?」
目を輝かせながら初海は聞いてくる。
俺が頷くと初海はその袋を開けた。
「これ、ブレスレット?」
初海は不思議そうにブレスレットを眺めている。
その顔が、珍しいね?と俺に向けられた。
「それはアクアマリンって言う天然石なんだ。初海は三月生まれだろ?その誕生石がアクアマリンらしい。」
「へぇ!……でも、これって高くない??」
「そんな事気にするなって。」
「……そっか。うーん……えへへ、嬉しいな!ありがとうっ!!」
初海は悩んだ後、すぐに笑顔に戻りブレスレットをつけた。
腕に光るアクアマリンの色が眩しく感る。
「なんだか、悠真が遠くに感じるなぁ。」
ブレスレットを太陽にかざしながら、初海は遠くを見つめていた。
「今近くにいるだろ。」
「そうだけど、そうじゃなくって。……なんて言うのかな。悠真がテレビや雑誌の人になっちゃって、私には手の届かない存在になっちゃったなーって。」
「俺自身は何も変わって無いけどな。」
「そんな事ないよ。悠真はどんどん前に進んでる。……凄くカッコいいよ!」
振り向いた初海の笑顔に俺は全身が暑くなっていくのを感じた。
多分、俺はここで言わなきゃ後悔するだろう。
「あのさ……初海、聞いて欲しい事があるんだ。」
「ん?なに??」
俺は一歩初海に近付き、早鐘を打つ心臓の鼓動を抑えながら言葉を絞り出す。
「あの、さ。俺……俺は……」
「??」
心臓の鼓動が鼓膜を破りそうな程に強く打ち鳴らされる。
俺は息をゆっくりと吐き、一度目を閉じる。
背中には緊張の為、汗が流れて行くのが分かった。
その石に託した、もう一つの意味。
誕生石だから、じゃなく……。
その意味は──
『幸福な恋愛・結婚を望んでいる。』
──俺は意を決して目を開く。
目の前にいる初海は首を傾げながらも俺の言葉を待っていた。
「俺、初海の事が好きだよ。」
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