ツンデレ彼女を救いたい!!

太陽

俺の事が好きな女子はツンデレ




 今日からまた学校が始まる──。
 俺は眠たい中、目をこすりながら支度をした。
 俺の名前は、空坂そらざか 風士ふうし
 都内の一般高校に通っている。春からは、高校二年生だ。
 なんとなく過ぎてしまった、春休みが終わり、また退屈な授業が始まる。

 休みの日ってすぐ終わっちゃうんだよな、あと三週間ぐらいは休みでもいいよ。

 そんな事を考えながら、俺は学校へ行くのだった。


「おーい!風士、久しぶりだなぁ!」

 クラスメイトの山河やまかわ  ようだ。
 こいつとは、中学の時からの付き合いで、いわゆる親友だ。

「おう、おはよ!元気にしてたか?」

「今日から学校って考えたら、元気もでねぇよ。あと三週間は休んでたいねぇ!」

「俺と全く同じこと考えてんじゃねーよ」

「ははっ!俺とお前は基本的に考えが一緒だからな! けどよぉ、お前と俺はもう別なんだわ……」

「別って? なんかあったのか?」

「聞きたい? お前がどうしても聞きたいって言うんなら、俺も言うしかなくなるんだけどー、聞きたくないってんなら言わないかなぁー」

「ややこしいな! 言いたいんだろ、聞きたいから早く教えろよな」

「仕方ない! では特別に教えてやろう! これは本人から直々に、お前に絶対言うなよって言われてるけど、そこまでお前が言うなら教えてやろう」

( こういう話になると葉のやつ、ほんと面倒くさいんだよなぁ……)

「絶対、俺に言うなって、言われてるんだろ? いいのかよ、確かにすごく気になるけどさ」

「いいんだよ。知らないと後でお前が、『なんで早く教えてくれなかったんだよ』って絶対言うから。いいか? 心して聞けよ!」

「おっ、おう!」

 俺は固唾を呑んだ。

花道かどう  れん がお前の事、好きなんだってよ。あー本当、なんでお前なんかの事が好きなのかねぇー」

「はっ? まじ? なんで早く教えてくれなかったんだよ! いつ聞いたんだ? 」

「春休み中にさ、デパートでばったり会ってな、クラスの女子のあれこれ聞き出そうと思ってな、昼飯奢るぜって言ったんだよ。あいつ、結構食いしん坊でさぁ、なんでも食っていいぜって言ったら、ほいほいと教えてくれてな、そこで、俺が聞き出したってわけ」

(最低だなぁ……。葉の奴、食い物で釣るなんて。しかし、花道にそんな一面があったなんて、知らなかったぜ……)

「そしたらさ、お前の事が好きな女子の情報も聞き出したんじゃないの?」

「それは聞くな……」

「そっか……」

 俺は、居なかったんだろうと察した。
 葉は、昔から口が上手くて、情報通なんだけど、あんまりモテない。まぁ、性格に難があるっていうか、女子からしたら、知りすぎっていうのは煙たがられるからだろう。

「俺の話は置いといて、本題に入ろう。お前はあいつの事、どう思ってんだよ?」

「どう思うって? すげー可愛いと思うよ。顔もそうだし、スタイルもいいし、成績優秀、スポーツ万能ときた! でも、どうも俺の事が好きって言われても信じ難いんだよ。あいつが、誰かを好きって事自体がさ」

「だよなぁ! 俺もお前の事が好きって聞いた時には、いったんトイレで壁に二、三度頭ぶつけたもんな! お前に言ったってバレたら命ないかもなぁ……」

(それはちょっとやりすぎだろ……)

「そこなんだよ!俺も俺ですごい嬉しい!でも、俺なんかの事を好きになる訳がない!」

 それもそのはずだ。花道は、見た目、中身、共に完璧である。しかし、彼女はいわゆる、ツンデレ属性なのだ。
 ツンデレといっても、デレているような所は全く見た事がなく、なんなら、ツンツン属性なのだ。
 仲が良い女子にさえ、デレている所はお目にかかれないほど、高嶺の花なのだ。

「なんでまた、お前の事が好きなのか分かんねぇけど、俺はちゃんと教えてやったんだ。後はお前次第だからな」

「待てって! 俺は、どうしたら……」

 「やべっ、もうこんな時間だ! 始業式、遅刻すんぞ! 」

 俺達は、慌てて学校へ急いだ。


 (やべぇ、花道が俺の事、好きだなんて……全然信じられない。でも、そんな事聞いたら、意識して目も合わせられねぇや)

俺は、花道の事で頭がいっぱいになった。
 とは言え正直、彼女とはほとんど話した事もなかった。
 今後、どうするべきなのか? もっと積極的に話かけてみようか? そんな事を考えていたら、始業式でお決まりの、校長先生の長話など、全く入って来なかった。
 いつもは、長くてうんざりするような始業式は、一瞬で過ぎていった。


「クラス替えだな、花道と同じクラスになったらいいな風士!」

「他の奴が聞いてたらどうすんだよ!」

「おっと、俺も聞かれたらまずかったんだった」

「それにしても、お前、よく花道からそんな事聞き出したよな。ツンツンの花道がお前なんかの口聞いてくれるって、今でも信じ難いぜ」

 「まぁ、俺もメンタルは強いからな、そこが俺の売りなんだよ、ちょっとツンツンされたぐらいでは動じないのさ」

 葉は、良くも悪くも、空気が読めない。初対面の人だろうが何だろうが、すぐ話かける。人見知りとか、コミュ障って言う言葉が、彼の中には存在しないのだ。
 そのおかげで、俺も、結構色んな情報が入ってくるんだけど。

「みんな、静かにしろー、ホワイトボードに、新しいクラス分けと席が書いてあるから、確認して着席してくれ」

学年主任が言った。

 俺は花道と同じクラスかどうかだけで頭がいっぱいだった。恐る恐る、ホワイトボードを覗き込んだ。
 すると、花道は同じクラスで、しかも席が俺の後ろだった!

「おっ、これも運命の巡り合わせかな?」

「やっ、やめろよ、俺だって今、すげー複雑なんだぜ」

 「まぁ、俺と風士も運命ってやつだな。中学から同クラス連続記録はまた更新だ!」

「本当にお前とは腐れ縁だな。まぁ、せいぜい口滑らせて、花道に殺されないようにな」

「やっ、やめろよ、せっかく応援してやる気でいたのに! お前ってば、俺を脅してばっかだなぁ、俺に苦手があるとしたら、お前って言う存在だけだわ風士」

「何言ってんだか」

「お前等、静かに!早く席に着け!」

 先生の言葉に、周りも慌てて席についた。


(すげードキドキする──これは、振り返れないやつだな……)

「これから一年間、C組の担任をさせてもらう、小林 紗江さえだ。この学校に転勤して来て、初めてこのクラスを見るから、よろしく! 先生の事は、小林先生とか、紗江先生とかって呼んでもらったら結構。ただし!あだ名は禁止だからな」

「えー! 紗江ちゃんじゃだめなのー? もっとフレンドリーにいこうよぉー」

 葉が言った。あいつは、新しい先生が来たら必ずこう言う茶化しを入れる。

「山河、先生の事をちゃん付けで呼ぶとは、何様だ!後で職員室に来い」

「つれないなぁ、すいませーん」

クラスのみんなが笑った。

 ほら見ろと言わんばかりに、葉は、良くも悪くも、いつもこうなのだ。

 葉の茶化しに意識がいくも、俺は花道の事がずっと気になっていた。

「今から、行事説明のプリント配るから、前の奴は後ろに配ってくれ」

 ここで、俺に試練が来た。後ろの席の花道に、プリントを渡さないといけない。たかがプリントを配るだけの作業が、妙に緊張して来た。
 前のクラスメイトからプリントを受け取る。

(あぁ、どうしよう……花道にプリント渡さないと! 緊張するぜ。けど、花道は俺が好きって言う事を俺が知らないと思ってるから、いつも通り接したらいいだけ……。だめだ、渡せない……)

 俺は、結構プレッシャーに弱いタイプだった。彼女はおろか、今まで恋愛なんてした事も無く、友達だって、親友と呼べるのは葉だけだった。葉とは真逆で、あまりにも酷いレベルではないが、少しコミュ障なのだ。

「ごめん、空坂君、早く配ってくんない? ボーッとされると迷惑なの」

「あ……ごめんごめん。ちょっと考え事してたんだよ」

俺は、思ってた感じと全く違う反応に、唖然とした。

「次から気を付けてね。じゃないと先生に頼んで席変えてもらうから。そうなったら、空坂君も先生の評価下がるよね?」

「ごめん……次から気を付けるから!」

 葉からの、視線を感じた。『へましたな?』と言わんばかりの。
 本当に、花道は俺の事が好きなんだろうか? 
 葉はいつも、能天気で、チャラけた感じだが、嘘はついた事がほとんどない。
 初めて、葉の言った事が、嘘なんじゃないかと疑った。


 



 

 

 


 
 

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