恋に運ばれて

アオハチ

ひとり

 あれは自分に向けての戒めだ。ああ言って出てきたけど伊織が勘づいてみんなに話すかもな。......また自分で他人を遠ざけちゃったな。なんでこうなるんだろ。

 数年前からときおり自分が生きてる意味を知りたくなる。誰しもが1度は考えたことがあるかもしれないがそれほど多くはないだろう。同年代で俺より考えたことがある人はいるだろうが俺も多いほうだと思う。きっかけは分かりきっているがどうしようもない。たまにテレビで見たり聞いたりする子が親に向かって産んでくれてありがとうと言う場面を見かけるが俺は1度もそう思ったことがない。正直言うとなんで産んだのかと聞きたいくらいだ。俺みたいなクソな人間はなんで生まれるのだろうか。傷つけ傷つけられ特に何もアクションを起こさない人間は金と時間の無駄でしかない。

 よく耳にする痛みを知った人は優しくなれる。この言葉は俺からしたら痛みを知ったから人を恐れ自分を隠し何も起きないようにただ人に合わせているから周りからは心が広いだの優しいだの言われてるだけである。れっきとした卑怯者の完成なのだ。卑怯者のくせに貪欲で意気地無しで死にたいと思っても死ねない臆病者なのが俺だ。

 こんな俺相手に伊織は家が隣だからという理由でずっと一緒にいてくれている。伊織には頭が下がるいっぽうだ。
 だが、こんな俺にも癒されるものは用意されていた。音楽にマック、そして猫だ。これだけかと言われたら少ないかもしれないが俺には十分だ。
 1人暮らしで部屋で音楽を流し、マックを食べて猫と遊ぶのが俺の近そうで遠い夢だ。

 それで十分だ

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