女顔の僕は異世界でがんばる
恨みを抱く少女 44
所々ひび割れ、扉が破壊された家の前に、まるで番人のようにバンシーがいた。
もとはそこそこ立派だったであろう大きめの平屋は、まるで廃墟のようになっていた。
中は血が飛び散り、さんざんに荒らされている。
ここで何があったのか簡単に想像がつくほど、凄惨な光景だ。
その中をアプサラスはするすると滑るように飛んでいき、キッチンの奥の床の上に置かれた大きな壺の隣に降り立ち、壺の下を指し示す。
「地下か?」
尋ねると、アプサラスはこくこくとうなずく。
たぶんそこは、食糧庫になっているんだろう。
「オーワさんっ。何があったんですかっ?」
遅れてやってきたワユンが、息を切らしながら尋ねてくる。
「生き残った人がここにいるみたいなんだ」
答えて壺をどかすと、床には取っ手が埋め込まれていた。
引っ張ると、ゆっくりと床が持ち上がる。
中は真っ暗だった。
「誰かいませんか? 助けに来ました」
そう言いながら中を光魔法で照らすと、奥のほうで小さくなっている二人の子供が見えた。
知っている顔だ。
『ありがとうおにーちゃん』の女の子と、その子のことを大好きな男の子。
けれど二人とも動かない。
――間に合わなかったか!?
恐ろしい想像を振り払い、アプサラスに二人を中から運び出してもらうと、すぅすぅという可愛らしい寝息が聞こえてきた。
よかった、寝てるだけか。
念のため治癒魔法をかけてやると、ゆっくりと二人は目を覚ました。
小さな手でこする目の下には、くっきりと涙の跡が残っている。
きっと泣きつかれて寝てしまったんだろう。
女の子が僕の顔を見て、
「あれぇ?」
とつぶやき、周りをきょろきょろと見まわし始める
男の子のほうはまだぼぉっとしているようだ。
「ママ?」
やがて女の子が、何もない、死んだような部屋へ声をかけ、勢いよく立ち上がり駆けだした。
弾かれたような動きに、僕は反射的に手を出そうとして、躊躇う。
どうしていいのか、どう声をかければいいのかわからなかった。
女の子は部屋の真ん中で立ち止まる。
「ママ! ママ!?」
女の子の必死な声が虚しく響く。
男の子もやがて目を覚まし、大泣きを始めてしまった。
ワユンがすっと男の子に寄り添い、優しく抱きしめる。
「ごめんね、ごめんね」
男の子の背をさすり、しきりに謝るワユンも泣いていた。
男の子はわめき、身を捩っていて、まるでワユンの中で彼女に怒りをぶつけているようにも見えた。
僕はどうしていいかわからず、ただ立ち尽くしていた。
バタンッと勢いよく扉が開く音がした。
女の子が外へ駆け出したみたいだ。
ワユンがこちらを見上げる。
僕が行かないといけないに、決まってるよな。
何をやってるんだ僕は。嫌な役目を、関係のないワユンに押し付けてるってのに、ぼぉっとしているだなんて。
どうしていいのか全く分からなかったけど、僕は頷いて、女の子を追いかけた。
すぐに女の子はつかまえられた。
必死な顔でお母さんを呼び続ながら、きょろきょろと周りを見回していたから。
僕が近づくと、女の子はこちらに気づいた。
「だれ? ……あっ、おにーちゃん?」
「うん、そうだよ」
「あのね、ママがいないの」
町がなぜこんなになっているのか、僕がなぜここにいるのかなど一切気にも留めず、お母さんを探してくれと頼んでいた。
十にも満たないであろう少女の瞳は、痛々しいほど必死だ。
まだ幼いけれど、きっと心のどこかで気づいているんだろう。
言うべきなのか?
大人なら、きっとオブラートに包んで真実を告げるのだろう。
けど僕には、そんなうまい言い回しは思いつかない。
それにこの子は、たぶん死についてある程度知っているのだと思った。
お母さんの名前しか呼ばなかったことを思うと、きっとお父さんはいない。
それについ最近、多くの人がこの町で犠牲になっている。
逡巡の末、我に返ると、見上げてくる女の子がすごく怯えているようにも見えた。
この子は心の中で、死を必死に否定しているんだ。
僕はしゃがみこんで、女の子の目を見つめて――下を向いた。
……無理だ。
とても、目を合わせられない。
僕がもう少し早く城を抜け出せていれば。
あるいは、僕がヨナの説得に成功していれば。
この子の不幸の原因は、僕にもあった。
いや、だからこそ、顔を上げないといけないんだ。
怖気た心に抗い頭を持ち上げ、幼い女の子の怯えに満ちた目を見て、不幸を告げる。
「ごめんね。君のお母さん、助けられなかった」
「え?」
女の子は何を言っているかわからないという風にこぼす。
けれど、驚くほど一瞬にして血の気が引いたところを見ると、たぶん言葉は伝わっていた。
ただ、理解に至っていないんだ。
あるいは、無意識的に理解を拒んでいるのか。
それはこの子にとって、何よりも恐ろしい現実から身を守る、唯一の手段なんだ。
僕は女の子をできる限り優しく抱きしめていた。
可哀想だ。
これほど同情を感じたことはなかった。
腕の中の女の子は、つつけば崩れ落ちてしまいそうなほど、脆く儚いと感じた。
強化された僕の体じゃ、触れるか触れないかくらいに加減しないと、すぐにつぶしてしまうだろう。
幼すぎる。
こんな子供から、なぜ奪う必要があるんだ?
なんて、残酷な。
「ごめん、ごめんな」
僕にはもう謝ることしかできなかった。
僕の情けない言葉を、やがてこの子も理解したのか、急にその小さな全身から力が抜けた。
抱いていなければ、すとんと頽れてしまうだろう。
「ママ、いないの?」
「ごめん」
女の子の体が急激に固くなり、決壊したように泣き始めた。
体を捩らせ、僕をたたき、叫ぶ。
いやだ、いやだと否定を繰り返していた。
探しに行くんだと言って、僕の手から抜け出そうと暴れ、噛みつきもした。
必死で理解しまいと抗っている。
納得できないのも当然か。
死体すらないのだから。
このまま離して、探しに行かせるのがいいのか?
いや、死体の山に埋もれているだろう。
そんな光景見せていいはずがないし、ましてや探し出すなんて。
なら、死体を探してやるのがいいのだろうか?
この子の母親の顔は、まだうっすらと覚えている。
シャドウを召喚し、仲間を呼んでこの子の母親を探させることにした。
ウンディーネも同行させれば運ぶのも問題ないし、この子の母親にはこの子の匂いがついているはずだ。
この子の母親は体中がズタズタに引き裂かれていた。
せめてもと妖精たちに汚れを洗い流させ、毛布で覆う。
女の子は、母親にしがみついて泣き続けた。
男の子のほうも同じように両親と引き合わせた。
男の子は愕然と立ち尽くしたまま、動けなくなっていた。
僕とワユンは、ただそれを見ていることしかできなかった。
寄り添ってやることも、声をかけてやることもできない。
それをするには、僕らは未熟すぎた。
適切な対応など取れるはずもない。
ワユンはあまりにも可哀想な光景に、泣いてしまっていた。
やがて日が傾いてきた。
……いつまでもこうしているわけにはいかない。
お別れをするよう言うと、当然女の子は嫌がった。
男の子は我ここにあらずという感じだ。
ワユンが優しく二人を諭し、なんとか納得させたようだった。
結局僕は何もできなかった。
この町にある死体はすべて火葬した。
本当なら一人一人弔うべきなのだろうが、こんな時期だ、それは難しい話だった。
管理する人もいないのだから、このままだと腐らせてしまう。
せめてもと即席の墓を妖精たちに作らせ、葬る。
二人の親を葬る以外は、機械的な作業だった。
我ながら人の道を外れたことをやっているとは思うけれど、しょうがないとも思う。
まだやらなければならないことがある。
それと、助けなきゃならないところも。
せめて、この町のような悲劇を、少しでも減らさないといけないんだ。
こんな悲しいこと、あっていいはずない。
二人はドラゴンに乗っても俯いたまま、一言も発さなかった。
ヨナ、これが君の望んだことなのか?
復讐は構わないけれど、こんな子供たちまで巻き込むのは違うだろう?
いや、わかってはいる。
ヨナはこんなの望んでない。
これは暴走した強硬派とかいうあの魔人たちによるものだってことは。
そしてあいつらの怒りを思えば、この惨い襲撃はたぶんヨナの意思に関わらず、いずれ起きていたんだろうとも思う。
けど、この戦いは止めなければならないと思った。
冒険者の町<ハンデル>へ戻ってきた僕たちは、リタさんに二人を預けることにした。
正直なところリタさんに預けるのは不安だった。
確かに実務能力はある。
伊達に大貴族に仕えてはいない。
でも、それ以上に精神が弱りすぎていた。
生きる気力をほとんど失っている。
ましてやこんな状況で、情緒が不安定になってしまっている子供二人の面倒なんて看られるのだろうか?
いつまた魔物が襲ってくるかわからない。
食料だって限られているし、そもそもこの閉鎖空間に閉じ込められているという状況が精神的にも肉体的にも良くない。
リタさんでは、子供の面倒どころか自分の面倒さえも放棄してしまいそうだ。
こんな時、ハンナさんがいてくれたらどんなに良かったか。
あの人なら、きっとなんの文句もなく預かってくれるだろうし、二人の心のケアまで完璧にこなしてくれただろう。
なにより安全だ。
「……なに考えてんだ」
声に出して自分を戒めた。
ハンナさんはもういないんだ。
いつまでも甘えてちゃだめだろうが。
リタさんは壁際で寝そべっていた。
嘆き崩れる人たちをどうでもいいという風にぼぉっと眺めている。
まるでニュースを見ている仕事終わりのOLだ。
この場で一人、酷く浮いていた。
二人を連れて事情を話した。
リタさんは心底面倒そうな顔をしていたが、ワユンが頼み込むと
「ご主人様(ワユン)の命には逆らえません。ご期待に沿えるとは到底思えませんが」
と渋々ながら承諾してくれた。
「リタさん、二人をよろしくお願いします。
それと、これを」
僕はリタさんに頭を下げ、巾着袋から以前買っておいた対ドラゴン用の手投げ爆弾の入った小袋を取り出した。
「これは?」
「手投げ式の爆弾です。もし魔物に襲われたら使ってください」
「二人を守れ、ということでしょうか?」
「まぁ、そうなります。二人とリタさんには警護役の妖精を召喚しておきますが、万が一の備えということで」
そう答えると、リタさんは僕の手を押し返してきた。
「お断りします。なんで私が、そんな危ないもの持たなければならないのですか? ましてや、どこの馬の骨とも知れないような子供のために」
「――っ!」
リタさんの目は相変わらず冷たい。
二人の子供は明らかに怖がっていた。
僕はその言葉に腹が立ってしょうがなかった。
けど、こらえなきゃ。
言い方はどうあれ、リタさんからすればその言い分は正しい。
状況が状況だし、この爆弾は取り扱いを間違えば自分が木っ端みじんになってしまうのだから、持ちたくないのは当然だろう。
なにより、本当なら二人も僕が守らなければならないはずなんだ。
けど僕はここを離れなければならないし、召喚獣だけじゃ守れないものもある。
魔物との戦いなら、召喚獣でもなんとかなるだろう。
けど、人間との戦いは無理だ。
こんな状況では、人間の間で争いが起きてもおかしくない。
その時、召喚獣では対処できなくなってしまう。
その場に僕がいるのであれば僕の感情を汲みとって動いてくれるだろう。
けどこれから僕は何百キロも離れた場所へ向かわなきゃならない。
その時、独立した妖精たちは機械的に動くしかなく、人同士の争いに対して適切な対応をとれるかはわからない。
たとえば『敵意を感じたら反撃』と命令しても、どの程度の敵意まで? といった程度の処理はできない。
こんな状況下なのだから、子供が喚いて、それに対し大人が怒鳴ることもあるだろう。一瞬でも、本気の敵意を向けたら? あり得る。
その時、もし妖精が攻撃を始めたらどうなるか?
妖精と人との間で戦いが起きてしまう。
『攻撃を受けたら反撃』でも同じことだ。
要するに、召喚獣にはそこら辺の微妙な匙加減ができない。
魔物相手ならとりあえず攻撃すればいいけど、人間相手じゃそうもいかないんだ。
結局、人間の相手は人間がするしかない。
リタさんに押し返された手を、もう一度押し出す。
「使わなくても構いません。魔物の処理は妖精が必ず行うとも約束します。
ただ、もしここにいる人たちの間で争いが起きたら、その時はこれを取り出してください。使わなくても構いません。それだけでも、威嚇にはなりますから」
「私からもお願いします。二人だけじゃなく、リタさんの安全も考えているんです」
「……ご主人様がそうおっしゃるなら」
ワユンの口添えのおかげで、ようやくリタさんは受け取った。
この人、ただ単に僕の言うこと聞きたくないだけじゃないのか?
まぁいいか。
話がまとまったところで、僕は怯えた表情の二人に向き直り、しゃがみこんだ。
「二人とも、あのお姉さんの言うことをよく聞くんだよ」
「……やだ」
ぽつりとつぶやいたのは男の子だった。
「やだやだやだっ!!」
そして踵を返して逃げ出そうとする。
僕はその前に男の子の肩をつかんだ。
「どこに行く気なんだ?」
「帰るんだっ!! 離せよっ!!」
「帰ったって何もないんだ、それはダメだよ」
「こんなところよりはマシだっ!! きっと父さんも母さんも待ってるんだ!!」
大声で泣き騒ぎながら、僕の手を逃れようと身を捩っている。
体はまだ小さいのに思ったよりずっと力が強く、僕は力の加減をするのに精いっぱいになった。
少しでも間違えば、この子の肩を砕いてしまう。
まだ僕はそこまでの微調整を無意識でできるほど、この強化された体になじんではいない。
「うるさいっ!!」
鼓膜をつんざくような声がして、男の子はびくっと震え、騒ぐのをやめた。
振り返ると、リタさんがこの子を睨みつけて仁王立ちしていた。
触れただけで切れそうなほど鋭い視線だ。
美人の怒った顔は本当に怖い。
「帰りたいなら帰ればいいでしょう? それでさっさと野垂れ死ねばいい。ここに居られても、はっきり言って迷惑なの。邪魔だし、うるさいし、なんの役にも立ちやしない」
「ちょっとリタさん!」
すでに男の子は泣きそうな顔をしている。
それは厳しすぎる言葉じゃないか?
親を失ったばかりのこんな子たちに、そこまで言わなくてもいいじゃないか。
僕は抗議の声を上げたが、リタさんに睨まれた。
「この子たちの面倒は私に任せたのでは? なら口答えしないでください。どうせ役に立ちませんし」
「……」
確かに、僕は子供の扱いなんて初めてだし、ましてや、こんな境遇の子にどうやって接していいのかわからない。
ぐぅの音も出なかった。
男の子は何か意味のない言葉を言いながら、ついに泣き始めてしまった。
「うるさいっ!! 何度言わせるの!! これ以上騒ぐつもりならこの町からたたき出すわよっ!?」
リタさんの怒声を聞いても、男の子は泣き止まない。
どころか、女の子まで泣き始めてしまう。
リタさんはこちらに近づいてきて、二人の前まできて手を振り上げた。
それはだめだ!!
反射的にその手をつかもうと手を伸ばし――
――まずいっ!!
刹那、脳裏に響く。
この速度で手を出したら、リタさんの腕を潰してしまう。
――でも、止まらないっ!!
僕の手が細く柔らかい腕に突き刺さり、切断するのを感じた。
砕くどころか、突き刺さってしまうなんて――
「あっ――」
「だめですよ、リタさん」
ワユンの声がした。
ワユンが僕とリタさんの間に入って、右手でリタさんの手をつかみ、左手で僕の手を受け止めていた。
いや、受け止めてはいない。
僕の手はワユンの前腕部を引き裂き、残った上腕部まで吹き飛ばしてしまっていた。
そこから血が噴き出し、床に一瞬にして血だまりを作った。
なのにワユンは表情一つ変えない。
リタさんも僕も、二人の子供も、あまりのことに一瞬、完全に静止してしまう。
「ワ、ワユンごめんっ!!」
治癒魔法をかけ、すぐに治した。
けがは一瞬で治り跡形もなくなっていたが、脳裏には鮮明に映像が焼き付いたようで、体中がガクガクと震え始める。
なんでワユンが?
僕の手は反射で飛び出た。
強化された身体能力も相まって、それは自分でも制御できない速度だったはず。
いかにワユンが速くても、割って入ることなんて不可能だ。
予想して動いた、のか。
それでも止めるには、一瞬すら躊躇う猶予はなかったはず。
自分の腕が吹き飛ぶと分かってて、何の迷いもなかったのか?
ワユンは何事もなかったかのようにこちらへ笑いかけ、子供たちのほうを向く。
何事もない?
いや、そんなわけないだろう!
よく見ると、ワユンの額には汗が大量に浮かんでいる。
「悲しいし、つらいですよね。
……ごめんなさい、ママたちを助けてあげられなくて。
けど、今は泣くのを我慢してください。
我慢して、生きることだけ考えて。ママたちは、あなたたちを守ったのですから、あなたたちは生きなきゃだめなんです。
そのために、今はあのお姉さんの言うことをよく聞いて。あの人は少し怖いかもしれないけど、必ずあなたたちを生かしてくれますから」
二人はおとなしくワユンの言うことを聞いていた。
いや、たぶん言葉を聞いてたんじゃなくて、必死さだとか、そういうのを感じ取ったんだと思う。
ワユンは腕が吹き飛ぼうとも、二人を優先した。
やっぱワユンは、僕にはないものを持っている。
それはすごくきれいで、決して手が届かないからこそ、僕はそこに惹かれるんだと思った。
リタさんにワユンが何か話し、僕は女の子に白金貨を、男の子には僕の脇差を渡した。
脇差<魔女の血涙>はそれなりに見た目が派手なので、何の変哲もない鞘を錬金術で造った。
白金貨は錬金術で造った質素なペンダントの中に入れてある。
二人には本当に困ったときにだけ使うように厳命した。
脇差は長い間使ってきたわけで、愛着のあるものだったけど、今後必要になることはないだろう。
素手のほうが貫通力も切れ味もあるし。
刃物を渡すのは少し気が引けた。
けれど、僕がしてやれることはこれくらいしかなかった。
この先、僕がここへ帰ってこれるという保証もないのだから、してあげられることは今しなければ。
今後この町で暮らしていくことを考えれば、男の子はいずれ冒険者になる可能性が高いから、持っていれば役立つこともあるはずだ。
だから、これでいい。
やることを終えるころには日が暮れていた。
僕たちは急いでルビー・ドラゴンに乗り、町を飛び出した。
もとはそこそこ立派だったであろう大きめの平屋は、まるで廃墟のようになっていた。
中は血が飛び散り、さんざんに荒らされている。
ここで何があったのか簡単に想像がつくほど、凄惨な光景だ。
その中をアプサラスはするすると滑るように飛んでいき、キッチンの奥の床の上に置かれた大きな壺の隣に降り立ち、壺の下を指し示す。
「地下か?」
尋ねると、アプサラスはこくこくとうなずく。
たぶんそこは、食糧庫になっているんだろう。
「オーワさんっ。何があったんですかっ?」
遅れてやってきたワユンが、息を切らしながら尋ねてくる。
「生き残った人がここにいるみたいなんだ」
答えて壺をどかすと、床には取っ手が埋め込まれていた。
引っ張ると、ゆっくりと床が持ち上がる。
中は真っ暗だった。
「誰かいませんか? 助けに来ました」
そう言いながら中を光魔法で照らすと、奥のほうで小さくなっている二人の子供が見えた。
知っている顔だ。
『ありがとうおにーちゃん』の女の子と、その子のことを大好きな男の子。
けれど二人とも動かない。
――間に合わなかったか!?
恐ろしい想像を振り払い、アプサラスに二人を中から運び出してもらうと、すぅすぅという可愛らしい寝息が聞こえてきた。
よかった、寝てるだけか。
念のため治癒魔法をかけてやると、ゆっくりと二人は目を覚ました。
小さな手でこする目の下には、くっきりと涙の跡が残っている。
きっと泣きつかれて寝てしまったんだろう。
女の子が僕の顔を見て、
「あれぇ?」
とつぶやき、周りをきょろきょろと見まわし始める
男の子のほうはまだぼぉっとしているようだ。
「ママ?」
やがて女の子が、何もない、死んだような部屋へ声をかけ、勢いよく立ち上がり駆けだした。
弾かれたような動きに、僕は反射的に手を出そうとして、躊躇う。
どうしていいのか、どう声をかければいいのかわからなかった。
女の子は部屋の真ん中で立ち止まる。
「ママ! ママ!?」
女の子の必死な声が虚しく響く。
男の子もやがて目を覚まし、大泣きを始めてしまった。
ワユンがすっと男の子に寄り添い、優しく抱きしめる。
「ごめんね、ごめんね」
男の子の背をさすり、しきりに謝るワユンも泣いていた。
男の子はわめき、身を捩っていて、まるでワユンの中で彼女に怒りをぶつけているようにも見えた。
僕はどうしていいかわからず、ただ立ち尽くしていた。
バタンッと勢いよく扉が開く音がした。
女の子が外へ駆け出したみたいだ。
ワユンがこちらを見上げる。
僕が行かないといけないに、決まってるよな。
何をやってるんだ僕は。嫌な役目を、関係のないワユンに押し付けてるってのに、ぼぉっとしているだなんて。
どうしていいのか全く分からなかったけど、僕は頷いて、女の子を追いかけた。
すぐに女の子はつかまえられた。
必死な顔でお母さんを呼び続ながら、きょろきょろと周りを見回していたから。
僕が近づくと、女の子はこちらに気づいた。
「だれ? ……あっ、おにーちゃん?」
「うん、そうだよ」
「あのね、ママがいないの」
町がなぜこんなになっているのか、僕がなぜここにいるのかなど一切気にも留めず、お母さんを探してくれと頼んでいた。
十にも満たないであろう少女の瞳は、痛々しいほど必死だ。
まだ幼いけれど、きっと心のどこかで気づいているんだろう。
言うべきなのか?
大人なら、きっとオブラートに包んで真実を告げるのだろう。
けど僕には、そんなうまい言い回しは思いつかない。
それにこの子は、たぶん死についてある程度知っているのだと思った。
お母さんの名前しか呼ばなかったことを思うと、きっとお父さんはいない。
それについ最近、多くの人がこの町で犠牲になっている。
逡巡の末、我に返ると、見上げてくる女の子がすごく怯えているようにも見えた。
この子は心の中で、死を必死に否定しているんだ。
僕はしゃがみこんで、女の子の目を見つめて――下を向いた。
……無理だ。
とても、目を合わせられない。
僕がもう少し早く城を抜け出せていれば。
あるいは、僕がヨナの説得に成功していれば。
この子の不幸の原因は、僕にもあった。
いや、だからこそ、顔を上げないといけないんだ。
怖気た心に抗い頭を持ち上げ、幼い女の子の怯えに満ちた目を見て、不幸を告げる。
「ごめんね。君のお母さん、助けられなかった」
「え?」
女の子は何を言っているかわからないという風にこぼす。
けれど、驚くほど一瞬にして血の気が引いたところを見ると、たぶん言葉は伝わっていた。
ただ、理解に至っていないんだ。
あるいは、無意識的に理解を拒んでいるのか。
それはこの子にとって、何よりも恐ろしい現実から身を守る、唯一の手段なんだ。
僕は女の子をできる限り優しく抱きしめていた。
可哀想だ。
これほど同情を感じたことはなかった。
腕の中の女の子は、つつけば崩れ落ちてしまいそうなほど、脆く儚いと感じた。
強化された僕の体じゃ、触れるか触れないかくらいに加減しないと、すぐにつぶしてしまうだろう。
幼すぎる。
こんな子供から、なぜ奪う必要があるんだ?
なんて、残酷な。
「ごめん、ごめんな」
僕にはもう謝ることしかできなかった。
僕の情けない言葉を、やがてこの子も理解したのか、急にその小さな全身から力が抜けた。
抱いていなければ、すとんと頽れてしまうだろう。
「ママ、いないの?」
「ごめん」
女の子の体が急激に固くなり、決壊したように泣き始めた。
体を捩らせ、僕をたたき、叫ぶ。
いやだ、いやだと否定を繰り返していた。
探しに行くんだと言って、僕の手から抜け出そうと暴れ、噛みつきもした。
必死で理解しまいと抗っている。
納得できないのも当然か。
死体すらないのだから。
このまま離して、探しに行かせるのがいいのか?
いや、死体の山に埋もれているだろう。
そんな光景見せていいはずがないし、ましてや探し出すなんて。
なら、死体を探してやるのがいいのだろうか?
この子の母親の顔は、まだうっすらと覚えている。
シャドウを召喚し、仲間を呼んでこの子の母親を探させることにした。
ウンディーネも同行させれば運ぶのも問題ないし、この子の母親にはこの子の匂いがついているはずだ。
この子の母親は体中がズタズタに引き裂かれていた。
せめてもと妖精たちに汚れを洗い流させ、毛布で覆う。
女の子は、母親にしがみついて泣き続けた。
男の子のほうも同じように両親と引き合わせた。
男の子は愕然と立ち尽くしたまま、動けなくなっていた。
僕とワユンは、ただそれを見ていることしかできなかった。
寄り添ってやることも、声をかけてやることもできない。
それをするには、僕らは未熟すぎた。
適切な対応など取れるはずもない。
ワユンはあまりにも可哀想な光景に、泣いてしまっていた。
やがて日が傾いてきた。
……いつまでもこうしているわけにはいかない。
お別れをするよう言うと、当然女の子は嫌がった。
男の子は我ここにあらずという感じだ。
ワユンが優しく二人を諭し、なんとか納得させたようだった。
結局僕は何もできなかった。
この町にある死体はすべて火葬した。
本当なら一人一人弔うべきなのだろうが、こんな時期だ、それは難しい話だった。
管理する人もいないのだから、このままだと腐らせてしまう。
せめてもと即席の墓を妖精たちに作らせ、葬る。
二人の親を葬る以外は、機械的な作業だった。
我ながら人の道を外れたことをやっているとは思うけれど、しょうがないとも思う。
まだやらなければならないことがある。
それと、助けなきゃならないところも。
せめて、この町のような悲劇を、少しでも減らさないといけないんだ。
こんな悲しいこと、あっていいはずない。
二人はドラゴンに乗っても俯いたまま、一言も発さなかった。
ヨナ、これが君の望んだことなのか?
復讐は構わないけれど、こんな子供たちまで巻き込むのは違うだろう?
いや、わかってはいる。
ヨナはこんなの望んでない。
これは暴走した強硬派とかいうあの魔人たちによるものだってことは。
そしてあいつらの怒りを思えば、この惨い襲撃はたぶんヨナの意思に関わらず、いずれ起きていたんだろうとも思う。
けど、この戦いは止めなければならないと思った。
冒険者の町<ハンデル>へ戻ってきた僕たちは、リタさんに二人を預けることにした。
正直なところリタさんに預けるのは不安だった。
確かに実務能力はある。
伊達に大貴族に仕えてはいない。
でも、それ以上に精神が弱りすぎていた。
生きる気力をほとんど失っている。
ましてやこんな状況で、情緒が不安定になってしまっている子供二人の面倒なんて看られるのだろうか?
いつまた魔物が襲ってくるかわからない。
食料だって限られているし、そもそもこの閉鎖空間に閉じ込められているという状況が精神的にも肉体的にも良くない。
リタさんでは、子供の面倒どころか自分の面倒さえも放棄してしまいそうだ。
こんな時、ハンナさんがいてくれたらどんなに良かったか。
あの人なら、きっとなんの文句もなく預かってくれるだろうし、二人の心のケアまで完璧にこなしてくれただろう。
なにより安全だ。
「……なに考えてんだ」
声に出して自分を戒めた。
ハンナさんはもういないんだ。
いつまでも甘えてちゃだめだろうが。
リタさんは壁際で寝そべっていた。
嘆き崩れる人たちをどうでもいいという風にぼぉっと眺めている。
まるでニュースを見ている仕事終わりのOLだ。
この場で一人、酷く浮いていた。
二人を連れて事情を話した。
リタさんは心底面倒そうな顔をしていたが、ワユンが頼み込むと
「ご主人様(ワユン)の命には逆らえません。ご期待に沿えるとは到底思えませんが」
と渋々ながら承諾してくれた。
「リタさん、二人をよろしくお願いします。
それと、これを」
僕はリタさんに頭を下げ、巾着袋から以前買っておいた対ドラゴン用の手投げ爆弾の入った小袋を取り出した。
「これは?」
「手投げ式の爆弾です。もし魔物に襲われたら使ってください」
「二人を守れ、ということでしょうか?」
「まぁ、そうなります。二人とリタさんには警護役の妖精を召喚しておきますが、万が一の備えということで」
そう答えると、リタさんは僕の手を押し返してきた。
「お断りします。なんで私が、そんな危ないもの持たなければならないのですか? ましてや、どこの馬の骨とも知れないような子供のために」
「――っ!」
リタさんの目は相変わらず冷たい。
二人の子供は明らかに怖がっていた。
僕はその言葉に腹が立ってしょうがなかった。
けど、こらえなきゃ。
言い方はどうあれ、リタさんからすればその言い分は正しい。
状況が状況だし、この爆弾は取り扱いを間違えば自分が木っ端みじんになってしまうのだから、持ちたくないのは当然だろう。
なにより、本当なら二人も僕が守らなければならないはずなんだ。
けど僕はここを離れなければならないし、召喚獣だけじゃ守れないものもある。
魔物との戦いなら、召喚獣でもなんとかなるだろう。
けど、人間との戦いは無理だ。
こんな状況では、人間の間で争いが起きてもおかしくない。
その時、召喚獣では対処できなくなってしまう。
その場に僕がいるのであれば僕の感情を汲みとって動いてくれるだろう。
けどこれから僕は何百キロも離れた場所へ向かわなきゃならない。
その時、独立した妖精たちは機械的に動くしかなく、人同士の争いに対して適切な対応をとれるかはわからない。
たとえば『敵意を感じたら反撃』と命令しても、どの程度の敵意まで? といった程度の処理はできない。
こんな状況下なのだから、子供が喚いて、それに対し大人が怒鳴ることもあるだろう。一瞬でも、本気の敵意を向けたら? あり得る。
その時、もし妖精が攻撃を始めたらどうなるか?
妖精と人との間で戦いが起きてしまう。
『攻撃を受けたら反撃』でも同じことだ。
要するに、召喚獣にはそこら辺の微妙な匙加減ができない。
魔物相手ならとりあえず攻撃すればいいけど、人間相手じゃそうもいかないんだ。
結局、人間の相手は人間がするしかない。
リタさんに押し返された手を、もう一度押し出す。
「使わなくても構いません。魔物の処理は妖精が必ず行うとも約束します。
ただ、もしここにいる人たちの間で争いが起きたら、その時はこれを取り出してください。使わなくても構いません。それだけでも、威嚇にはなりますから」
「私からもお願いします。二人だけじゃなく、リタさんの安全も考えているんです」
「……ご主人様がそうおっしゃるなら」
ワユンの口添えのおかげで、ようやくリタさんは受け取った。
この人、ただ単に僕の言うこと聞きたくないだけじゃないのか?
まぁいいか。
話がまとまったところで、僕は怯えた表情の二人に向き直り、しゃがみこんだ。
「二人とも、あのお姉さんの言うことをよく聞くんだよ」
「……やだ」
ぽつりとつぶやいたのは男の子だった。
「やだやだやだっ!!」
そして踵を返して逃げ出そうとする。
僕はその前に男の子の肩をつかんだ。
「どこに行く気なんだ?」
「帰るんだっ!! 離せよっ!!」
「帰ったって何もないんだ、それはダメだよ」
「こんなところよりはマシだっ!! きっと父さんも母さんも待ってるんだ!!」
大声で泣き騒ぎながら、僕の手を逃れようと身を捩っている。
体はまだ小さいのに思ったよりずっと力が強く、僕は力の加減をするのに精いっぱいになった。
少しでも間違えば、この子の肩を砕いてしまう。
まだ僕はそこまでの微調整を無意識でできるほど、この強化された体になじんではいない。
「うるさいっ!!」
鼓膜をつんざくような声がして、男の子はびくっと震え、騒ぐのをやめた。
振り返ると、リタさんがこの子を睨みつけて仁王立ちしていた。
触れただけで切れそうなほど鋭い視線だ。
美人の怒った顔は本当に怖い。
「帰りたいなら帰ればいいでしょう? それでさっさと野垂れ死ねばいい。ここに居られても、はっきり言って迷惑なの。邪魔だし、うるさいし、なんの役にも立ちやしない」
「ちょっとリタさん!」
すでに男の子は泣きそうな顔をしている。
それは厳しすぎる言葉じゃないか?
親を失ったばかりのこんな子たちに、そこまで言わなくてもいいじゃないか。
僕は抗議の声を上げたが、リタさんに睨まれた。
「この子たちの面倒は私に任せたのでは? なら口答えしないでください。どうせ役に立ちませんし」
「……」
確かに、僕は子供の扱いなんて初めてだし、ましてや、こんな境遇の子にどうやって接していいのかわからない。
ぐぅの音も出なかった。
男の子は何か意味のない言葉を言いながら、ついに泣き始めてしまった。
「うるさいっ!! 何度言わせるの!! これ以上騒ぐつもりならこの町からたたき出すわよっ!?」
リタさんの怒声を聞いても、男の子は泣き止まない。
どころか、女の子まで泣き始めてしまう。
リタさんはこちらに近づいてきて、二人の前まできて手を振り上げた。
それはだめだ!!
反射的にその手をつかもうと手を伸ばし――
――まずいっ!!
刹那、脳裏に響く。
この速度で手を出したら、リタさんの腕を潰してしまう。
――でも、止まらないっ!!
僕の手が細く柔らかい腕に突き刺さり、切断するのを感じた。
砕くどころか、突き刺さってしまうなんて――
「あっ――」
「だめですよ、リタさん」
ワユンの声がした。
ワユンが僕とリタさんの間に入って、右手でリタさんの手をつかみ、左手で僕の手を受け止めていた。
いや、受け止めてはいない。
僕の手はワユンの前腕部を引き裂き、残った上腕部まで吹き飛ばしてしまっていた。
そこから血が噴き出し、床に一瞬にして血だまりを作った。
なのにワユンは表情一つ変えない。
リタさんも僕も、二人の子供も、あまりのことに一瞬、完全に静止してしまう。
「ワ、ワユンごめんっ!!」
治癒魔法をかけ、すぐに治した。
けがは一瞬で治り跡形もなくなっていたが、脳裏には鮮明に映像が焼き付いたようで、体中がガクガクと震え始める。
なんでワユンが?
僕の手は反射で飛び出た。
強化された身体能力も相まって、それは自分でも制御できない速度だったはず。
いかにワユンが速くても、割って入ることなんて不可能だ。
予想して動いた、のか。
それでも止めるには、一瞬すら躊躇う猶予はなかったはず。
自分の腕が吹き飛ぶと分かってて、何の迷いもなかったのか?
ワユンは何事もなかったかのようにこちらへ笑いかけ、子供たちのほうを向く。
何事もない?
いや、そんなわけないだろう!
よく見ると、ワユンの額には汗が大量に浮かんでいる。
「悲しいし、つらいですよね。
……ごめんなさい、ママたちを助けてあげられなくて。
けど、今は泣くのを我慢してください。
我慢して、生きることだけ考えて。ママたちは、あなたたちを守ったのですから、あなたたちは生きなきゃだめなんです。
そのために、今はあのお姉さんの言うことをよく聞いて。あの人は少し怖いかもしれないけど、必ずあなたたちを生かしてくれますから」
二人はおとなしくワユンの言うことを聞いていた。
いや、たぶん言葉を聞いてたんじゃなくて、必死さだとか、そういうのを感じ取ったんだと思う。
ワユンは腕が吹き飛ぼうとも、二人を優先した。
やっぱワユンは、僕にはないものを持っている。
それはすごくきれいで、決して手が届かないからこそ、僕はそこに惹かれるんだと思った。
リタさんにワユンが何か話し、僕は女の子に白金貨を、男の子には僕の脇差を渡した。
脇差<魔女の血涙>はそれなりに見た目が派手なので、何の変哲もない鞘を錬金術で造った。
白金貨は錬金術で造った質素なペンダントの中に入れてある。
二人には本当に困ったときにだけ使うように厳命した。
脇差は長い間使ってきたわけで、愛着のあるものだったけど、今後必要になることはないだろう。
素手のほうが貫通力も切れ味もあるし。
刃物を渡すのは少し気が引けた。
けれど、僕がしてやれることはこれくらいしかなかった。
この先、僕がここへ帰ってこれるという保証もないのだから、してあげられることは今しなければ。
今後この町で暮らしていくことを考えれば、男の子はいずれ冒険者になる可能性が高いから、持っていれば役立つこともあるはずだ。
だから、これでいい。
やることを終えるころには日が暮れていた。
僕たちは急いでルビー・ドラゴンに乗り、町を飛び出した。
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