女顔の僕は異世界でがんばる
恨みを抱く少女3
〈主人公視点に戻ります〉
「今日も大漁大漁。これは換金するの大変だ」
「ふふ。ハンナさんがため息つくの、目に浮かびますね」
ようやく平穏な日常が訪れて二日目、僕たちは昨日と同様に大量発生の駆除を終えて、帰路についていた。
でも、以前と全く同じではあるけど、少し違和感があった。
なんか妙に、使い魔たちの力が増しているような気がするのだ。以前なら、ピクシーはDランクの上位相当だったのに、今ではCランククラスの魔物を圧倒している。
おかげで、使い魔たちを使えば簡単に駆除できてしまう。だからそれに加え、あえて召喚魔法を使わずに、ワユンと戦闘訓練がてら狩りもしているという状況だ。
今日なんかは、使い魔たちを二グループにわけて、一日で二か所の大量発生を解決できてしまった。
他にも、エネルギーの貯まり方が明らかに増加していたり、知らないうちに貯まっていたりと、よくわからない現象が起きている。
これはどういうことだろう。ステータスみたいのが上がってるってことなのか? そのおかげで、ピクシーたちも強くなってると?
うーん、わからん。
考えても確認する手段ないしなぁ。
「オーワさん?」
「ん? あぁごめん、なんでもないんだ」
ワユンの心配そうな声で、我に返る。
ワユンは本当によく見てると言うか、こういうとこ鋭いよな。これも、奴隷だったころの経験が生きてるんだろうか。ご主人様のご機嫌を伺うてきな?
でも、それにしたって、見過ぎだろ。
と、いけないいけない。また考えに没頭するところだった。
「何をお考えに?」
「うん、今日の晩御飯どうしようかなぁって。ほら、宿のごはん、あんまりおいしくなかったじゃない?」
「え、えぇ、まぁ」
おそるおそるではあるけれど、控えめなワユンでさえ肯定してしまう。それほどまでに、今回の宿は料理がまずい。
「だからさ、何か食べたいものとかある?」
「う~ん、ケーキがいいです」
ちょっと顎に手を当てて、ぱぁっと明るく笑う。
「えぇと、ご飯だよ?」
「えぇ、そのつもりですけど……」
ぽかんとしている。そんな目で見ないで、突っ込みにくくなるから。SAN値ガリガリ削れるから。
でもここは、心を鬼にしないと。食生活の乱れはそのまま戦闘力に影響する。
「ワユン、ケーキばっか食べてたら、太るよ?」
「太っ!?」
ハッとして、おそるおそる下腹部へ手を伸ばすワユン。そして、肉をつまもうとして(つまめない)、何かを確認した後、顔を上げる。
「大丈夫です!」
真剣そのものだ。
「あぁ、えっと、今じゃなくて、これからね、太るからさ。バランスよく食べなきゃダメなんだ、食事は」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
「なかなか奥が深いんですねぇ……」
むむむと、眉間に皺を寄せてしまう。
いや、そんな奥が深いことは無いと思うけど、教わらなかったからか?
「まぁ今日はケーキも含めて、適当に買っていこう」
「はい」
でも、毎日そんなことをするわけにもいかないな。面倒くさいし。やっぱ、ヨナには少し申し訳ないけど、また宿替えかなぁ。
ヨナは、日常生活にも多少苦労している。歩けないことはないけれど、歩くたびに痛みがしたり、疲れたりと、様々ある。
だから宿選びの基本は、トイレが近くにあることになる。その点、今回の宿はなかなかによかったんだけどな。
それに住処をホイホイ変えるのも、あまりよくない。慣れというものがあるし、住処が変われば、それだけ彼女の負担になってしまう。
第一候補はやっぱ、前に泊まってた宿か。
そんな考えを話すと、おずおずとワユンは口を開く。
「あの、ですね? オーワさん……」
「え……あ、うん。なに?」
上目遣いにちょっとドキリとする。
「今回の事件も含めて、だいぶお金に余裕があると思うんです。それならいっそ、お家でも買いませんか?」
お家を買う? バイ・ハウス?
あまりに突拍子がなくて、ポカンとしてしまう。
ワユンは手を振りながらあわてて続ける。
「あぁいえ、えっと、私もお金を払うので、その、さ、三人で住めるような家を買ったらどうかな、と思いまして。小さいお家なら安く買えますし、引っ越しとか考えなくて済みますし、後々のことを考えれば安く済むと思うんです」
え? 何この新婚みたいな会話。三人でって……一つ屋根の下女の子二人と一緒に暮らすってこと?
何それヤバい。主に僕のSAN値がヤバい。ガシガシ削れちゃうよ? ゼロになったら正気失っちゃうけど大丈夫?
と、冗談はともかく、家か。たぶん安く済むってのは本当なんだろうな。引っ越しの必要がないのはヨナにとっても都合がいいだろうし。
でも。
「でも料理とか家事とかって誰もできないじゃない? それに、ヨナに何かあったとき、誰もいないってのは怖いし……」
「奴隷を買って、ハウスキーパーとして働いてもらえばいいんですよ」
なんとな? 元奴隷のワユンからそんな言葉が出るとは。
僕の驚きに、ワユンはあわあわと補足する。
「え、えぇとその、誰も奴隷を酷使しないでしょうし、それなら奴隷だって願ったりだと思いますよ? 衣食住完備、給金付きで、酷使される心配のないハウスキーパーなんて、奴隷としては最高の就職先です。ほとんど執事やメイドと変わりないですしね」
「な、なるほど……それなら、家政婦を雇うのと、どっちがいいと思う?」
蛇の道は蛇。奴隷のことならよくわかるようだ。
けど、家政婦と変わらないなら、そっちを雇った方がいいかな、なんて思う。慣れてるだろうし。それから、値段的にどうなのかも気になる。
「う~ん。家政婦さんを雇うのにどれくらいお金がかかるかはわかりませんが、それだと宿に泊まってるのと変わらない気も……」
「奴隷の方が安いのか?」
「質にもよると思います。でもオーワさんの場合コネもありますし、病気持ちじゃなければ、その、多少お年を召した方でもいいのですし、それならかなりお安く手に入るかと」
なるほどね。白金貨も大量にあることだし、あながち夢物語を聞かされてるわけじゃないみたいだ。
でも、僕だってずっとこの町にとどまってるつもりはない。
ヨナの呪いを解いたら、今度はゆっくりと、自由気ままに、異世界観光みたいなことをしてみるのもいいかな、なんて思う。
だから家を用意したところで、どれくらい使うかはわからない。
まぁその場合、ヨナやワユンがここに残りたいって言った時譲ればいいわけだし、誰も残らなかったら奴隷にあげればいいのか。
「いずれにしろ、いい物件があればの話かな。ちょっと簡単には決められないや」
「そ、そうですよねっ! ちょっと焦りすぎました」
焦りすぎました? というかそのセリフもだいぶ慌てた感じだけど、何かまずいことでもあったのか?
まぁいいか。
そんな雑談をしながらギルドへ入ると、何やら忙しそうだった。ついにギルド長交代か? 次の候補はハンナさんと見た。さすがにそれはないか。
噂をすれば何とやら、ハンナさんと目が合った。というか、ハンナさんに捕捉された。
あぁ、面倒事の予感……やっと平穏な日常に戻ってきたのに……。
「オーワさん! ちょうどよかった。ちょっと来てもらえますか?」
「えぇ、わかりました」
とはいえ、先の事件ではだいぶお世話になってしまったのだ。内心を押し殺して愛想よくするくらいの分別はある。
二階の面談室で、ハンナさんの対面に着席。
深刻な表情で、彼女は切り出した。
「オーワさん、ワユンさん。上位ランクの冒険者が大量発生の酷い地域に派遣されてると言うのは、すでにご存じですよね?」
リュカ姉たちがここ3週間くらい留守にしているのはそれのためだ。
僕たちがうなずくと、ハンナさんは続ける。
「そのことで、悪いニュースがあります。先ほど、東にある貿易都市テオサル近郊にて、冒険者グループが壊滅したとの情報がありました」
「――――っ!?」
息が止まった。
手足の感覚が急に奪われたようだった。
かいめつ? それはどういうことだ?
かいめつ、かいめつ、壊滅……。
視界がぐらぐらと揺れる。
「オーワさん!! 落ち着いてください!!」
「あ、はぃ……」
「壊滅したとはいえ、全員死んだわけではありません。生き残った内の一人からもたらされた情報です。たぶん生き残りはほかにもいるでしょう。彼らは上級者ですから、しぶといはずです」
まくしたてるハンナさんの目じりはうっすら赤い。
そうだ、心配なのはこの人も同じだ。
「すみません、取り乱してしまって」
「いえ。ですが、悠長なことを言っている暇もありません。すぐにでも発ってくれますか?」
「わかりました。では……」
「あ、ちょっと!」
立ち上がろうとする僕を、ハンナさんが留める。
「今回は人命救助最優先でお願いします。
テオサルもすでに魔物軍団に襲われているようですが、幸い王国騎士団が間に合ったようですので、そちらの心配はないでしょう。情報によると、テオサルから南西に十五キロほど行ったところで壊滅したそうですから、そこへ向かってください。
あと、食料と水、薬、毛布などはこちらで用意したので、必要とあれば使ってください。詳しい地図も入ってます」
「わかりました」
ハンナさんから巾着袋を受け取り、僕たちはギルドを後にし、町の外へと突っ走った。
「はぁっ……はぁっ……」
息が上がるにつれ、不思議と頭がクリアになっていく。
時間をおいたためだろうか。
もし、間に合わなかったら?
「――――っっ!!」
脳裏に、残酷なイメージが過る。
血にまみれた、いつかのリュカ姉の姿が、フラッシュバックする。
大丈夫、マルコだっているんだ。
必ず生きてるはず。
大丈夫、大丈夫……。
門を出るか出ないかのところで、すぐに魔法を発動する。
「出でよ<ワイバーン>!!」
現れた翼竜の首へ跨ると、ほぼ同時に、すぐ後ろにワユンが飛び乗ってきた。
「ワユン?」
「行きましょう。きっと皆さんは生きてます」
力強い言葉には何の根拠もない。そもそもワユンは、三人のことを知らないのだから。
でも、不思議と勇気づけられる。この子はホントに、妙な力を持ってるな。
「全速力でテオサルへ!!」
命令すると、ワイバーンは咆哮とともに、勢いよく舞い上がった。
「今日も大漁大漁。これは換金するの大変だ」
「ふふ。ハンナさんがため息つくの、目に浮かびますね」
ようやく平穏な日常が訪れて二日目、僕たちは昨日と同様に大量発生の駆除を終えて、帰路についていた。
でも、以前と全く同じではあるけど、少し違和感があった。
なんか妙に、使い魔たちの力が増しているような気がするのだ。以前なら、ピクシーはDランクの上位相当だったのに、今ではCランククラスの魔物を圧倒している。
おかげで、使い魔たちを使えば簡単に駆除できてしまう。だからそれに加え、あえて召喚魔法を使わずに、ワユンと戦闘訓練がてら狩りもしているという状況だ。
今日なんかは、使い魔たちを二グループにわけて、一日で二か所の大量発生を解決できてしまった。
他にも、エネルギーの貯まり方が明らかに増加していたり、知らないうちに貯まっていたりと、よくわからない現象が起きている。
これはどういうことだろう。ステータスみたいのが上がってるってことなのか? そのおかげで、ピクシーたちも強くなってると?
うーん、わからん。
考えても確認する手段ないしなぁ。
「オーワさん?」
「ん? あぁごめん、なんでもないんだ」
ワユンの心配そうな声で、我に返る。
ワユンは本当によく見てると言うか、こういうとこ鋭いよな。これも、奴隷だったころの経験が生きてるんだろうか。ご主人様のご機嫌を伺うてきな?
でも、それにしたって、見過ぎだろ。
と、いけないいけない。また考えに没頭するところだった。
「何をお考えに?」
「うん、今日の晩御飯どうしようかなぁって。ほら、宿のごはん、あんまりおいしくなかったじゃない?」
「え、えぇ、まぁ」
おそるおそるではあるけれど、控えめなワユンでさえ肯定してしまう。それほどまでに、今回の宿は料理がまずい。
「だからさ、何か食べたいものとかある?」
「う~ん、ケーキがいいです」
ちょっと顎に手を当てて、ぱぁっと明るく笑う。
「えぇと、ご飯だよ?」
「えぇ、そのつもりですけど……」
ぽかんとしている。そんな目で見ないで、突っ込みにくくなるから。SAN値ガリガリ削れるから。
でもここは、心を鬼にしないと。食生活の乱れはそのまま戦闘力に影響する。
「ワユン、ケーキばっか食べてたら、太るよ?」
「太っ!?」
ハッとして、おそるおそる下腹部へ手を伸ばすワユン。そして、肉をつまもうとして(つまめない)、何かを確認した後、顔を上げる。
「大丈夫です!」
真剣そのものだ。
「あぁ、えっと、今じゃなくて、これからね、太るからさ。バランスよく食べなきゃダメなんだ、食事は」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
「なかなか奥が深いんですねぇ……」
むむむと、眉間に皺を寄せてしまう。
いや、そんな奥が深いことは無いと思うけど、教わらなかったからか?
「まぁ今日はケーキも含めて、適当に買っていこう」
「はい」
でも、毎日そんなことをするわけにもいかないな。面倒くさいし。やっぱ、ヨナには少し申し訳ないけど、また宿替えかなぁ。
ヨナは、日常生活にも多少苦労している。歩けないことはないけれど、歩くたびに痛みがしたり、疲れたりと、様々ある。
だから宿選びの基本は、トイレが近くにあることになる。その点、今回の宿はなかなかによかったんだけどな。
それに住処をホイホイ変えるのも、あまりよくない。慣れというものがあるし、住処が変われば、それだけ彼女の負担になってしまう。
第一候補はやっぱ、前に泊まってた宿か。
そんな考えを話すと、おずおずとワユンは口を開く。
「あの、ですね? オーワさん……」
「え……あ、うん。なに?」
上目遣いにちょっとドキリとする。
「今回の事件も含めて、だいぶお金に余裕があると思うんです。それならいっそ、お家でも買いませんか?」
お家を買う? バイ・ハウス?
あまりに突拍子がなくて、ポカンとしてしまう。
ワユンは手を振りながらあわてて続ける。
「あぁいえ、えっと、私もお金を払うので、その、さ、三人で住めるような家を買ったらどうかな、と思いまして。小さいお家なら安く買えますし、引っ越しとか考えなくて済みますし、後々のことを考えれば安く済むと思うんです」
え? 何この新婚みたいな会話。三人でって……一つ屋根の下女の子二人と一緒に暮らすってこと?
何それヤバい。主に僕のSAN値がヤバい。ガシガシ削れちゃうよ? ゼロになったら正気失っちゃうけど大丈夫?
と、冗談はともかく、家か。たぶん安く済むってのは本当なんだろうな。引っ越しの必要がないのはヨナにとっても都合がいいだろうし。
でも。
「でも料理とか家事とかって誰もできないじゃない? それに、ヨナに何かあったとき、誰もいないってのは怖いし……」
「奴隷を買って、ハウスキーパーとして働いてもらえばいいんですよ」
なんとな? 元奴隷のワユンからそんな言葉が出るとは。
僕の驚きに、ワユンはあわあわと補足する。
「え、えぇとその、誰も奴隷を酷使しないでしょうし、それなら奴隷だって願ったりだと思いますよ? 衣食住完備、給金付きで、酷使される心配のないハウスキーパーなんて、奴隷としては最高の就職先です。ほとんど執事やメイドと変わりないですしね」
「な、なるほど……それなら、家政婦を雇うのと、どっちがいいと思う?」
蛇の道は蛇。奴隷のことならよくわかるようだ。
けど、家政婦と変わらないなら、そっちを雇った方がいいかな、なんて思う。慣れてるだろうし。それから、値段的にどうなのかも気になる。
「う~ん。家政婦さんを雇うのにどれくらいお金がかかるかはわかりませんが、それだと宿に泊まってるのと変わらない気も……」
「奴隷の方が安いのか?」
「質にもよると思います。でもオーワさんの場合コネもありますし、病気持ちじゃなければ、その、多少お年を召した方でもいいのですし、それならかなりお安く手に入るかと」
なるほどね。白金貨も大量にあることだし、あながち夢物語を聞かされてるわけじゃないみたいだ。
でも、僕だってずっとこの町にとどまってるつもりはない。
ヨナの呪いを解いたら、今度はゆっくりと、自由気ままに、異世界観光みたいなことをしてみるのもいいかな、なんて思う。
だから家を用意したところで、どれくらい使うかはわからない。
まぁその場合、ヨナやワユンがここに残りたいって言った時譲ればいいわけだし、誰も残らなかったら奴隷にあげればいいのか。
「いずれにしろ、いい物件があればの話かな。ちょっと簡単には決められないや」
「そ、そうですよねっ! ちょっと焦りすぎました」
焦りすぎました? というかそのセリフもだいぶ慌てた感じだけど、何かまずいことでもあったのか?
まぁいいか。
そんな雑談をしながらギルドへ入ると、何やら忙しそうだった。ついにギルド長交代か? 次の候補はハンナさんと見た。さすがにそれはないか。
噂をすれば何とやら、ハンナさんと目が合った。というか、ハンナさんに捕捉された。
あぁ、面倒事の予感……やっと平穏な日常に戻ってきたのに……。
「オーワさん! ちょうどよかった。ちょっと来てもらえますか?」
「えぇ、わかりました」
とはいえ、先の事件ではだいぶお世話になってしまったのだ。内心を押し殺して愛想よくするくらいの分別はある。
二階の面談室で、ハンナさんの対面に着席。
深刻な表情で、彼女は切り出した。
「オーワさん、ワユンさん。上位ランクの冒険者が大量発生の酷い地域に派遣されてると言うのは、すでにご存じですよね?」
リュカ姉たちがここ3週間くらい留守にしているのはそれのためだ。
僕たちがうなずくと、ハンナさんは続ける。
「そのことで、悪いニュースがあります。先ほど、東にある貿易都市テオサル近郊にて、冒険者グループが壊滅したとの情報がありました」
「――――っ!?」
息が止まった。
手足の感覚が急に奪われたようだった。
かいめつ? それはどういうことだ?
かいめつ、かいめつ、壊滅……。
視界がぐらぐらと揺れる。
「オーワさん!! 落ち着いてください!!」
「あ、はぃ……」
「壊滅したとはいえ、全員死んだわけではありません。生き残った内の一人からもたらされた情報です。たぶん生き残りはほかにもいるでしょう。彼らは上級者ですから、しぶといはずです」
まくしたてるハンナさんの目じりはうっすら赤い。
そうだ、心配なのはこの人も同じだ。
「すみません、取り乱してしまって」
「いえ。ですが、悠長なことを言っている暇もありません。すぐにでも発ってくれますか?」
「わかりました。では……」
「あ、ちょっと!」
立ち上がろうとする僕を、ハンナさんが留める。
「今回は人命救助最優先でお願いします。
テオサルもすでに魔物軍団に襲われているようですが、幸い王国騎士団が間に合ったようですので、そちらの心配はないでしょう。情報によると、テオサルから南西に十五キロほど行ったところで壊滅したそうですから、そこへ向かってください。
あと、食料と水、薬、毛布などはこちらで用意したので、必要とあれば使ってください。詳しい地図も入ってます」
「わかりました」
ハンナさんから巾着袋を受け取り、僕たちはギルドを後にし、町の外へと突っ走った。
「はぁっ……はぁっ……」
息が上がるにつれ、不思議と頭がクリアになっていく。
時間をおいたためだろうか。
もし、間に合わなかったら?
「――――っっ!!」
脳裏に、残酷なイメージが過る。
血にまみれた、いつかのリュカ姉の姿が、フラッシュバックする。
大丈夫、マルコだっているんだ。
必ず生きてるはず。
大丈夫、大丈夫……。
門を出るか出ないかのところで、すぐに魔法を発動する。
「出でよ<ワイバーン>!!」
現れた翼竜の首へ跨ると、ほぼ同時に、すぐ後ろにワユンが飛び乗ってきた。
「ワユン?」
「行きましょう。きっと皆さんは生きてます」
力強い言葉には何の根拠もない。そもそもワユンは、三人のことを知らないのだから。
でも、不思議と勇気づけられる。この子はホントに、妙な力を持ってるな。
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