ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第15話 決着、そして…

魔王の放った攻撃は、まるで漆黒の光線だった。
黒い魔力の奔流が、俺に向かって真っすぐ伸びる。


「死ねぃ!!勇者ぁああ!!」


俺にあたる次の瞬間。


ースパン!


そんな小気味いい音と共にその光線は、二つに裂けた。
俺は何もしていない。
綺麗に裂けたソレは、空中で霧散する。


「なっ!?」


魔王の顔が驚きの色に染まる。
俺が纏っている魔力は、すでにこの世の生物全てを超越してしまっているらしい…。
魔力を最大までため込んだ剣を、俺は全力で振るった。








「魔王!!覚悟しろ!!…これで、終わりだああああああああ!!」






途端に俺の目の前にログが表示された。


ー【破滅の一撃】 承認ー


ー魔王への一撃 オーバーキル確定ー


ーイベント005 【魔王討伐報酬 最高神への謁見】 スタンバイー


ー『鍵』を確認ー


ーイベント005改変 コード001ー


ー『権利』を承認ー


ーイベント005改変 コード002ー


ー『眼』を承認 最高神への道 スタンバイー


ーイベント008改変 コード003ー


ーコード001、002、003を承認ー


ーイベント005消失 魔王討伐後 最高神への道が開きます 個人名【アレン】のみ対象ー




俺の剣が、一層強く光り輝く。
神の光の如きその輝きは、すべてを切り裂く破滅の剣。


その剣が、魔王の体を切り裂く。




「ぐおぉおおおおおお!!」




断末魔の叫びをあげる魔王。
周囲の空気が切り裂かれ、真下の大地は俺の剣の影響か、クレーターができていた。
そして魔王が俺の魔力に飲まれ、魔力光に変わり、空中へ霧散した。


光の奔流は止まらない。
そして、俺の目の前に再びログが流れた。


ー魔王討伐確認ー


ー通常イベントの進行ができなくなっていますー


ールート変更ー


ー場所限定解除 最高神権限により、この場に転移魔術を組みますー


ー最高神の神殿へ 強制転移ー


そのログが消えた瞬間、俺の体は…。






――――――






私たちは魔王と勇者…アレンの戦いの決着の後をその目で見た。
だが、誰もが詳細を語ることはできなかった。
最後のアレンと魔王が対峙した後……黒い魔力が二つに裂け、アレンが攻撃をした後が、私たちは語ることができない。


光が収まったあと、残っていたのは…誰もいなかったからだ。
そのあまりに早い決着。
そして、そのあとにいるはずの勇者が、その場にいない。


魔王が敗れたショックで魔物達は動けないのか呆然と立っている。
だが、私も動けない。
アレンが、魔王にとどめを刺したはずのアレンがいないのだ。


「あ…アレ…ン…?」


私には理解できない。
もしかして、アレンが負けたのか?そんなはずがない。


そんなこと万に一つも信じたくない。


両方消えた?でも、何のために?


私が呆然と立っていると、兵士たちが雄叫びを上げる。


「勇者様の勝利だああああああ!!魔物ども!!覚悟せよぉおおおお!!」


途端に状況が変わった。
私の方をセルリアがつかむ。


「クローディアさん!!今はしっかりしてくださいっ!ご主人様なら絶対無事ですからっ!早くっ、魔物達を…!」


「……。」


私は、体が動かない。
なぜだ?なぜアレンがいない?
そんなことばかり頭に浮かぶ。


そうだ、この指輪なら……。


私は指にはまっている指輪…アレンがくれた指輪を見て、思い出す。
この指輪には【コール】の魔法がかかっているのだ。
生きているなら…絶対に答えてくれるはず…!
私は、指輪に魔力を通し、アレンを思って呼びかける。


「アレン!!どこにいるの!?アレン!!返事をしてっ!!」


そんな私を、セルリアは見ていたが、すぐさま魔物達の駆逐に向かう。
リリアは詠唱に集中しているのか、額に汗を浮かべながら、周囲の魔物を殲滅している。
ヴァイルも同じ様に周りの魔物を倒している。


戦況はすでに、人間側の勝利に終わろうとしていた。
魔物はすでに魔界に逃げ始めていた。
主導者が消えたのだ。
強い魔物達はすでにアレンが叩き潰していたため、魔物側には戦力は残っていなかったのだ。


そして、アレンからの返事がないまま、人間側がこの戦いを制した。




――――――――




「やったーーー!!魔王を倒したぞぉおおお!!」


兵士や民衆が互いに抱き合い、涙を流し喜び合っていた。


「あ、あの勇者!とんでもない大物だったな…!前の勇者とは格が違うよっ!」


「そうよね…!剣の一振りで魔物を百は倒していたわっ!!まさに、並び立つものがいないほどの剣士…。」


「無双の剣士だっ!あいつは、この世界最強の剣士だっ!」


口々に人々が勇者をたたえる。
圧倒的な力で敵を倒すアレンの姿は、どこまでも英雄的で…。
勇者が魔王を倒したという話は世界中に広まるだろう。


≪無双の剣士≫アレンの名は、聖国内で知らぬものがいないほど有名になった瞬間だった。


――――


あの後、戦場を探し回ったが、アレンの姿はどこにもなかった。
【コール】で呼びかけるが、リリアもクローディアもセルリアもヴァイルも…誰も連絡をつけることはできなかったのだ。


私たちは、聖国の国王のもとへと急ぐ。


あわただしく魔王討伐の一行が謁見の間に入る。
だが、その顔はどこか暗いものが混じっていた。


「おぉ!!帰ってきたかっ!!勇者たちよっ!!……む?」


王もそれに気付いたのか、顔を顰めている。
…そう、いるべきはずの英雄が、アレンが、いないのだ。


「…勇者アレンは、消息不明です。国王。」


恰幅のいい男…大臣の一人が国王に耳打ちをしているのを、私はしっかり聞いていた。獣人の耳はすごくいいのだ。


「国王っ!!アレンは…アレンはここに来たのっ!?」


私はたまらず国王に聞く。
その言葉を聞き、周りにいた数人の大臣たちもざわめきだす。


「…勇者アレンは、ここには来ていない…ま、まさか…いないのか…?」


王が言葉を発している途中で、私は勢いよく謁見の間を飛び出そうとするが、その手をつかまれる…リリアだ。


「離してっ!リリア!早くアレンを探さないとっ!!」


「落ち着きなさい!!クローディア!!」


普段のおっとりとした口調からは信じられないほどの強く、リリアは叫ぶ。


「で、でも…!」


「クローディア…!私もアレンのことは心配です!ですが、闇雲に探したって、無駄になるだけです!ここは、情報を集めて…」


「そんな悠長なこと、言ってる場合!?アレンが、いないのよっ!?」


私は焦っている。
自分でもわかるほどだ。
涙も流してしまっているかもしれない。


そこに静かで、重い声が響く。


「クローディア。リリア。まずは落ち着くのだ…。我がこうして顕現していられるのは、主がまだ生きている証拠…。おそらく…主は…連れて行かれたのかもしれん…最高神の元へ…」


ヴァイルが言うと、今度こそ場が静まりかえった。
聖国の王が、その言葉を聞き。


「勇者が魔王を討伐したとき…最高神様への謁見が叶うと…古い文献に伝えてある…。案ずるな、勇者の伴侶たちよ。必ず、勇者は帰ってくるであろうよ…。」


私は、その言葉が信じられない。
なぜかわからないが、魔王を倒した後に勇者が神のもとへ呼ばれるなんておかしな話だと思えてならないのだ。


「そ、そうですよクローディアさん。ご、ご主人様は、きっと帰ってきますっ!!」


セルリアが力強い口調で、私をなだめてくれている。


「……アレンはいつごろ戻ってくるの?ヴァイルっ。」


「……わからん。だが、こちらからアレンの元へ連絡がつかないことには、どうしようもできないのだ…。」


「…それならば…、今日は落ち着かないかもしれないが、待つしかないということだな?…こちらで宿の手配はする。君たちも疲れているだろう…今日の疲れをゆっくりととるがいい。勇者が戻ってきたら、いち早く君たちに伝えよう。」


王が私に向かってそう言葉を紡ぐと、宿の手配をしてくれた。


「どうにもならないのだ…クローディア。我らにできる事は、帰ってきた主を、優しく迎えてやることだけだ。優れた妻である貴様ならば…それぐらい、やってみせよ。」


ヴァイルの言葉に、私の心は揺るぐ。


「…わかったわ…。」


納得できない気持ちと、はやる気持ちがあるが…仕方なく私たちは宿に向かうことにした。

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