ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第14話 神との邂逅

アレンの視線の先にはかなりの大きさの巨人がいた。


「あれは…なんだ?ん?」


アレンは目の前のログが更新されたことを確認した。


ログ


ー源神ガイアの出現を確認ー


ー天使ラズエル、女神アテネの降臨を確認ー




そのログの中にある、聞き覚えのある名前を見てアレンはぎょっとした。


「は!?ラズエルだって!?」


そう、彼がこの世界に来た時に、初めて会った女性の名前だ。
そして、彼の目の前に大きな光の球が二つ、現れた。
段々と人の形をとっていく光の球は、一つは長身のスタイルのいい女性、そしてもう一つは小さい女の子のような形をとっていく。


「天使?神?…いまさら何の用だ!?」


光に向かって叫ぶアレン。
すると、光が完全に人の形をとり、瞬時にラズエルとアテネが現れる。
ラズエルは装飾過多な金色の剣をもち、アテネはこれもまた装飾過多な槍をもっていた。
だが、幼女の方は疲れており、女性の方は腕を組んでいた。


「やっとつながったよ…ラズエル」


「まったく、何時間待たせりゃ気が済むんだ…って、つきましたね。クソ神。」


その空中に漂う二人を見て、疑問の声を上げるアレン。


「なんだあんたら!?ラズエルはわかるけど、そっちの子供はなんだ?」


「…子供って…失礼な!私にはちゃんと、アテネっていう名前があるんだよ!?」


「そうですよ、アレンさん。いくらコレがクズだからと言って、名前が無いわけではありません…」


「クズとか言うな!!威厳がなくなるで「元からありません。大丈夫です。」


涙目のアテネを言葉で切り捨てるラズエル。


「…で?何の用だ?もしかして、アレ。あんたらの仕業か?」


ガイアを指さし、二人に尋ねるアレン。
だが、二人は首を横に振る。


「そんな訳ないじゃないですか。アレンさん。あれは正真正銘、最高神の一部です。」


その名前に引っ掛かりを感じるアレン。


「最高神…あっ…あいつが言ってたやつか…?」


前にファフニールを倒した時に、言っていた言葉だ。


「ちょっとまて。じゃあ、アイツって相当強いのか?」


その問いに深くうなずくアテネとラズエル。


「ええ。SSSランクの冒険者単体なら楽に屠れるくらいの強さです…もっとも、アレンさんの敵じゃありませんけどね。


「そうなのか?じゃあ、早くいかないと…!」


「そうだね。クローディアちゃんと、リリアちゃんもそっちに行っちゃったみたいだし…早くいかないと、彼女たち、三回くらい、死んじゃうよ?」


「え…?どういうことだ…?」


いきなり声のトーンが変わったアテネに、アレンは尋ねる…答えはすぐに帰ってきた。


「あの子たち、あそこにいるんだよ?知らないの?」


「なんだって!?それを早く言えよ!何しに来たかはわからんが、教えてくれてありがとな!それじゃ!」


飛び去ろうとするアレンの前に、アテネが立ちふさがる。
決死の表情のアテネを見て、ただ事ではないと感じたアレンは威圧を込めながら言う。


「おいおい…どういうことだ?なんで俺の邪魔をする?お前たちには関係ないだろう…?そこをどくんだ。俺はクローディアとリリアを何としてでも守らないといけないんだ!」


「そ、そうはさせないよ!!アレン君…君はここで死ぬ運命だ…私たちの剣と槍…これは不死族に対する最終兵器みたいなものでね……触れたが最後…君もただじゃすまないだろうね。」


そう言って槍を構えるアテネ。
心なしか震えているような気がするのは気のせいか。


「そうです!ここであなたは死ぬ運命なのです!いざ、私たちと勝負!!」


瞬間、二人の女性が、アレンに切りかかった。
煌めく黄金の剣と黄金の槍…そのどちらもが必殺の一撃だった。
だが、アレンはその攻撃を全て見切り、すんでのところでかわす。


「うぉおおおおおわぁああ!?あぶねぇなっ!!」


アレンは平原にいるガイアが光の波動を放つのが見えた。
すると、驚いたことにガイアの周りに魔物どもが湧いて出てきているではないか。


「おい…お前ら…何が目的だ!?」


「そんなの、決まって、いるでしょう!!…ちっ!しぶといですね!!」


ラズエルが剣を振りながら答える。
そのどれもをアレンはロングソードではじき落とす・


「私たちの目標は…あなたたち、不死族を殺すことだよ!!」


その言葉を聞いて、アレンは覚悟を決めた。


「じゃあ、俺たちの、敵…ってことだな?」


その問いに対する答えは、アテネによって示される。


「【神槍・アテナ】!!」


アテネの構えた槍から、8つの光の球が、軌跡を描きながら視認できないような速さでアレンに迫る。
そして、同時にラズエルも技を放つ


「【神剣・ラグナロク】っ!!」


ラズエルの剣からも8つの光の球が飛び出す…合計16の光の球がアレンに襲い掛かった。








「ふん!!」










掛け声とともに、大振りに横に一閃する。
すると、迫っていたはずの光の球がすべて消え去ってしまった。


「え!?これを凌ぐの!?」


アテネは驚きの声をあげた。


そして、アレンは視界の端でログが更新されるのを確認した。


ログ


ー【神の因子(女神アテネ)】を取得ー


ー【神殺し】が使用可能になりましたー




(神殺し?…えぇい、今は深く考えている場合じゃない!!)


アレンは目の前の敵を討滅しようと、全身の魔力をかき集め、【魔力爆散】を使おうとした。


その時。


「ちょっとまったーーーーーーー!!」


「ぐふぇっ!!」


一人の男が、アレンの頭に直撃してきたのだった…




―――――――――――――




「ゴオオオオオオオオオオオオ!!」


光の波動が過ぎ去ったあと、クローディアとリリアとヨーグは信じられないものを見ていた。


「う、そ…なんでこんなに魔物が…?」


呟くクローディア。ヨーグもあっけにとられていた。


「しっかりしてください!!二人とも!早く戦わないと、みなさんが死んでしまいますよっ!!」


そう、波動が過ぎた後に残ったのは魔物の群れだ。
そのどれもが白い体に、黄金の光を纏っていた。
そんな光景を見て、驚いている冒険者と騎士団にすかさず指示が飛んできた。


「皆、恐れるな!!魔術師部隊は攻撃魔法の用意!!前線部隊は敵と正面からぶつかれ!!我々はその隙に横からロックタイタン亜種を攻撃する!!」


騎士団の兵長らしき人物が号令を出す。


「ちっ…相変わらず冒険者は捨て駒かよ…!!」


誰からともなく冒険者から声があがった。
その指示はあきらかに、「お前らが目の前の獲物のエサになれ。その隙に我々が手柄をいただく」…といったような指示だったのだ。


「そんな指示、受けられるわけがっ」


言いかけたクローディアをヨーグが止める。


「だめだ嬢ちゃん…緊急の依頼は、騎士団預かりになることが世の常だ。今、俺らが反抗してもなんの得にもならんよ。」


「こんな時にそんなことを言ってる場合ですか!?」


「リリアさん…これは、もう依頼じゃない…規模も、討伐対象も桁違いの数と強さだ………生きるための戦争なんだよ。」


そうこうしてる間に、冒険者の群れが魔物の群れと衝突した。
クローディアとリリアは覚悟を決め、自分の獲物を構える。


「あー!!もう!いいわよ!やってやるわよ!!」


「勝って、生きるんです!!私たちはこんなところで死ぬわけにはいきません!!」


クローディアが軽やかな身のこなしで空中に飛び出し、魔物の群れへと突っ込んでいく。
リリアもそれに習い、空中移動で魔物の群れに突っ込む。


「クローディア!私が広域魔法で殲滅します!!あなたは倒し損ねた魔物の駆除を!!」


「わかったわ!!派手にぶっ飛ばしなさい!!」






ここに、騎士団千名弱、冒険者百名強対、源神ガイアと魔物大小あわせて三千の死闘が、幕を開けた。

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