ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第2話 アレンの気持ち

クローディアはアレンからの手紙に目を通す。
流れるような文字で書かれた手紙には、こう書いてあった。


『クローディアへ


まず、約束を破ったことを謝る。ごめん。


そして、キミに報告しないといけないことがある。俺は、神様に命を狙われているらしい。


先日、俺たちを襲ったあの緑と白銀の髪をした男…名をファフニールというらしい。


その男からの情報だ。そして、ヴァイルにも確認を取ってみた。』


クローディアは疑問に思う。
なぜ、ヴァイルの名が出てくるのか不思議だった。


(そういえば、ヴァイルってアレンの使い魔なのよね…?今、どこにいるのかしら?結局、アレンからヴァイルのこと聞けなかったままだったし…)


手紙の続きがクローディアの疑問を解決してくれた。


『ヴァイルは…もう気付いているかもしれないが、城壁都市で襲ってきた黒い龍、双剣の男…アジ・ダハーカと同一人物だ。本人曰く、厳密には違うそうだが…まぁ、いろいろと話をしたんだ。


そしたら、なんとびっくり…彼…今は彼女か…は俺を狙ったのは神の仕業だといいやがったんだ。


そして、ファフニールはアジ・ダハーカだったころの戦友…のようなものだったらしい。


天界の最高神に対する反乱を、こいつらは起こしたんだ。それで、結果は失敗…『最高神』…とやらにすべてを粉微塵にされて、反乱のトップリーダー3体が捕らえられた…らしい。


突拍子もない話だが、ヴァイルが嘘をついてないことは明白なんだ。本人曰く、


「契約主には嘘はつけんのだ」とのこと。


そして、その『最高神』が俺を殺そうとしているらしい。


理由は、わからない。ヴァイルの記憶も混濁しているらしくてな…


…とまぁ、こんな感じだ。


俺をとりまく状況の説明はおしまい。


次は…あの言葉の返事だが……まぁ、俺の気持ちはそういうもんだっていう事だけ、覚えておいてくれればいい。
あと、リリアにも告白された。


…正直ビビったが、今の内容と同じ様なことをリリアへの手紙にも書いてある。
告白の返事も含めて、クローディアへの気持ちも含めて…な。


さて、本題に入ろう。


これらの状況すべてを見るに、俺がこれから出逢うであろう困難は…とてつもなく危険をはらんだものだ。それを理解してくれ。
できれば、クローディアとリリア…両方守れればいいんだが、俺は一人しかいない…。
情けない話だが、全員守り切れる自信がないんだ。


ある程度の負傷も覚悟してもらわないといけないかもしれない。


それでも、俺と…一緒に来てくれるっていうなら…俺と一緒に旅を続けてくれるっていうなら…次の紙にある術式に触れてくれ。


その先に俺はいる。
期限は1日だ。
短いかもしれんが、この町に長く滞在するわけにはいかないからな。
もし、来てくれるんだったら死なないよう、ちょっと訓練をすることになる。


これで終わりだ。
あとは君たちの好きにしてくれ。


キミの友人 アレンより』






クローディアは手紙を読み終えた。
深呼吸し、もう一枚の紙を目の前に持ってくる。
その紙には手紙にあった通り、蒼い魔力を帯びている術式が書かれていた。
幾重にも重ねられ、複雑ぜ精密な術式だ。ただの紙にこれほどの付呪はできないはずなのだが、クローディアの知識の中に付呪の知識はないため、疑問は覚えない。
彼女は思う。


(まったく…アレン…なんでもするって、いったじゃない…しっかり落とし前つけてもらうんだから…あと、告白するだけして逃げるなんて許さないわよ…?私にも返事をさせなさい…。)


ごちゃごちゃとまとまらない思考だが、これだけははっきりしていた。


(私は、アレンと一緒じゃないと嫌だ…これだけは変わらないわ。今までも、これからもリリアと、アレンと、私で最強冒険者になるんだから…神なんて目じゃないのよ!!)


カッと目を見開き、同じく手紙を読み終えたであろうリリアに、そちらを向かずに、言い切る。


「リリア。私、アレンについていくわよ…!」


そして、術式に触れようとした…その瞬間。


「待ってください!!」


紙を机の上において、術式に触れようとするクローディアの手を止めるものがいた。
リリアだった。
震える手でクローディアの手をつかんでいる。
だが、手と反してリリアのその瞳はまっすぐにクローディアを見ていた。


「…クローディアちゃんに言わなければいけないことがあります…!」


その目を見て、クローディアは確信していた。
次にリリアが言う言葉を。
だが、まずクローディアは言わなければならない。
リリアより先に言うと決意していたのだ。


「まって、リリア。私、アレンが好きよ?…そして、あなたのことも好き…その…いやかもしれないけれど…私とあなた…二人で…アレンを支えてはいけないかしら…?」


その言葉に目を見開くリリア。


「…え!?二人でっ…?い、いいんですか…?…負けませんからねーっていうつもりだったのに……」


ふふっ、と目を細めて笑うクローディアは続けていう。


「あら…?勝ち負けなら私だって負けるつもりはないわよ…?ただ、あなたもおさまりがつかないでしょう…それと、私のことはクローディア、と呼びなさい。」


「な…!?…ふふふ…いいでしょう、クローディア…がそういうのでしたらそうします。…クローディア。私、アレン君と会ったら話さないといけないことがあるんです。一緒に聞いてくれますか?」


笑い顔からいきなり真剣みを帯びた目をしたリリアを見て、クローディアはリリアの本気を悟った。


「…どんな爆弾か知らないけど、いいわよ…聞くわ。」


「クローディア…ありがとうございます…!さて…じゃあ、行きましょうか…心配性のアレン君のところに行きましょうか…。」


その様子を見ていたガイゼルは意外そうな顔をして、二人に尋ねた。


「君達…もう決めてしまったのか?」


その問いに、二人は即答する…はい、と。


そんな二人を見て、微笑むガイゼル。


そして、二人は術式に触れる。


すると、二人の体を蒼い魔力が覆う。


転移魔術が発動しているのが二人にはわかった。
あわてて、別れの言葉をガイゼルとエルに伝える二人。


「それじゃあ、お二人とも…またお会いしましょう!」


「今まで世話になったわね…ガイゼルさん、エル。元気でね!」


手を振る二人はいつのまにか消えてしまっていた。






――――――――――――






静寂が訪れた。
隣で涙を流している娘を見て、ガイゼルは少女の頭をなでながら言う。


「エル…また会えるさ。きっとな。」


ガイゼルの手のぬくもりを感じながら、エルは言葉を紡ぐ。


「ぐすっ………わたくしも…アレンさんと一緒に行きたかったですの…」


そんなエルをみて、迷ったガイゼルだが、伝えることにした。


彼から言うか言わないかはガイゼルさんにまかせる。と言われた言葉だ。


「…エル。お前にアレン君から伝言だ。」


「え…?」


ガイゼルが静かにささやく。


「『エルが学校を卒業して、立派な大人になっても今の気持ちのままだったら…一緒に冒険しに行こう。それまで、俺が上げたアレを使って、頑張るんだ。応援してる。』とな。まったく…あの男は…」




「アレンさん…お父様!私、精進しますの!立派な大人になって、アレンさんと一緒に冒険に行きますの!!」




ガイゼルの頭痛の種ができた瞬間であった。

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