ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第5話 無意識な変態

エルが襲われ、黒炎竜、アジ・ダハーカを名乗る女性が現れる少し前…


時間は、アレンとセルリアが部屋に戻ったところまで巻き戻る。


————————————


「おわっ…お金持ちの家ってすごいんだな……」


割り当てられた部屋に入った瞬間、アレンは金銭的格差を感じずにはいられなかった。
皮張りのソファや、高級そうな装飾の入った机と椅子…そして、極めつけは暖炉とクマような生き物の毛皮だ。あんぐりと開いた口が怖い。牙見えるし。
アレンがまだ日本に居た頃にみた、中世ヨーロッパの金持ちの家のイメージそのままだった。


「まるで夢みたいだな……ところで、セルリアさん。なんで部屋に入るなり俺の腕に抱きついてんの…?」


アレンがフロウライト家の金持ちさに驚いている間、ずっとセルリアはくっついていたのだ。すごく密着して。セルリアの豊満な胸にアレンの腕が沈み込む。


(や…やわらけぇぇぇぇぇ!…じゃなくて!!)


「あの、セルリアさん?そろっと、離れてくれると、ありがたいんだけど…」


そうアレンが言うと、セルリアは、はぁーっとため息を吐いた。


「残念ですご主人様…せっかく気持ちよくして差し上げようと思ったのに…私の体はもう火照って火照って…よいっしょ。」


芝居がかった言葉をいい、いきなり服を脱ぎだすセルリア。


「まてまて!!そんなわざとらしく俺の劣情をあおるな!!」


といいながら止めに入るふりをして、セルリアの体をあちこち触って堪能するアレン。こいつ、やはり変態である。
胸のあたりとか、腰のあたりとか、おなかとか、耳とかすべて堪能するアレン。


「ひゃぁぁあん!!ちょっ…ご主人様!?あぁああん!!」びくびく


「え?ちょっ…」


アレンの器用値をなめてはいけない。こいつ、数百億の器用値に恥じない精密な指技を繰り出したのだ。
たちの悪いことに、本人は無意識のため、気付いていない。
セルリアはすっかり息が上がり、顔はリンゴのように真っ赤になってしまっている。
こつ然とした表情をしているセルリア。そして、かすれた声でつぶやく。


「はぁ…はぁ…初めてですよ…?初めて全部服着たまま…しかも服の上からですよ…?イっちゃ「ちょっ!まって!!それ以上はまずい!!」


あわてて止めに入るアレン。


「んんんっ!!あぁああん!!」


「なんで口に手を当てただけなのにそんなに感じてんだよっ!?意味わかんねぇ!?」


アレンが体を密着させ、セルリアに腕を回し、口に手を当てる。そのひとつひとつの動作が神がかっていた。
密着させた体はなぜかセルリアの体の芯まで快楽を訴えてきて、首の後ろに息がかかり…とにかく、すべての行動がセルリアの快楽の琴線に触れてしまうようだった。


思わず座り込むセルリア。
アレンと目が合うと


「ば、ばかぁああああああ!」


涙目になりながら叫び、ベッドの中にもぐりこむ。


(あ、逃げた。…まぁ…悪いことしちゃったな…これは、風呂に入って落ち着くとするか…)


屋敷内にある大浴場ではなく、部屋にあった風呂を使ったアレン。
タオルと着替えは自分で用意した。セルリアはまだベッドの中だ。
浴室内はとても広く、浴槽もアレンが十分足を伸ばせる大きさだった。


(ふぅ~…やっぱり長旅の後の風呂は格別だねぇ…)


インベントリから買った時のままの冷たい氷とコップ、水を出して一気に飲むアレン。


「ふぃぃぃ…最高だねぇ…」


そう一人ごとをつぶやく。優雅な時間が流れていた。
布団の中に居るであろうセルリアにどう謝ろうか考えていたが、意を決して布団をはぐってみると


「すう……すう…」


寝ていた。思いっきり寝ていた。


(あ…これ、俺寝ないフラグ立てちゃったか?)


アレンはセルリアと同衾などしたら自分がどんな凶行に走るかわからなかった。
本気でお持ち帰りしてしまうかもしれない。
しかし、彼の頭にクローディアの顔がふと浮かぶ。


(なんか…ものすごい罪悪感…クローディアの部屋でも行こうかな…?)


そこまで考えるアレンはもう寝ないことを決心していた。


(でも、いきなりクローディアの部屋行って土下座しても気持ち悪がれるだけな気がする…)


その時、ガイゼル氏にもらった短剣がアレンの頭をよぎる。


(そうだ!短剣に付呪して、それをクローディアにプレゼントしよう!)


これは名案だ!と勢い込んで短剣を取り出すアレン。


(あ…でも、ここじゃあ…セルリアさんに見つかるかもしれない…そうだ。確か俺、【空中移動】使えたよな?ためしに使ってみるか…こんな夜更けなら見つからないだろうし。)


アレンはこれを機会に風呂上がりの空中散歩を楽しむことにした。


テラスに出るアレン。夜空に浮かぶ月が美しい。


「さて…【空中移動】」


静かに唱えると、わずかな魔力がアレンの周りを包み込む。


(あれ?浮かないな?)


イメージ的には勝手に浮遊するかと思ったがそうではないようだった。


(どうすんだ?…まさか、もう浮けるのか?)


恐る恐る階段を上るように足を動かすが…空を切る足。


(…どうやって飛ぶんだ?)


足をばたつかせるアレンだが、何も起こらない。


「ほっ」


【空中移動】を発動して数分したところで、アレンは足にすこし力を入れてジャンプしてみた。
すると瞬間的に音もなく数百メートル真上に浮かぶ体。


「うぎゃあああああああああああああああああああ!!」


そのあまりの速さにアレンは叫び声を上げる。


だがそこはもはや上空数千メートル。彼の叫び声は誰にも届かない。


(とまれとまれ!!はっ!魔力を上に放出させれば…!)


必死で上に魔力を爆発させるアレン。


「ひいいいいいいいいいい!!ピーキースギルダロゥガアアアアアアアア!!」


瞬間的に下に向かうアレン。すさまじい重力がアレンの体を襲う。


自動で【絶対障壁】が起動する。重力も外の身を切るような冷たい風もすべてが遮断される。


商業都市の近くの森に墜落するアレン。
アレンの周りにはクレーターができた。


(加減が…難しい!!)


しばらく練習すると、大分加減が分かってきたアレン。
結局、「爆発」させるのではなく、緩やかに「放出」させるのが正確な方法だった。


(すげぇ…!俺、空飛んでるよ!!生身で!!」


感動するアレン。
眼下に見える商業都市の家々の明かりが幻想的だ。
ガイゼルの屋敷や、湖が見える。


「さて、絶好のロケーションだ…」


おもむろに短剣を取り出すアレン。
もう空中での移動はマスターしたようだ。


「どんな付呪にしようかな…そういえば、【破滅の因子】ってのがあったよな…」


嫌な予感しかしないアレン。


(使い魔って…絶対アイツだろ…)


アレンの頭をよぎるのはつい先日激闘を繰り広げたドラゴンと青年の顔。


「まぁ、それはあとにするとして、プレゼント用の短剣をつくらないとな…」


まじまじと短剣を見るアレン。すると、新しいスキルが発生したのか、短剣のそばの空中に四角い画面が表示された




名前:ガーネット・ダガー


攻撃力:10


耐久力:2


付呪効果:なし(空きスロット3 制限あり)


※付呪制限解除により 全ての付呪が施せます。(道具は壊れません)






アレンがあわててスキルを確認する。


【鑑定眼】を取得していた。LV25で。


(おぉぉぉお!すげー!スキル覚えた!!というか…なんでも…か)


アレンは魔力を1千万くらい使い、全力で二振りのガーネット・ダガーに付呪を施す。
すると、このようなものができた。


名前:ワールド・プロミネンス・ガーネット・ダガー


攻撃力:150000


耐久力:250000


付呪効果:攻撃力上昇LV3000・耐久力上昇LV4000・黒猫への想いLV-


(すげぇチートクセェのができた…さて、次のは…)


目が点になるアレン。




名前:次元を超越した破滅の魔王の短剣


攻撃力:ー


耐久力:ー


付呪効果:『黒炎竜』自動召喚・自動修復・不朽


※ 所持者は『アレン』に設定されています。




(やべえええええええええええ!!やっちまったぁああああああ!)


事情を説明するとこうだ。最初の一振りを手掛けて、最高の出来になったぜ…とか思ったアレンは調子にのって次のダガーに、最強の付呪…と意識しながら掘っていたら、このザマである。


商業都市のはるか上空…7000mの場所で、短剣を黒い炎が包み込む。


すると、瞬間的にすさまじい魔力の風圧がアレンの全身を襲った。




「久しぶりだな…不死族…いや、今は我が主か…」




黒髪巨乳で黒い布一枚纏っただけの女性が、アレンの目の前に現れた。


アレンは思う。巨乳率、高くね?と。

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