ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第10話 クローディアとアレンの話・・・もう結婚しちゃえよ。

ヨーグがテントに入り、周囲の警戒を始める二人。アレンとクローディアはまだ眠いのか、目をこすりながらしきりにあくびをしていた。


「ふわぁあああ・・・。なぁ、クローディア。」


眠気を吹き飛ばすためにクローディアと話をしようと話しかけるアレン。


「なに?アレン?・・・結婚の申し込みなら断ったはずよ?」


いたずらっぽい笑みを浮かべながら応答するクローディア。


「ちげぇよっ!いや、結婚はしてほしいけどそうじゃない・・・!今はそうじゃないんだ!」


「冗談よ?というかなによ?」


(なにが冗談なんだ?まぁいい。)


「あの・・・さ。ちょっと疑問に思っただけだから、言いたくないならいいんだが、クローディア。お前、7年前にその、お母さんが死んじゃったんだろ?そのあと、どうしてたんだ・・・?」


言いにくいことをずばずばと聞くアレン。こいつ、空気読めよ。


「・・・そうね。お母さんが死んじゃったあと、私は身寄りもなかったし、獣人への扱いがこの国では悪いことは知っていたから、教会に行ったわ。」


アレンの頭には現代日本の教会の知識しかなかったので、疑問に思うアレン。


「なんで教会へ?」


「・・・ああ、あなた記憶がないんだっけ・・・この国の教会は孤児院も兼ねているのよ。私が行った協会は、受け入れている人数もまだ少なかったこともあって、セトさん・・・教会の神父様が私を引き取ってくれたの。」


「そうだったのか・・・。」


「えぇ。その時に家事を覚えたの。大体私より年下の子が多かったから、セトさんの手伝いをしながらご飯を食べさせてもらっていたわ。ただし、17歳になったら独り立ちするという条件付きでね。それまでは本当にお世話になったわ・・・。」


なつかしそうな顔をするクローディア。


「それなら家事が得意なのも納得だな・・・あれ?っていうことは・・・今、17歳だよな?クローディア?」


「ええ。冒険者ギルドであなたに会った・・・あの時より少し前に、教会から出て、冒険者になろうって決意したの。冒険者なら、お金もそこそこ稼げるし、なんたって外の国へ行けるし・・・とか思ってね。なんだかとってもできすぎた話だと思うけど・・・運命って不思議ね?ふふっ。」


目を細めて笑うクローディア。とてもかわいい。


「ははっ・・・それはとても俺も運が良かったな。こんな可愛い娘と旅ができるんだ。これ以上の幸せはないかもな・・・。」


しみじみというアレン。赤くなるクローディア。


「っ!///もう・・・恥ずかしいこといわないでよ・・・。で、アレンはなんで冒険者に?」


「うーん・・・俺もちょうどそんな感じだよ。町の兵舎に勤めてたリリアさんに行き倒れてたところを助けてもらったんだ。それから一か月いろんなことを教えてもらった。通貨の単位から、この国の風習とか、ギルドとか・・・とても助かったから、まず恩返しをしないといけないな、と思ってね。俺の個人の力で稼げる方法って【刻印付呪】したものを売るか、冒険者ギルドで冒険者するかってな感じで2択だったから。」


「冒険者ギルドにした理由は・・・やっぱり【刻印付呪】で稼ぐと飼い殺しになるからかしら?」


思案顔になるアレン。


「まぁ、それもあるけど、一番の理由は魔力の少なさだよ。」


「え?今日、【闘気】を纏ってヨーグさんに切り付けまくってたわよね?あれって結構魔力が必要なんじゃ・・・」


「あぁ・・・あれ、【闘気】っていうのか・・・結局ヨーグさん教えてくれなかったからな。まぁ、なんにせよ俺の満足のいく作品というか、売り物になる刻印を施すには魔力がかなり必要でね。俺の魔力は今250だから、高等な付呪になるとどうしても無理なんだよ。」


「・・・ねぇ、疑問に思ったんだけど。」


「ん?」


「なんで、魔力がないのに【刻印魔術】覚えられるの?普通魔術系のスキルってそれ相応の魔力が必要じゃないの?」


しまった。という顔をするアレン。


「いや・・・それがな・・・」


「んん?あやしいわねぇ・・・?」


笑顔でこちらに迫ってくるクローディア。これは観念するしかないかと思うアレン。


(ちょうどいい。ここは本当のことを言っても多分信じてもらえないだろうし・・・)


「えっと、実は俺。記憶喪失じゃなくて、こことは違う世界の、地球の日本っていう場所から来たんだよ。」


「え?」


目が点になるクローディア。


「だから、違う世界の人間なんだ。俺は。」


「それって・・・面白い冗談ね。笑えないわよ?異世界から来た。なんて【フェガリア聖国】の勇者召喚の儀式の話そのまんまじゃない。そういえば【フェガリア聖国】の歴代の勇者も黒髪黒目の人が多かったけれど・・・」


勇者という単語を聞いてびくっとなるアレン。


「勇者召喚?というか勇者って天然ものじゃなかったのか?聖女とか勇者とかは複数いるって聞いたが、みんな召喚された人たちなのか?」


急に浴びせられた質問にたじろぐクローディア


「えっと・・・全員が全員召喚されたっていうわけじゃないわ。元から異常なほど強い力を秘めた【人】が現れると、その人を勇者って呼ぶのよ。」


「そうなのか・・・」


「でも召喚技術があるのは【フェガリア聖国】だけよ?アレンが召喚されたとして、どこに迷い出たの?」


「えっと・・・それがな・・・近所のスーパーで買い物してて、家に帰って、ドアを開けたら・・・気付いたら、空の上だった。」


「それって・・・誰かに召喚されたってわけじゃなさそうね?」


「ああ。なんか正確なことは覚えていないんだが、そんな感じだ。で、地面に激突するかと思ったら、空中で止まって、足先つけたら急に体が落ちたんだよ。」


「・・・それ・・・あー・・・本当なの?というかスーパーってなに?」


それから数十分ほど元の世界の話をするアレン。大学のこと、コンビニのこと、車のこと、日本という国の他にもさまざまな国があるということ・・・いろいろなことをクローディアに話した。


クローディアは最初は大丈夫か?コイツ。という顔をしていたが、あまりにもリアリティのある話や、アレンの大学という場所での失敗談や成功したことなどを聞くうちにアレンが異世界人だということを理解した。


「この話ってほかの人にはしたの?リリアさん・・・だっけ?」


「いや、クローディアに話したのが初めてだ。」


考え込むクローディア。何かを決めたのか急に顔を上げて、神妙な顔をして話し始める。


「アレン。今の話は私たちだけの秘密にしましょう。」


「え?なんで?まぁ、確かに突拍子のない話だけど・・・」


「ちがうわ・・・勇者召喚以外での召喚者・・・あなたみたいなのがいるって知られたら、なんだか面倒なことになりそうな気がするのよ。」


「・・・まぁ、確かにな。リリアさんに嘘をついちゃったのは悪いと思ってるから・・・この試験に合格したら話そうかと思ってたんだけど」


「だめよ。どんなところから情報が漏れるかわかんないんだから・・・リリアさんには悪いけれど・・・お金で返しましょう。私も手伝うから。ね?そうしたほうがいいと思うのよ・・・。」


うーん・・・と悩むアレン。


「・・・わかった。これは俺とクローディアだけの秘密だ。リリアさんの恩にはお金で返すとするよ。」


「ありがとう。アレン。」


「いやいや、お礼を言われるほどじゃないよ。こっちこそ、俺のためにいろいろ考えてくれたし・・・ホントにありがとうな。クローディア。」


お礼を言うと、ちょっと赤くなるクローディア。


「・・・もう!私たちはパーティーよ?相棒のことを心配するのは当然じゃない!」


「ははっ・・・そうだな。相棒・・・か。クローディア。これからもよろしくな。」


「ええ。お金いっぱい稼げるまで、一緒にがんばりましょう!」


そのあとは今までとは違った雰囲気で話し始める二人。


周囲を警戒しながら、ゆっくりと話した二人は、確かに心の距離が縮まっていた・・・。


【刻印付呪】を取得した経緯を話したら、すんごい目で見られたが。







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