ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第7話 アレン、またの名を変態。

黒髪猫耳美少女、クローディアという見た目かわいいし、家事も得意という「女」としてはかなり優秀な美少女は、【冒険者】を夢見ていた。


そんな残念美少女になんでもすると約束してしまったアレン。


(・・・クローディアと一緒にパーティー組んで各国回るってのも乙な話だよなぁ・・・確実に俺かクローディアが死んじゃうけど。まぁ、死なせないけどな。安全マージンしっかり取って、ゆっくり強くなれば・・・)


などと考え、武器屋を見ているアレン。
そうしていると、件の残念猫耳がやってきた。


「アレン!私これにするわ!」


ずるずると引きずってきたのはアレンの身の丈ほどもある大剣


「お前!バカじゃねぇのか!どんな頑張ってもお前じゃそれ振れねぇだろ!!」


「バカとは何よ!お前っていうな!クローディアと呼びなさい!!」


ぎゃーぎゃーと騒ぐ男と子供。
アレンが2本のダガーにするよう必死で頼むと、クローディアはなんとか折れてくれた。


「わかったわ・・・確かに私じゃこの剣は振れないわ。弓も難しいし。ダガーなら包丁と一緒だものね。これでやっと戦えるわ!!」


「はーい、次は防具なー」


アレンはもはや自暴自棄に陥っていた。残金は1Gギールと128Dドール
鎧も店主と話し合った結果、本人に鎧の適性がないということが判明。
本人によく似合う布の服を買った。残金1Gギール。もとは200Dドールだったが、128Dドールに負けさせたのはなんと驚き、クローディアだった。


・・・だが


(・・・コレ・・・ヤバイゾ・・・防御力が圧倒的に足りてない。これじゃ後方で盾もってがちがちにして守るってのは無理だな・・・せめて・・・敏捷が高ければ・・・)


アレンは一片の望みを持って問いかける。


「おい、クローディア。」


「ん?なぁに?アレン?」


「能力値はいくつだ?」


「うーんと・・・あぁ、あった、コレね」


クローディアはたどたどしい手つきで【メニュー】を操作し、俺に見せてきた。




名前:クローディア
種族:獣人族 LV2
職業:冒険者(未承認)


STR 10
DEF 5
INT 20
SPD 220
TEC 265


体力 60
魔力 45


所持スキル


固有
【獣言語理解】LV-
【メニュー】LV-


ノーマルスキル
【家事】LV25
【気配察知】LV20
【気配隠蔽】LV10
【軽業】LV20
【剣術】LV1 NEW!


パッシブスキル
【身軽】LV5
【アクロバット】LV10
【動体視力強化】LV10
【敏捷強化】LV20
【器用強化】LV25


アクティブスキル
【大跳躍】LV3




(完全にこれ家事得意な猫じゃね?・・・冒険者って・・・これで冒険者OKなのか?)


「器用と敏捷がすごいでしょう?」


ドヤ顔で自慢するクローディア。


「あ、あぁ・・・確かに敏捷は・・・猫だからか・・・器用はさすがに家事が得意と言うだけあって素晴らしいくらいに高いな!・・・で、どうやって戦うんだ?」


「どうやって・・・って?フツーに敵のわきっぱらを切りつける?」


まさかの前線の第一線で戦うつもりだった。なんだお前。暗殺者にでもなる気か。




「・・・帰ろ「なんでもするって「わかったよ!!」




(まぁ敏捷が高いし・・・問題はSTRとDEFか・・・仕方ない・・・付呪するか)


アレンはクローディアにいったん着替えてもらい、ダガー2本と服に付呪をする。
魔力も2週間の小遣い稼ぎで200まで増えた。が、今は時間がない。


(STR強化LV1を両方のダガーにつけて・・・服にはDEF強化LV1をつけてやれば・・・ないよりはマシだろう。)


「なに!?アレン!あんた付呪でき「しっ!!知られたくないんだから静かにするんだ」


クローディアはそれ以上何も言わずに、笑顔で服と鞘に入ったダガーを装備する。


(くっそかわいいな!!さすが俺の嫁!!)


「なによ・・・気持ち悪い目で見ないでくれる?」


アレンは気にせずに歩き出す。


「さて、冒険者ギルドに向かうか!雑貨屋キャンプするのに必要なものは全部買ったし、いざ!研修へ!!」


「アレン?なんか目が死んでない?」


アレンは光を失った眼をして、冒険者ギルドに入る。すると・・・この前に来た時とちがい、一斉に視線がこっちに向くのを感じた。正確にはクローディアの方か。


「アレン・・・。」


上目づかいでこっちをみるクローディアをそっと、周囲の視線から守るように後ろに隠すアレン。


「気にしたら負けだクローディア。獣人が珍しいからって「おい、お前!!」


アレンは可愛いクローディアとの会話を邪魔されたので一気に不機嫌になる。


「なんだ貴様ァ!!俺とクロの会話の邪魔しやがって!!死にてぇのかクソガキ!!」


あろうことか、いかつい男にキれてしまった。


「死にてぇのかはこっちのセリフだ!このクソガキがァ!!こんな小さい子供を冒険者ギルドに連れ込むんじゃねぇよ!!二児の父親なめんな!!」


ーバキッ


思いっきり殴られるアレン。


「アレン!!??」


いきなりのアレンの豹変といきなりの喧嘩の勃発に戸惑うクローディア。
だが、彼女もいっぱしの冒険者になる女だ。ここはひどい誤解をとかなければならない、と心に決めた。


そして、大きく息を吸い込み。


「私は17歳だぁああああああああああああああ!!」


響くクローディアの声。


・・・手を止めるアレンといかつい男。


『え?』


アレン、いかつい男、受付嬢、観衆を含めた全員が同じ言葉を同じタイミングで言った。




————―




「はい、年齢確認が完了しました・・・本当に冒険者になるの?あなた・・・」


「そうよ!このアレンと一緒に冒険者をやることにしたのよ!!」


「はぁ・・・せいぜい死なないようにしてねお嬢さん・・・。アレンさん・・・でしたか?ずいぶん特殊な性癖をお持ちのようですが、衛兵さんはいりますか?」


「いりません勘弁してください。というか俺は被害者です。」


あのあといかつい男・・・ヨーグという人らしい。に誤り倒したアレンはなぜかギルドの皆さんにとてつもない誤解をされていた。


「クローディアさん?研修中にいやらしいこととかやなことされたら絶対にあなたたちの試験監督のあのヨーグさんに言うのよ?わかった?」


「え、えぇ・・・わかったわ・・・私17歳なんだけど・・・」


「今が一番気を付けないといけないわ!あのアレンっていう人は見た目いいけど最低な男よっ!」


(あの・・・受付嬢さん・・・聞こえてますよ・・・とほほ)


悲しくなるアレン。
すると意外なことに、否定してくれたのはクローディアだった。


「アレンは最低な男なんかじゃないわよ?いきなり結婚申し込まれたり、腰をすっごい勢いでなでなでされたりしたけど、嫌じゃなかったし。あと、ダガーと服も買ってk「衛兵さーん!!ここに犯罪者がいますー!!」


訂正。とどめを刺した。


「ちょっとまってくれぇぇぇええええええええええええ!!??」


そのあと衛兵たちに厳重注意されたアレンは涙目になった。


「俺・・・もう死にたい・・・」


「あら?どうして?いいじゃない。こんな経験もいいものよ?」


(お前はみんなにちやほやされていいなぁっ!!くそっ!!俺もそんな風になれるように頑張るんだからなっ!!)


————


冒険者ギルドの内部の一室に通された俺たち二人。
目の前に先ほどのいかつい男、ヨーグが立っている。


そう。二人だけなのだ。


(とてつもなく嫌な予感がする。)


「さぁて、今回の研修の予定をはっぴょ「ヨーグさん!ちょっっと待ってください!」


「なんだクソガキ?俺の話をさえぎるんじゃねぇ。」


アレンは疑問を口にする。一番重要なその疑問を。


「研修って確か20名の志願者と担当冒険者10名でやるんじゃなかったんですか!?」


「あぁ?・・・あぁそういうことか。お前、よそモノだな?」


「え?どういうことなんです?クソオヤジ・・・いや、ヨーグさん」


ギロリと睨まれたので萎縮してしまうアレン。気が弱い男である。


「大体志願者20名っていうそっちの研修はもうとっくに締め切ってんだよ。」


『は?』


二人そろって疑問の声を上げる。


「だから・・・今回はあの受付の嬢ちゃんから俺が研修代行の指名依頼受けたんだよ。クローディアちゃんはきっと困ってるし、アレンっていうやつは危ないクソガキだと聞いてな。」


「・・・。クローディア。かえろ「なんでも「わかった。」


逃げようとしたアレンは失敗した。


「締め切ったのは分かったけど。なんでだ?ヨーグさん。理由を教えてくれ。」


「今は冒険者になりてぇガキが多いんだよ。テメェみてぇにくいっぱぐれて犯罪に手を染めそうな奴も受け入れてくれるんだもんなぁ、今の冒険者ギルドは・・・どんだけ人手不足なんだっての。」


「理由はわかったよ。で?今回の研修はなにする「今から話すんだろ!?黙ってろクソガキ!」


「はい。すみません。」


ヨーグの説明はこのようなものだった。


この町の近くの森でまずは【他者分析】能力を取得し、野草の見極め訓練。
そのあとは野営訓練。これで2日つぶれる。
3~5日目はクソオヤジ・・・改めヨーグとの対人訓練。一撃でも入れられれば上等とか。
6日目はゴブリン討伐訓練。クローディアと共同で倒すとのこと。ヨーグは見ているだけ
それに合格したあと、冒険者ギルドの心構えや規約などを覚えさせてくれるらしい。


「あれ?意外と簡単「なめてかかってるとゴブリンじゃなくて俺がテメェをぶっ殺すぞクソガキ」


「ごめんなさい」


「ねぇ、ヨーグさん?私は野営するときどこで寝るの?」


「お前らはパーティーなんだろ?インベントリも使えるそこのクソガキに決まってるじゃねぇか・・・まったくもって不本意だがな!!」


本当に不服そうに話すヨーグ。
「うぇ!?///」とよくわからない反応をする黒猫・・・いやクローディア。


(平常心平常心・・・ハァハァ///クローディアたんと一緒!)


「言っておくがな、クソガキ。クローディアちゃんに手を出したら問答無用で俺がテメェをぶっ殺すからな。」












(なんか俺どっちにしても殺される気がする・・・)












そう思う変態アレン




次の日の受付嬢たちの話題は変態アレンとかわいい猫少女の話題で持ちきりだった。
もちろん、その話を聞いた子持ちの冒険者たちはそろってアレンという名の男を探し始めるのだが・・・それはまた、別のお話。

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