ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第2話 遭遇

(さてと。まずは状況の把握が先だな。メニューのマップを使うには【周辺探索】のスキルが必要らしい。スキル取得欄を見てみるか。)


 アレンは【メニュー】のスキル強化・取得を開く。するといくつかの項目が表示される。


取得可能スキル
  ノーマルスキル
   【周辺探索】LV- 必要SP15
   【剣術】LV1 必要SP2
   【体術】LV1 必要SP2
   【刻印付呪】Lv- 必要SP--
  パッシブスキル
   【動体視力強化】 必要SP3
   【バランス強化】 必要SP3
   【敏捷強化】 必要SP3
   【器用強化】 必要SP3
  アクティブスキル
   【大跳躍】必要SP5
   【×××化】必要SP--


強化可能スキル
  ノーマルスキル なし
  パッシブスキル なし
  アクティブスキル
   【日常風景】Lv2 必要SP5


(なんかやばそうなのがあるな。【刻印付呪】? なんか呪われそうだぞ? それに【×××化】って、あきらかにやばそうなんだが。いやでも役に立つスキルかもしれない。どちらもスキルポイントは消費しなさそうだし、バグスキルってチートっぽくないか? ……取得するだけなら大丈夫だよな?)


 アレンは本来、好奇心がすごく強い分類の人間だ。
 目の前に洞窟があったら、とりあえず中に入ってみよう的なタイプなのだ。


(説明を見てみよう。)


 項目に指先で触れてみる。すると、別枠でこう表示された。


 【刻印付呪】Lv- 刻印付呪がつかえるようになります。


 【×××化】Lv- ××××。


(だめだ、わけがわからないな。よし、まず場所の確認と、今何ができるか、何があるかの確認が先か……)


 インベントリの中身を期待しながら確認したが、もちろん空だった。
 かなり落胆していた。


(はぁ……。とりあえずスキルを取ってしまおう。【剣術】Lv1はもちろんとして、【体術】Lv1、そして【周辺探索】。あとヤバそうなスキルも取るだけなら大丈夫そうだからとってしまおうか)


 実用性重視なら、その選択が普通だろうな、とか彼は思う。


 アレンがスキル取得の動作をすると、ログが更新された。


ー【周辺探索】Lv-を取得しました 残SP15ー
ー【周辺探索】を確認。固有スキル【メニュー】の「MAP」を開放しました。-
ー【剣術】Lv1を取得しました。-
ー【体術】Lv1を取得しました。ー


(ここまでは予想通りだな。お。【周辺探索】って……これ、効果微妙だな。自分の周囲3メートル位の場所がMAPに書き込まれるだけか……。あーこりゃあ失敗したな。まぁ、やってしまったものはしょうがない。問題は次だ)


ー【刻印付呪】Lv-を取得しましたー


取得ログをアレンが見た瞬間、体に異変が起きた。


「ぐぁああああああああああああああ!! いてぇぇえぇぇええええええ!!!!!」


(なんだ……!?これ……!?あたまに……文字が……流れ込んでくるっ……!)


 アレンの頭に解読不明な文字が流れ込む。
 それから数秒後……文字を認識したとき、痛みは嘘のように引いていった。




(これは……魔術知識……か?)




 頭の知識に集中して意識を向けると、翻訳機にかけたようにはっきりした意味を持つ文字となって認識できるようになった。
 知識の内容は、「実体」のある物質であれば、あらゆる属性や、物質強化などのスキルを付加できるという強力なものだった。しかもアレンの頭の中には身体強化の魔術文字や地、水、火、風、光、闇の魔術文字、ありとあらゆる文字が「知識」として頭に叩き込まれていた。だが、しかし。


(チートっぽいが……掘り込むための魔力が圧倒的にたりないな……)


 そう、【魔力値増加】Lv1で魔力が10あっても、たったの10では何もできないのだ。
 微弱な属性を付加するだけでも魔力を100は使用するようだし、効果の高いものでは文字を書いた瞬間にその物質が壊れ、掘り込んだ者の命までも魔術文字に吸い取られてしまう場合もあるようだと「知識」から読み取れた。


(さて、状況確認は終了。【刻印魔術】は効果はすごくいいが、問題が多すぎるな……。)


 おもむろに立ち上がるアレン。周囲に目を配り、誰もいないことを確認。
 なにせ初めての異世界だ。いままでの常識が全く通じない場合もあるだろう。十分に警戒しながら、その辺に落ちていた木を杖代わりにして、アレンは森の中の探索を始めた。


 気分は、なんとかリングの世界に迷い込んだイケメン主人公な気分だった。




—————————






 数十分ほど歩いただろうか。転生前よりも身軽に動けるようになっていることに、若干驚きながらもどんどん森を進んでいくアレン。


(お?森が終わるのか?遠くに街道っぽい道が見えるな)


 やっと森が終わる。と安堵したその時。


「グギャアアアア!!」


 とおぞましい叫び声が突然真後ろから上がる。


「っ!」


 条件反射的に「ヤバイ」ものだと認識したアレンは前方に思いっきりダイブする。


「うぉわっ!!?」


 アレンは自分で自分が理解できなかった。とっさに、思いっきりダイブしたら5mほどを一回の跳躍でとんだのだ!


(軽業の恩恵か!? というかそんなことを考えている場合じゃない! こういう異世界転生もののテンプレとして、どう考えても後ろにいるのは魔物!)


 アレンは後ろを素早く確認し、「ソレ」をみた。
 黒く薄汚れた緑色の肌。血走った目に醜悪な顔。ずんぐり体型だが、腕と足が短いがとても太く、筋力が相当ありそうな……ファンタジー顔負けのリアルな「ゴブリン」がそこにいた。


「うぉおおおおおあああああああ!!」


 一気に恐怖がアレンの全身を駆け抜けた。
 ゲームで見る仮想の魔物と、実際に出くわした魔物とでは迫力が全く違う上に、そいつのにおいや狂ったような殺気がリアルに伝わってくる。


 そしてアレンは、遠目に見える街道に一目散に逃げ出した!!


(あんなのとまともにやりあえるかよっ! 逃げるが勝ちだ!)


 必死に足を動かし、木々の間をうまくすり抜けながらアレンは走る。
 突然、右からゴブリンの群れが現れる!


『グギャアアアアア!』


 アレンはさっきのゴブリンよりも野太く、大きい叫び声を聞き、戦慄した。
 なぜか内容を理解したのだ。
 久しぶりの獲物だ、必ず殺せ。と


「ひぃいぃいいい! 助けてえええええええええ!!」


 全力で駆け抜けるアレン。そのスピードはゴブリンを余裕で引き離せる速度だった。
 ゴブリンという魔物は、力は強いが、足は遅く、知性も低い生き物なのだ。
 そしてその場で見かけた獲物は、群れで囲い込むことなどせず、単独でそのまま襲いかかる生き物だ。


 しかし必死に逃げ惑うアレンは、後ろを振り返る余裕なんてない。
 森を抜け、広大な草原に勢いよく出る。
 照りつける太陽がまぶしい。
 広い草原の向こうには大都市といった様相の外壁と門が小さく見えた。
 その遠目に見える町へ一本に伸びている街道をひたすら走る、しばらく走って、ゴブリンが追いかけてこないことを確認。
 アレンは鼓動が激しくなった心臓を休めるため、ゆっくりとその町に向けて歩みをすすめていった。


「なんで俺……こんなにツいてないんだ?」


アレンのむなしい独り言が、草原に響き渡った……気がした。

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