生まれながらにして凶運の持ち主の俺はファンタジー異世界への転生ボーナスがガチャだった時の絶望感を忘れない。
聖龍召喚
「まぶしぃっ!」
「もう…朝…なのかや…」
カイリとシオンは下水道を出て、外の空気を浴びていた。
目に飛び込んできた太陽の光。
さわやかな空気。
とても動乱のさなかとは思えないほどの穏やかさだ。
だが、二人にはやるべきことがある。
やらなければならないことが、ある。
「シオン。父親と母親がどこに居るのかわかるか?」
「…ちょっと待ってくりゃれ…。あちらに城の塔があるから…」
シオンは周りを見渡す。街と城の位置を把握し、現在位置をシオンは割り出した。
結論から言うと…かなり遠くまで二人は来ていた。
帝都の下水道はかなり長かったようだ。
「…で、現在地が分かったのはいいが…問題は二人の居どころだな。シオン…俺は…今から君に酷なことを言うぞ?」
カイリが申し訳なさそうにシオンの方を見つめると、シオンは分かっている、と言わんばかりに言葉を紡ぐ。
「カイリは優しいんじゃな…。大丈夫。父上と母上が死んだその情景の場所は…今でもしっかり脳裏に焼き付いておる。それに、ああならないように、今わっちらは動いておるんじゃ…。時間は残り少ない。急いでいかないと…間に合わなくなるかもしれぬ」
シオンは強く自分を持って言葉を紡いだ。
カイリはそれを感じ取り、シオンの頭を優しく撫でた。
「ひゃあっ!?いきなり何を…!?」
「ああ、悪い悪い…あんまりにも気を張り詰めてたみたいだから…さ。もう少し肩の力を抜いて、冷静になるんだ…」
「ん…わかっておる…。でも…な」
シオンの暗い顔を見て、カイリは直感が働いた。
「…そんなに遠い場所なのか?」
「そうじゃな…わっちらがあの城で襲われたのが昨日の夕刻。で、父上と母上はその少し前に襲われ、転移魔法陣で逃げた…それはもう使えんが、敵の魔法使いが陣に残っている魔力の残滓でどこに行ったかを突き止め、ワイバーンで移動しておる…父上と母上の居る、帝都のはずれに行くまで……あと、数刻ほどしか時間は残されておらん…」
「…俺たちが走って行って間に合うか…?」
カイリはシオンに恐る恐る尋ねた。
答えは…シオンの暗い顔が物語っている。
「足の速い主様がここから全力で走って行っても…間に合うか、間に合わないかの瀬戸際じゃろうな…わっちがついていくとなると、絶対に間に合わんじゃろう…」
言いながら、シオンの体は震えていた。
先ほど、下水道の中で固く誓ったというのに、助けられずに終わるのか、と。
それはカイリも同じだった。
「…そんな…何か手は、なにかないのかっ…?」
カイリは必死で頭を巡らせる。
絶対に間に合わないこの状況。
カイリだけが走って行っても、間に合うか間に合わないかのところ。しかも、こちらに居るのはカイリだけではない。ひ弱な少女一人を連れている。
絶対に、間に合う訳がない。
そこまで思考して、カイリは…くじけそうになる。
(こんなところであきらめるのか?何も助けられないまま、なにもできないまま、この状況を静観しろってのか…?いまから走れば…いや、ダメだ。馬もないし…なにしろシオンをこのままここには置いていけるはずがない……!っ…くそぉ…ここまで…なのか…?あんなに固く誓ったのに?あれほど運命を覆したいと願ったのに?…まて……あれが、使えれば…?)
そこで、彼女は思いついた。
一か八か。本当の賭けを、彼女は思いついたのだ。
瞬間、カイリの眼の色が変わる。
「このままで…終われる訳が…ねぇだろうがっ…!!」
「主様…?」
途方に暮れたシオンが隣で何かしているカイリを見やった。
すると、カイリはなにか黒い板状のものを操作していて、途端にシオンの方にそれを渡してきた。
「主様…、これは…?」
「シオン。さっきステータスを見せてもらったけど、君はすごい幸運の持ち主だ…。この方法なら、確実に両親を助けに行けるかもしれない…だが、これからやることは絶対に秘密にしてくれ。いいね?」
「主様…!手が、あるんじゃな!?」
「ああ…すべては君次第だ…」
言いながらカイリは黒い板…携帯をシオンに渡す。
シオンがおそるおそる携帯に触れると、シオンのログが更新された。
ログ
―【神装宝庫】起動確認―
―一時的にアクティブスキル【無限収納】を付与―
―限定的使用者『レティシオン・アーレングラディ・セントラル・クォレツィア』を確認―
―『天津神 海莉』との関係を確認。本人照合。成功―
―ようこそ最高神の【神装宝庫】へ。君は何を望む?―
「な、なんじゃ…?これは…」
戸惑うシオンにカイリは優しく語る。
「これは、俺の友人である最高神アレンがくれたものだ…限定的にシオンにも使えるようにしてもらったんだ。さぁ、それを使って、この状況を打破する力を引き当てるんだ…!
「ぬ、主様!?頭がいかれて…」
「いいから、早くその表示を押すんだっ」
カイリはシオンの白魚のような手を取り、右人差し指を、―初回限定、無料で【ガチャる】―と書いてある表示に触れさせる。
すると…眩い蒼の螺旋が画面から飛び出した。
「な、なんじゃこれはっ!?」
その効果を確認するとともにカイリは素早くシオンから離れる。
螺旋がシオンの体を一通り回った後、シオンの目の前にカイリの時と同じように紋章が現れた。
紋章はシオンに語りかけた。
力が、欲しいか?と。
頭に直接響く声に、シオンは戸惑うが、それは同時にカイリの言葉が嘘ではなかったという証明で…いろいろな思いが頭の中をよぎるが、今は気にしている場合ではない。
両親を、助けるのだ。
カイリという頼もしいパートナーと共に。
シオンは決意のこもった声で高らかに叫ぶ。
「わっちは、欲しい!すべてを助けられる力がっ!」
『承知した』
シオンの頭の中で声が再び反響する。
それと同時に、目の前の紋章がはじけ、黄金の輝きとなってシオンの体の中へ入り込んだ。
…ログが、更新される。
―アクティブスキル【聖龍召喚】を下賜されました―
―以下の聖龍を下賜されました―
名前:ヴォルフハイネ・グングーニル
ランク:神竜
消費魔力:0
使用制限:3日に1回
「聖龍…召喚!?ヴォルフハイネ・グングーニルって最高神様の神話の龍じゃないかやっ!?」
驚いたシオンの声に、カイリは思う。
単発一回で目当てのものを引き当てるなんて、やっぱり世の中間違ってるな、と。
「もう…朝…なのかや…」
カイリとシオンは下水道を出て、外の空気を浴びていた。
目に飛び込んできた太陽の光。
さわやかな空気。
とても動乱のさなかとは思えないほどの穏やかさだ。
だが、二人にはやるべきことがある。
やらなければならないことが、ある。
「シオン。父親と母親がどこに居るのかわかるか?」
「…ちょっと待ってくりゃれ…。あちらに城の塔があるから…」
シオンは周りを見渡す。街と城の位置を把握し、現在位置をシオンは割り出した。
結論から言うと…かなり遠くまで二人は来ていた。
帝都の下水道はかなり長かったようだ。
「…で、現在地が分かったのはいいが…問題は二人の居どころだな。シオン…俺は…今から君に酷なことを言うぞ?」
カイリが申し訳なさそうにシオンの方を見つめると、シオンは分かっている、と言わんばかりに言葉を紡ぐ。
「カイリは優しいんじゃな…。大丈夫。父上と母上が死んだその情景の場所は…今でもしっかり脳裏に焼き付いておる。それに、ああならないように、今わっちらは動いておるんじゃ…。時間は残り少ない。急いでいかないと…間に合わなくなるかもしれぬ」
シオンは強く自分を持って言葉を紡いだ。
カイリはそれを感じ取り、シオンの頭を優しく撫でた。
「ひゃあっ!?いきなり何を…!?」
「ああ、悪い悪い…あんまりにも気を張り詰めてたみたいだから…さ。もう少し肩の力を抜いて、冷静になるんだ…」
「ん…わかっておる…。でも…な」
シオンの暗い顔を見て、カイリは直感が働いた。
「…そんなに遠い場所なのか?」
「そうじゃな…わっちらがあの城で襲われたのが昨日の夕刻。で、父上と母上はその少し前に襲われ、転移魔法陣で逃げた…それはもう使えんが、敵の魔法使いが陣に残っている魔力の残滓でどこに行ったかを突き止め、ワイバーンで移動しておる…父上と母上の居る、帝都のはずれに行くまで……あと、数刻ほどしか時間は残されておらん…」
「…俺たちが走って行って間に合うか…?」
カイリはシオンに恐る恐る尋ねた。
答えは…シオンの暗い顔が物語っている。
「足の速い主様がここから全力で走って行っても…間に合うか、間に合わないかの瀬戸際じゃろうな…わっちがついていくとなると、絶対に間に合わんじゃろう…」
言いながら、シオンの体は震えていた。
先ほど、下水道の中で固く誓ったというのに、助けられずに終わるのか、と。
それはカイリも同じだった。
「…そんな…何か手は、なにかないのかっ…?」
カイリは必死で頭を巡らせる。
絶対に間に合わないこの状況。
カイリだけが走って行っても、間に合うか間に合わないかのところ。しかも、こちらに居るのはカイリだけではない。ひ弱な少女一人を連れている。
絶対に、間に合う訳がない。
そこまで思考して、カイリは…くじけそうになる。
(こんなところであきらめるのか?何も助けられないまま、なにもできないまま、この状況を静観しろってのか…?いまから走れば…いや、ダメだ。馬もないし…なにしろシオンをこのままここには置いていけるはずがない……!っ…くそぉ…ここまで…なのか…?あんなに固く誓ったのに?あれほど運命を覆したいと願ったのに?…まて……あれが、使えれば…?)
そこで、彼女は思いついた。
一か八か。本当の賭けを、彼女は思いついたのだ。
瞬間、カイリの眼の色が変わる。
「このままで…終われる訳が…ねぇだろうがっ…!!」
「主様…?」
途方に暮れたシオンが隣で何かしているカイリを見やった。
すると、カイリはなにか黒い板状のものを操作していて、途端にシオンの方にそれを渡してきた。
「主様…、これは…?」
「シオン。さっきステータスを見せてもらったけど、君はすごい幸運の持ち主だ…。この方法なら、確実に両親を助けに行けるかもしれない…だが、これからやることは絶対に秘密にしてくれ。いいね?」
「主様…!手が、あるんじゃな!?」
「ああ…すべては君次第だ…」
言いながらカイリは黒い板…携帯をシオンに渡す。
シオンがおそるおそる携帯に触れると、シオンのログが更新された。
ログ
―【神装宝庫】起動確認―
―一時的にアクティブスキル【無限収納】を付与―
―限定的使用者『レティシオン・アーレングラディ・セントラル・クォレツィア』を確認―
―『天津神 海莉』との関係を確認。本人照合。成功―
―ようこそ最高神の【神装宝庫】へ。君は何を望む?―
「な、なんじゃ…?これは…」
戸惑うシオンにカイリは優しく語る。
「これは、俺の友人である最高神アレンがくれたものだ…限定的にシオンにも使えるようにしてもらったんだ。さぁ、それを使って、この状況を打破する力を引き当てるんだ…!
「ぬ、主様!?頭がいかれて…」
「いいから、早くその表示を押すんだっ」
カイリはシオンの白魚のような手を取り、右人差し指を、―初回限定、無料で【ガチャる】―と書いてある表示に触れさせる。
すると…眩い蒼の螺旋が画面から飛び出した。
「な、なんじゃこれはっ!?」
その効果を確認するとともにカイリは素早くシオンから離れる。
螺旋がシオンの体を一通り回った後、シオンの目の前にカイリの時と同じように紋章が現れた。
紋章はシオンに語りかけた。
力が、欲しいか?と。
頭に直接響く声に、シオンは戸惑うが、それは同時にカイリの言葉が嘘ではなかったという証明で…いろいろな思いが頭の中をよぎるが、今は気にしている場合ではない。
両親を、助けるのだ。
カイリという頼もしいパートナーと共に。
シオンは決意のこもった声で高らかに叫ぶ。
「わっちは、欲しい!すべてを助けられる力がっ!」
『承知した』
シオンの頭の中で声が再び反響する。
それと同時に、目の前の紋章がはじけ、黄金の輝きとなってシオンの体の中へ入り込んだ。
…ログが、更新される。
―アクティブスキル【聖龍召喚】を下賜されました―
―以下の聖龍を下賜されました―
名前:ヴォルフハイネ・グングーニル
ランク:神竜
消費魔力:0
使用制限:3日に1回
「聖龍…召喚!?ヴォルフハイネ・グングーニルって最高神様の神話の龍じゃないかやっ!?」
驚いたシオンの声に、カイリは思う。
単発一回で目当てのものを引き当てるなんて、やっぱり世の中間違ってるな、と。
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