生きる意味のなかにいたはずの君が消えた日。

RAI

砂中 美海 ①


私があらた達と出会ったのはいつだっただろうか。

近所きんじょに住んでいたつむぐ必然的ひつぜんてきによく一緒にいた。

人見知ひとみしりで大人しかったつむぐは人と関わることをせず、いつも私の後ろにかくれている子だった。

その頃から私はこわいもの知らずであまり感情を出さなかった。

別に笑いたくないとか、笑えないとかそんなんじゃない。

ただ、面白くなかった。

笑えるような楽しい出来事できごとがなかった。

男っていう生き物は自分より下の人間を見つけていじめたがる。

自分を強くみせたいんだろう。

だから、弱虫でいつも私の後ろに隠れているいるつむぐのことを目につけていじめてくるやつがいた。

でも、そんなやつらに何か言われてもなんとも思わなかったし、たたかれた時でも叩き返した。


それがたしか保育園ほいくえんのこと。

仲良なかよし3人ぐみ
そう言われている子達がいるとしったのは幼稚園ようちえんに入ってすぐのこと。

                                   




弱虫よわむしっ」

「いっつも女に守ってもらってずかしくないのかよ。」


「ちょっと、何してるの。」

たしかあれは、幼稚園ようちえんでも変わらずからかわれていたつむぐを助けたときだった。

「大丈夫?つむぐ

たたかれたらしく顔が少しあかくなっていた。

「うみちゃん、ごめんね。」

少し涙目なみだめになって謝ってきた。
私はつむぐの頭をでてあげた。

「またつむぐのことまもるのかよ、」

パシッ。

「うみちゃん!」

つむぐをなでていると後ろからたたかれた。

私はそのままたって、たたいたやつをにらんだ。

「な、なんだよ。お前が悪いんだぞ。お前がこいつの味方するから。」

少し後ろに下がったが向こうもにらんできた。

「おい。女の子たたくのはだめだろ。」

「せんせーい。たいきくんが女の子たたきましたー。」

教室のドアのところで見たことのある男の子と女の子がいて廊下に向かってさけんでいた。

「や、やば。にげるぞ。」

「あ、おい。たいき!」

たたいてきた男の子…たいきくんはすぐににげようとしていたがもう1人の男の子につかまっていた。

「あの…ありがと。」

いつもは言いなれない言葉に少しまってしまった。

「いいんだよ。」

フフッと可愛らしい笑顔で笑ったその女の子は近づいてきて

「私、おざき あらる。よろしくね。」

とまたニコッとわらって自己紹介じこしょうかいをした。

差し出された手をつかもうとすると、たいきくん…?と男の子2人がこっちにきた。

「ほら、たいき、ちゃんとあやまれ。」

「なんで、俺が…」

すごく嫌そうな顔をしているたいきくんにクールそうな男の子がにらむ。

「わ、わかったよ。」

威圧いあつに負け、こっちをむく。

「ご、ごめんなさい。」

全然気持ちのこもらない謝罪しゃざいをされた。

「もういいから…」

そういうと、すぐたいきくんたちはでていった。

それよりも、ドアから入ってきた2人の男の子と女の子には見覚えがあった。

「仲良し3人組…。」

言おうとしたことをつむぐがいった。

「それ勝手かってに周りがつけたやつな。」

ハハハ…と軽く笑う。

「おなまえは?」

あらる…ちゃんがきいてくる。

「さなか…みうな…。」

「みうなちゃんか。よろしく」

たぶん友達っていうのはこんなふうに作っていくんだろうな。そうおもった。

「ぼくは…おおうち つむぐ。」

自分からいいに行くつむぐはめずらしかった。

「俺はあらた、で、こっちがかいる」

「お前がいうなよ」

この3人の世界に自動的じどうてきに引き込まれていく感じがした。

それが私達の出会い。

この3人はいつもかわらない。

海流かいるはクールなのにたまにバカで、明瑠あらるはいつも明るくて笑顔が可愛くていつも周りを引っ張っていく、あらたは元気で誰も思いつかないことを思いついて行動力こうどうりょくのあるバカなリーダーって感じで、昔から何も変わらない。


それから私たちはよくつるむようになった。

なんであの3人の中にうちら2人が入ってるんだって迷惑めいわくがるやつもいたらしいけどそんなのは気にしなかった。

3人といるとつむぐはあまりいじめられなくなった。

私はよく明瑠あらるといるようになり、明瑠あらるたちのおかげで今まで絶対やらなかったこともいろいろやるようになった。


私達が小学校しょうがっこうにあがって少ししてから3人が最近知り合ったという、かさまつ ちさきという女の子をつれてきた。

とても大人しく天然てんねんでいつもはしで微笑んでいるような子だった。


それから、6人でいるようになった。

まだ仲良し3人組の印象いんしょうは強かったが、「あの6人仲いいよな。」と私たちも入ったグループとして周りから見られていた。

                                  




今までに海流かいるが大泣きした所を見たことはなかった。

あらたのお葬式そうしきとかでちょっと泣いているとこは見たけどこんな海流かいるは初めて見た。

明瑠あらるうでの中で何もかもを忘れて、ずっと我慢がまんしていたものをき出すような。


しばらく時間が進んでいくのを忘れていた私はふっと腕時計うでどけいを見た。

時間は昼を過ぎていた。

「今日は…解散かいさんにしようか。」

海流かいるを抱きながら明瑠あらるがいった。

私の心を読んだかのようにいいタイミングだった。

「うん…」

そうつぶやいて、千崎ちさきがでていって、つむぐも「お先に」といって出ていった。

美海みうなも帰っていいんだよ?」

明瑠あらるがこっちをみて微笑んだ。

「うん…、私ももう少しここにいていいかな…。」

椅子いすの上で小さく体操座たいそうすわりをして、顔をうでかくす。

「なんか落ち着かなくて…」

「うん。いいよ」

相変わらず可愛かわいらしい笑顔だ。
この2人を見ているとあらたを思い出す。

「なぁ、美海みうな…。」

だいぶ落ち着きを取り戻したのか、海流かいるが顔をあげた。

「さっきさ、俺が…あらた事故死じこしじゃないかもって言った時過剰かじょうに反応したよな?」

心臓しんぞうの音がすごく聞こえる。今までにないくらい。

「お前なんかしってるんじゃないのか?」

体が動かない。顔が上げられない。

「いや…知らないならいいし、いいたくないなら無理にいわなくてもいいんだけど…」

海流かいる達が気を使ってることがわかる。

しばらく沈黙ちんもくが続く。

「私…」

何を話したらいいのか、どう話したらいいのか、話して嫌われないか。

いろいろ考えてしまって言葉がでなかった。


「私ね…あらた自殺願望じさつがんぼうがあるってしってたの。」


いろいろ考えてやっとのことで言葉にできた。

でも、明瑠あらるたちの顔をみることは出来なかった。


明瑠あらるたちはどんな顔をしているだろう。


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