神速の騎士 ~駆け抜ける異世界浪漫譚~

休月庵

烈火の魔女

大和 光は5階層にたどり着いた。




「もう5階層か。早いな。」


「そりゃあね。攻略され尽くしてるもの。地図だってあるし。」


「なんだかダンジョン攻略っていうよりツアーみたいだな。」


「今回は本当にそうよ。光にダンジョンに慣れてもらうのが目的だからね。魔物が少なそうで、階下まで最短の道を選んでるわ。」


「本当に先生様様だな。初心者じゃそうはいかないだろう?」


「そうね。とはいえ、光が魔物を倒す力を十分持っているからそうしているのよ。光なら、15階層でも十分やっていけると思うからこそどんどん先へ進むの。そこらの初心者なら、こんなにハイペースで進ませないわ。」


「おほめに預かり光栄です、先生。」


「うむ、苦しゅうない。」


「ところで、5階層と言えばあれだ。ダイヤウルフが大量発生してるんじゃないか?」


「そうね。でも、先に来てる冒険者に大体狩られてるだろうから、そんなに残ってないと思うわよ。」


「そうなのか。大儲けできると思ったのに、残念だな。そういえば、魔物はどうやって増えるんだ?普通に繁殖してるのか?」


「さあ、どうかしらね。少なくとも魔物の子供を見たことはないわね。気になるなら調べてみたら?もしわかったら、きっと有名になれるわよ?」


「時間があったらな。」




軽口を叩きながら進む二人。
初めてのダンジョン攻略は、順調に進んでいた。




「ちょっと寄り道するわよ。」




そう言ってロゼリアが案内した先は、ちょっとした広場だ。
光とロゼリアは今、広場を上から見下ろせるベストスポットにいる。
そして眼科にはダイアウルフが6匹、くつろいでいた。




「ビンゴね。ここは私が見つけた穴場なの。」


「いい場所を知ってるな。じゃあ、早速狩ってきますか。」




降りて倒そうとする光に、ロゼリアが待ったをかける。




「待って。ここは私にやらせて。狼には恨みがあるし、それにそろそろ先生の力を見せてあげないとね。」




ロゼリアはそう言って、光の前に出た。
そしておもむろに手を前に出して言った。




「炎光」




 ――ごおっ




そのとたん、眼科が炎で埋まった。
燃え盛る炎が地を這い回り、熱が光の肌をやく。


途端に明るくなった視界に目を瞬かせていると、炎が何事もなかったかのように消えた。




そして眼科にはダイアウルフの姿はなく、とけた地面が残っているだけだった。




「どう?先生もなかなかやるでしょ?」




ロゼリアがフフンと笑顔で光を見て言う。


光はロゼリアを見て、眼科を見て、そしてまたロゼリアを見ていった。




「そうですね。」




森に薬草を取りに行ったとき、本当に光の助けは必要だったんだろうか。


真顔でそう思う光をよそめに、ロゼリアは輝かしいほどの笑顔だった。

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