ご落胤王子は異世界を楽しむと決めた!WEB版
命名
「びっくりした…」
羽根の先についている鍵爪でしっかりと桃にしがみ付き、コウモリはくるっと首を巡らせてリュシアンを振り向いた。青いビーズみたいな瞳が、くるくるっと瞬きするように何かを伺っている。
「ああ、食べてもいい?ってことかな」
リュシアンが「いいよ」と頷くと、無表情なはずのコウモリの顔に満面の笑顔が浮かんだ気がした。さっそく桃に向き直り、小さな口を精一杯開いてかぷっとかぶりつく。
血のように吸うのかと思ったら、結構ふつうに啄んで食べている。よっぽど美味しいのか、ほとんど頭を桃の中に突っ込んで食べ進んでいった。
「なんだ、主食は血ってわけじゃないのか」
「少なくとも食事が吸血のみってわけじゃないみたいだね」
リュシアンは心の底から安心した。おそらく魔力供給には吸血が必至なんだろうけど、これで食事で悩まされることはなさそうだ。あとは桃以外も食べられるかどうかを試していけばいいか。
そういえば元の世界のコウモリも、フルーツを食べる種類がいたような気がする。そうか、なんとなく見た目でフルーツ=コウモリと繋がらなかったよ。
「なるほど、桃かぁ…」
思案気に呟いたリュシアンの目の前に、ニーナが両手を差し出した。言いたいことがわかって、手に持っていた桃をコウモリごとそっと手渡した。必死で桃にかぶりついているコウモリを、アリスやエドガーたちも一緒になって覗き込んでいる。
「ペシュ…、ペシュってどうかな?」
むかし食べた桃を使ったケーキの名前を思い浮かべ、ふいに口からついて出た。フランス菓子のお店だったから、フランス語かな?響きも可愛いし、いいんじゃないかと思った。
他のフルーツも食べるかも知れないけど、脇目も振らず真っ先に飛び込んで来たほどだ。きっと大好きなんだろう。
「へぇ、いいんじゃない?ね、どう?ペシュ」
ニーナは桃を抱えたまま、首をかしげるようにコウモリに問いかけた。それまで一心不乱に食べていたコウモリは頭を上げて「あれ?誰」とニーナを見上げてから、慌ててリュシアンの方へ飛んで行った。
「ああん、なんで行っちゃうのー」
「うわっ…ちょ、待って」
ピチャッと、桃の果汁でベタベタになった手足を広げてリュシアンの顔に張り付いた。慌てる主人を他所に、よじよじと登っていったが、なぜかすぐにスゴスゴと慌てて降りてくる。
チョビと目が合っちゃったかな…?
「ほら、こっち」
リュシアンが手を広げると、またもやピチョッと果汁をまき散らしながら飛び移った。
「ペシュ、お前の名前はペシュだよ」
改めて命名すると、コウモリは青い瞳をくるくると光らせた。表情はわかりにくいが、どうやら気に入ったようである。前肢でもある羽根をパタパタと嬉しそうに動かしている。
か、果汁が…
「ほら、リュシアン使って」
アリスがポットのお湯でハンカチを濡らしてくれたようだ。その横には、いまだに桃を持ったままのニーナが、期待するようにリュシアンを見ている。
「ありがとう、アリス。ほらペシュ、もっと食べておいで」
リュシアンは、お礼を言ってハンカチを受け取り、ペシュをニーナの方へと移した。ちょっとこちらを気にしつつも、ペシュは再びフルーツを食べ始めた。
「そういえば、この子って人型にならないの?」
ニーナとアリスは飽きもせずペシュの食事風景に釘付けである。動物がなにか食べてる姿って、なんか可愛いよね。
「みたいだね、僕も吸血で人型になるのかと思ったけど、そうでもないみたい」
受け取ったハンカチで顔と手を拭きながら、リュシアンは改めてテーブルについた。すこし冷めてしまったお茶に口をつけて、ニーナの問いかけにちょっと考えるように口を開く。
「あの場所がどこだったかはともかく、僕の魔法陣と同じで、なにか影響を受けていたのかもしれないね。だけど成体になれば、いずれは人型に変化出来るようになると思うよ」
「そっか…、でもこの姿も可愛いよね」
「うん、可愛い。私も、従魔欲しくなっちゃった」
女の子の可愛いはよくわからない。いや、もちろんペシュは可愛いけどね。一般論として、コウモリってどちらかというと嫌われてるような印象があるんだけど。
「それで、ニーナ。さっき言いかけてたことってなに?ほら、相談がどうのって」
羽根の先についている鍵爪でしっかりと桃にしがみ付き、コウモリはくるっと首を巡らせてリュシアンを振り向いた。青いビーズみたいな瞳が、くるくるっと瞬きするように何かを伺っている。
「ああ、食べてもいい?ってことかな」
リュシアンが「いいよ」と頷くと、無表情なはずのコウモリの顔に満面の笑顔が浮かんだ気がした。さっそく桃に向き直り、小さな口を精一杯開いてかぷっとかぶりつく。
血のように吸うのかと思ったら、結構ふつうに啄んで食べている。よっぽど美味しいのか、ほとんど頭を桃の中に突っ込んで食べ進んでいった。
「なんだ、主食は血ってわけじゃないのか」
「少なくとも食事が吸血のみってわけじゃないみたいだね」
リュシアンは心の底から安心した。おそらく魔力供給には吸血が必至なんだろうけど、これで食事で悩まされることはなさそうだ。あとは桃以外も食べられるかどうかを試していけばいいか。
そういえば元の世界のコウモリも、フルーツを食べる種類がいたような気がする。そうか、なんとなく見た目でフルーツ=コウモリと繋がらなかったよ。
「なるほど、桃かぁ…」
思案気に呟いたリュシアンの目の前に、ニーナが両手を差し出した。言いたいことがわかって、手に持っていた桃をコウモリごとそっと手渡した。必死で桃にかぶりついているコウモリを、アリスやエドガーたちも一緒になって覗き込んでいる。
「ペシュ…、ペシュってどうかな?」
むかし食べた桃を使ったケーキの名前を思い浮かべ、ふいに口からついて出た。フランス菓子のお店だったから、フランス語かな?響きも可愛いし、いいんじゃないかと思った。
他のフルーツも食べるかも知れないけど、脇目も振らず真っ先に飛び込んで来たほどだ。きっと大好きなんだろう。
「へぇ、いいんじゃない?ね、どう?ペシュ」
ニーナは桃を抱えたまま、首をかしげるようにコウモリに問いかけた。それまで一心不乱に食べていたコウモリは頭を上げて「あれ?誰」とニーナを見上げてから、慌ててリュシアンの方へ飛んで行った。
「ああん、なんで行っちゃうのー」
「うわっ…ちょ、待って」
ピチャッと、桃の果汁でベタベタになった手足を広げてリュシアンの顔に張り付いた。慌てる主人を他所に、よじよじと登っていったが、なぜかすぐにスゴスゴと慌てて降りてくる。
チョビと目が合っちゃったかな…?
「ほら、こっち」
リュシアンが手を広げると、またもやピチョッと果汁をまき散らしながら飛び移った。
「ペシュ、お前の名前はペシュだよ」
改めて命名すると、コウモリは青い瞳をくるくると光らせた。表情はわかりにくいが、どうやら気に入ったようである。前肢でもある羽根をパタパタと嬉しそうに動かしている。
か、果汁が…
「ほら、リュシアン使って」
アリスがポットのお湯でハンカチを濡らしてくれたようだ。その横には、いまだに桃を持ったままのニーナが、期待するようにリュシアンを見ている。
「ありがとう、アリス。ほらペシュ、もっと食べておいで」
リュシアンは、お礼を言ってハンカチを受け取り、ペシュをニーナの方へと移した。ちょっとこちらを気にしつつも、ペシュは再びフルーツを食べ始めた。
「そういえば、この子って人型にならないの?」
ニーナとアリスは飽きもせずペシュの食事風景に釘付けである。動物がなにか食べてる姿って、なんか可愛いよね。
「みたいだね、僕も吸血で人型になるのかと思ったけど、そうでもないみたい」
受け取ったハンカチで顔と手を拭きながら、リュシアンは改めてテーブルについた。すこし冷めてしまったお茶に口をつけて、ニーナの問いかけにちょっと考えるように口を開く。
「あの場所がどこだったかはともかく、僕の魔法陣と同じで、なにか影響を受けていたのかもしれないね。だけど成体になれば、いずれは人型に変化出来るようになると思うよ」
「そっか…、でもこの姿も可愛いよね」
「うん、可愛い。私も、従魔欲しくなっちゃった」
女の子の可愛いはよくわからない。いや、もちろんペシュは可愛いけどね。一般論として、コウモリってどちらかというと嫌われてるような印象があるんだけど。
「それで、ニーナ。さっき言いかけてたことってなに?ほら、相談がどうのって」
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