ご落胤王子は異世界を楽しむと決めた!WEB版
地図の示す先
――どうしてそんなところに?!
と、全員が思ったが、あえて誰も口に出すことはなかった。異様な静けさの中、リュシアンは、とにかく引き続き筆を進めることに集中した。網の目に伸びる通路の先に、いくつもの小さな小部屋、トラップ部屋、宝箱と思しきマークがある部屋などを追加していく。
宝箱と思しき、というのは本当に宝箱が置いてあるとは限らず、そこに魔力反応があることを示している。魔道具だったり、魔装備だったりすることもあれば、ボス級モンスターがいる場合もある。
それにしても、とリュシアンは思った。
むしろ、どうやってここにたどり着いたのか、という疑問の方が先に立つ。リュシアン達は、さっきまで確かにモンフォールの大きな港町近くの街道沿いにいたはずだ。そんなところに、これほど巨大な未踏破ダンジョンがあるなどとは聞いたことがない。
もちろん未発見ということも考えられたが、仮にこの最深部まで落下してきたとしたら、いくらなんでもリュシアン達は生きてはいなかっただろう。
「コレ、なんて書いてあるんだ?」
エドガーが、地図の枠外、上隅に書かれたミミズが這ったような文字を差した。
「これだよね、呪文言語に似てはいるけど……」
ニーナ達も興味深そうにのぞき込むが、リュシアンは思案気に頭を傾けた。自分で書いたわけだが、これは頭に浮かんだものを描き写しただけなので、わかって書いたものではない。
少なくとも、リュシアンが知っている言語ではなかった。この世界の言語はほぼ統一されていて、よほどの田舎か他の大陸に行かない限り、方言こそあれ言葉は通じるのだ。また共通語以外も、流暢とは言えないながら、リュシアンはそこそこ理解している。それなのに、この言語には見覚えがない。
「無理矢理だけど、呪文として解読するなら、海……洞、洞窟? ムー……んーと、島かな? うわ、それより問題なのはこれ、九十九……数字はほぼ同じ法則だから、これ、間違いなく階層だよね」
つまり、ここは未踏破ダンジョンの九十九階層ということだ。リュシアンは、マッピングによりこの上の階層は見えない(スキルで読めない)ところまで続いているが、この先、つまり地下部分はあと二階層しかないのはわかる。よって、ここは百一階層もあるダンジョンの、とんでもないことに九十九階層ということになる。
リュシアンが何を言っているのか、即座にわかる者はいなかった。
いや、理解することを拒んでいるようにも見えた。
「え? な、なに言ってるの? ここがダンジョンで……、どこですって?」
悲鳴のような声をあげたのはニーナだ。もちろん本人だってわかっているだろう。何度、聞き返したところで答えは変わらないことも。
そう、ここは未踏破ダンジョン百階越えの、ラスボス部屋手前の階層だという現実を。
今いるところは、この階層のおよそ中央、いわゆる戦闘除外地域と言われる場所だ。どういうしくみかわからないが、ダンジョンにはなぜかそういう休憩所のような空白地帯が存在する。特定のモンスター以外は、入り込めない場所があるのだ。
ダンジョンによっては、ワンフロア全部が空白地帯というところがあり、そういう場所には商人や職人が入り込み、出稼ぎの商売をしていることもあると聞いたことがある。
「と、とりあえず、ここは安全ってことよね!」
ずっと強張った顔をしていたアリスは、こわごわと周りを見回してホッとして息をついた。とはいえ、もちろんここを出れば、モンスターはわんさかいるだろう。
考えたくもないが、状況はいっそ清々しいほどピンチなのである。
ゲームで例えるなら、始めの村を出たばかりの勇者が、ラストダンジョンのボス手前にいきなり放り出されたようなものなのだから。
と、全員が思ったが、あえて誰も口に出すことはなかった。異様な静けさの中、リュシアンは、とにかく引き続き筆を進めることに集中した。網の目に伸びる通路の先に、いくつもの小さな小部屋、トラップ部屋、宝箱と思しきマークがある部屋などを追加していく。
宝箱と思しき、というのは本当に宝箱が置いてあるとは限らず、そこに魔力反応があることを示している。魔道具だったり、魔装備だったりすることもあれば、ボス級モンスターがいる場合もある。
それにしても、とリュシアンは思った。
むしろ、どうやってここにたどり着いたのか、という疑問の方が先に立つ。リュシアン達は、さっきまで確かにモンフォールの大きな港町近くの街道沿いにいたはずだ。そんなところに、これほど巨大な未踏破ダンジョンがあるなどとは聞いたことがない。
もちろん未発見ということも考えられたが、仮にこの最深部まで落下してきたとしたら、いくらなんでもリュシアン達は生きてはいなかっただろう。
「コレ、なんて書いてあるんだ?」
エドガーが、地図の枠外、上隅に書かれたミミズが這ったような文字を差した。
「これだよね、呪文言語に似てはいるけど……」
ニーナ達も興味深そうにのぞき込むが、リュシアンは思案気に頭を傾けた。自分で書いたわけだが、これは頭に浮かんだものを描き写しただけなので、わかって書いたものではない。
少なくとも、リュシアンが知っている言語ではなかった。この世界の言語はほぼ統一されていて、よほどの田舎か他の大陸に行かない限り、方言こそあれ言葉は通じるのだ。また共通語以外も、流暢とは言えないながら、リュシアンはそこそこ理解している。それなのに、この言語には見覚えがない。
「無理矢理だけど、呪文として解読するなら、海……洞、洞窟? ムー……んーと、島かな? うわ、それより問題なのはこれ、九十九……数字はほぼ同じ法則だから、これ、間違いなく階層だよね」
つまり、ここは未踏破ダンジョンの九十九階層ということだ。リュシアンは、マッピングによりこの上の階層は見えない(スキルで読めない)ところまで続いているが、この先、つまり地下部分はあと二階層しかないのはわかる。よって、ここは百一階層もあるダンジョンの、とんでもないことに九十九階層ということになる。
リュシアンが何を言っているのか、即座にわかる者はいなかった。
いや、理解することを拒んでいるようにも見えた。
「え? な、なに言ってるの? ここがダンジョンで……、どこですって?」
悲鳴のような声をあげたのはニーナだ。もちろん本人だってわかっているだろう。何度、聞き返したところで答えは変わらないことも。
そう、ここは未踏破ダンジョン百階越えの、ラスボス部屋手前の階層だという現実を。
今いるところは、この階層のおよそ中央、いわゆる戦闘除外地域と言われる場所だ。どういうしくみかわからないが、ダンジョンにはなぜかそういう休憩所のような空白地帯が存在する。特定のモンスター以外は、入り込めない場所があるのだ。
ダンジョンによっては、ワンフロア全部が空白地帯というところがあり、そういう場所には商人や職人が入り込み、出稼ぎの商売をしていることもあると聞いたことがある。
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