ご落胤王子は異世界を楽しむと決めた!WEB版
団欒
屋敷の中や庭園へ、さっそく探検に飛び出しそうなエドガーを、リュシアンは宥めすかして客間へと案内することにした。その際、エドガーはいつになく黙って何事か考えている様子だった。
「どうかしたの、やっぱり疲れた?」
「……なあ、リュクって呼ばれてるんだな」
なんだかわからない質問に、リュシアンは思わず振り向いて「……ん?」と間抜けな声を出した。そこには何かを期待したようなエドガーの顔がキラキラと輝いていた。
「まあ……、父と母だけだけどね」
「ふーん、そっか。じゃ……」
「え? やだよ」
「なんでだよ!? ってか、まだ何も言ってないだろ」
そんなの顔を見れば嫌でもわかるというものだ。リュシアンの目には、同じように愛称で呼びたいとデカデカと書いてあるのが見え見えだったのだ。
「だって、学校で呼ばれたらなんか恥ずかしいよ。……エドガー、使い分けできなさそうだし」
「恥ずかしいって……、え?お前が」
意外そうにエドガーがぽかんとした。
「なにそれ、どういう顔?」
「あ、いやすまん。だって、なんていうかさ、お前がそういう子供っぽいこというのが意外っていうか」
そんな二人のやり取りに、思わず噴き出した人物がいた。
リュシアンとエドガーが同時に振り向くと、長兄のファビオが階段から降りてくるところだった。
「に、兄様。いつからそこに」
「立ち聞きするつもりはなかったんだけどね」
そう前置きして、エドガーに向き直り「大変失礼をいたしました」と、エドガーに対して改めて礼を取ろうとした。
「あ、待って……お待ちください。俺は、友人の家を訪ねてきた学友です、そのように扱ってください」
慌てて手を振るエドガーに、ファビオは少しだけ驚いた顔をして、けれどどこか納得したような笑みを浮かべた。
「ではあらためまして、リュシアンの兄で、ファビオです」
「エドガーです、初めまして。兄から話を聞いて、お会いしたいと思ってました」
握手を求めるファビオに、どこか緊張したような面持でエドガーが答えた。憧れの兄エルマンが、かつて自慢げに話していた友人との出会いに、ちょっと舞い上がっているようにも見える。
「……へぇ、ちゃんと礼儀正しくもできるんだね」
「ちょっ! 何言って、俺は……っ」
いつもはその辺のガキンチョと変わんないのに、とリュシアンが面白がって暴露しかけるのを、エドガーは慌てふためいて両手で押さえ込んだ。その目が、余計な事言うなっ! と物語っている。
リュシアンは呆れたように見上げたが、やり取りを見ていたファビオは却っておかしそうに笑っている。
「いかにもエルマンの弟だね……、いや、すまない。どうかリュシアンを、これからもよろしく頼むね」
ファビオは笑ったことを詫びて、エドガーに弟の事を頼んだ。
兄エルマンのことを語るファビオの口調に、どこか誇らしげな響きを感じて、エドガーは酷くうれしそうに頷いた。
「もちろんです、任せてください」
客観的に見て、むしろ面倒見てるのはもっぱらリュシアンな訳だけど、ファビオが言っているのはそういうことではないだろう。
(これは、ファビオ兄様も船での件は知ってるっぽい…かな)
リュシアンは再び憂鬱な気分になってしまった。
「なあなあ、お前、家では兄様って呼んでるんだ。じゃ、俺のこと……」
そしてお約束、エドガーは能天気にも予想道理の提案をしてきたのである。
当然ながら速攻でダメ出しを食らい、エドガーの希望は木っ端みじんになったのだった。
「どうかしたの、やっぱり疲れた?」
「……なあ、リュクって呼ばれてるんだな」
なんだかわからない質問に、リュシアンは思わず振り向いて「……ん?」と間抜けな声を出した。そこには何かを期待したようなエドガーの顔がキラキラと輝いていた。
「まあ……、父と母だけだけどね」
「ふーん、そっか。じゃ……」
「え? やだよ」
「なんでだよ!? ってか、まだ何も言ってないだろ」
そんなの顔を見れば嫌でもわかるというものだ。リュシアンの目には、同じように愛称で呼びたいとデカデカと書いてあるのが見え見えだったのだ。
「だって、学校で呼ばれたらなんか恥ずかしいよ。……エドガー、使い分けできなさそうだし」
「恥ずかしいって……、え?お前が」
意外そうにエドガーがぽかんとした。
「なにそれ、どういう顔?」
「あ、いやすまん。だって、なんていうかさ、お前がそういう子供っぽいこというのが意外っていうか」
そんな二人のやり取りに、思わず噴き出した人物がいた。
リュシアンとエドガーが同時に振り向くと、長兄のファビオが階段から降りてくるところだった。
「に、兄様。いつからそこに」
「立ち聞きするつもりはなかったんだけどね」
そう前置きして、エドガーに向き直り「大変失礼をいたしました」と、エドガーに対して改めて礼を取ろうとした。
「あ、待って……お待ちください。俺は、友人の家を訪ねてきた学友です、そのように扱ってください」
慌てて手を振るエドガーに、ファビオは少しだけ驚いた顔をして、けれどどこか納得したような笑みを浮かべた。
「ではあらためまして、リュシアンの兄で、ファビオです」
「エドガーです、初めまして。兄から話を聞いて、お会いしたいと思ってました」
握手を求めるファビオに、どこか緊張したような面持でエドガーが答えた。憧れの兄エルマンが、かつて自慢げに話していた友人との出会いに、ちょっと舞い上がっているようにも見える。
「……へぇ、ちゃんと礼儀正しくもできるんだね」
「ちょっ! 何言って、俺は……っ」
いつもはその辺のガキンチョと変わんないのに、とリュシアンが面白がって暴露しかけるのを、エドガーは慌てふためいて両手で押さえ込んだ。その目が、余計な事言うなっ! と物語っている。
リュシアンは呆れたように見上げたが、やり取りを見ていたファビオは却っておかしそうに笑っている。
「いかにもエルマンの弟だね……、いや、すまない。どうかリュシアンを、これからもよろしく頼むね」
ファビオは笑ったことを詫びて、エドガーに弟の事を頼んだ。
兄エルマンのことを語るファビオの口調に、どこか誇らしげな響きを感じて、エドガーは酷くうれしそうに頷いた。
「もちろんです、任せてください」
客観的に見て、むしろ面倒見てるのはもっぱらリュシアンな訳だけど、ファビオが言っているのはそういうことではないだろう。
(これは、ファビオ兄様も船での件は知ってるっぽい…かな)
リュシアンは再び憂鬱な気分になってしまった。
「なあなあ、お前、家では兄様って呼んでるんだ。じゃ、俺のこと……」
そしてお約束、エドガーは能天気にも予想道理の提案をしてきたのである。
当然ながら速攻でダメ出しを食らい、エドガーの希望は木っ端みじんになったのだった。
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