ご落胤王子は異世界を楽しむと決めた!WEB版
飯盒炊爨・つづき
こういう時の定番はカレーだが、カレーと呼べるものはこの世界にはなかった。正確には、あるのかもしれないが身近にはなかった、ということである。
唯一、似たものと言えばハッシュドビーフのような煮込み料理。
なので、リュシアンはそれに手を加えたハヤシライスもどきを作ることにした。途中まで作った鍋を、そのままフリーバッグに入れてあるので、それにいくらか手を加えるだけだ。フリーバッグの中では、ほぼ時間が経過しないので出した鍋はまだ温かい。
飯盒がぶら下げてある竈の横に、足の長い五徳のようなものを置いて鍋を据えた。
「ねえ、大丈夫なの? さっきまで寝込んでたのに」
「大丈夫大丈夫、もうなんともないよ」
あの騒ぎからまだ半日だが、リュシアンは本来お昼に披露するはずだったハヤシライスを作ることに余念がない。心配して声をかけたニーナは、素気無くあしらわれてエドガーに肩を竦めてみせた。
アリスを始め他のメンバーは、付近の森に小枝を取りに行っている。
薪は支給されているものの、十分でない上に燃やし始めは小枝があった方が燃えやすい。まだキャンプは始まったばかり、なんでも出来るときにやっておくに限るのだ。
初日は、これからのキャンプの準備を整えることが最重要事項だ。そのため今日の食事は、持参のものを食べてよいことになっている。明日からはいわゆる自給自足、肉を食べたいものは獣を捕らえて捌き、それが出来ない者は森で食べ物を探すことになる。
唯一許されるのは、主食系の携帯食、乾パンモドキに、干し飯などだ。なにも獲物を得られない場合、残りの二日間それだけで過ごさないとならないのである。
そのためリュシアンは、こうしてせっせと夕食作りに励んでいるのだ。
今日を逃せばせっかく準備してきたものが台無しなのである。保健医のユアンに反対されながら、早々にベットから抜け出してきて飯盒炊爨に勤しんでいた。
なんとしてもホカホカご飯を食べる。リュシアンは、もとより炊飯器よりもおいしく炊けると噂の飯盒を、ずっと前から試してみたかった。ずっと前というのは、もちろん前世も含めてだ。
しがない居候だった身分で、参加に金銭の絡むキャンプになど、当然行ったことがなかった。そして、社会に出た後は、そんな暇はなかったのだ。
リュシアンの、飯盒炊爨の手順はすべて書物による知識のみだ。こうして暗唱できるほどに、飯盒やキャンプの知識が詰め込まれているのには、自分のことながらちょっと涙が出てくる。
そして飯盒からは、やがて懐かしい匂いが漂ってきたのだった。
唯一、似たものと言えばハッシュドビーフのような煮込み料理。
なので、リュシアンはそれに手を加えたハヤシライスもどきを作ることにした。途中まで作った鍋を、そのままフリーバッグに入れてあるので、それにいくらか手を加えるだけだ。フリーバッグの中では、ほぼ時間が経過しないので出した鍋はまだ温かい。
飯盒がぶら下げてある竈の横に、足の長い五徳のようなものを置いて鍋を据えた。
「ねえ、大丈夫なの? さっきまで寝込んでたのに」
「大丈夫大丈夫、もうなんともないよ」
あの騒ぎからまだ半日だが、リュシアンは本来お昼に披露するはずだったハヤシライスを作ることに余念がない。心配して声をかけたニーナは、素気無くあしらわれてエドガーに肩を竦めてみせた。
アリスを始め他のメンバーは、付近の森に小枝を取りに行っている。
薪は支給されているものの、十分でない上に燃やし始めは小枝があった方が燃えやすい。まだキャンプは始まったばかり、なんでも出来るときにやっておくに限るのだ。
初日は、これからのキャンプの準備を整えることが最重要事項だ。そのため今日の食事は、持参のものを食べてよいことになっている。明日からはいわゆる自給自足、肉を食べたいものは獣を捕らえて捌き、それが出来ない者は森で食べ物を探すことになる。
唯一許されるのは、主食系の携帯食、乾パンモドキに、干し飯などだ。なにも獲物を得られない場合、残りの二日間それだけで過ごさないとならないのである。
そのためリュシアンは、こうしてせっせと夕食作りに励んでいるのだ。
今日を逃せばせっかく準備してきたものが台無しなのである。保健医のユアンに反対されながら、早々にベットから抜け出してきて飯盒炊爨に勤しんでいた。
なんとしてもホカホカご飯を食べる。リュシアンは、もとより炊飯器よりもおいしく炊けると噂の飯盒を、ずっと前から試してみたかった。ずっと前というのは、もちろん前世も含めてだ。
しがない居候だった身分で、参加に金銭の絡むキャンプになど、当然行ったことがなかった。そして、社会に出た後は、そんな暇はなかったのだ。
リュシアンの、飯盒炊爨の手順はすべて書物による知識のみだ。こうして暗唱できるほどに、飯盒やキャンプの知識が詰め込まれているのには、自分のことながらちょっと涙が出てくる。
そして飯盒からは、やがて懐かしい匂いが漂ってきたのだった。
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