スピリッツウィッチ~ダンジョン攻略がんばります~ 

夢見叶

第四十五話 正体

 ミレイ達が帰った後のギルド、マスター室。

「お久しぶりね」

 精霊をつれたフードの女性が窓から入ってくる。

「誰だ!」

 いきなりのことで驚くマスター。

 見知らぬ者が二階の窓から入ってくるとは、

「つれないわね、忘れたの」

 顔を隠していたフードを取る。

 その中から見えたのは、長い髪、頭い二つの角、整った顔立ちで肌が少し焼けている。

「この顔忘れた訳ではないでしょうね」

 はっとした顔をするマスター。

 そして、

「ご無礼をお許しください」

 膝をつき頭を下げる。

「まさかあなたが人間の街に居るなんて思わなかったわよ」

「はぁ」

 何故この方がこんな辺境の街に。

「頭を上げなさい」

 それに従い頭を上げて女性の顔を見る。

「いつまでその姿で居るのかしら?」

「申し訳ございません」

 姿が変わり、若い青年へと変わっていく。

 そこには先程の老いた老人とは全く違う若い青年がいたのだ。

 先程のような人の姿ではなく頭に一本の角がある。

「その姿を見るのはもう二百年ぶりかしら? ゴルゾ!」

「はぁ! お久しぶりにございます、魔龍族の女王メルリカ様!」

 改めて挨拶をするゴルゾ。

 ただ、緊張で体中は汗だくであった。

「メルリカ様が何用でこのような辺境の街に?」

 正直このお方がこの街にいる理由が分からない?

「決まっているでじゃない、二百年前私達魔龍族を滅ぼした勇者の生まれ変わりを殺す為よ」

 その言葉を聞き全てを理解するゴルゾ。

 魔龍族は数千年の間この世界のトップとして君臨し続けていた。

 だが、二百年前魔龍族と人間は戦争をしていた。理由は忘れてしまったがどちらが勝つかなど赤子でも分かる戦いであった。

 魔龍族はダンジョンから呼び出したモンスターで人間族を圧倒していった。戦争が始まって三日が経った頃、モンスターが次々にやられ初めたのである。一体何が起こったのかそのときはまだ気づくことが出来なかった。そしてそれが敗因となってしまったのである。

 魔龍族がその異変に気づき対処を始めたのは勇者と呼ばれた冒険者が魔龍族の都市サンーシャイン(今はこの世界の中心都市である)へと侵入したときであった。

 すぐに戦闘体勢を取ったのだが人間たった五人のあっとされていった。

 そして勇者は魔龍族王城内へと侵入していく。そこには四天王と呼ばれる女王を除き最強と呼ばれる四人の魔龍族が守っていたのだが、あっさりとやられてしまう。

 そして、最後に残ったのは女王メルリカだけであった。

 勇者との一対一の戦い。結果は相打ちの引き分けであった。

 そのため生残った魔龍族はあれからひっそりと生活していたのだが、

「あの戦いであなたは勇者と相打ちになったのではなかったですか?」

 ゴルゾが一番不思議に思っていたことを聞く。

「確かにあの戦いで私は勇者と相打ちになりかけたけどね、ぎりぎりの所で生き延びたのよ。ただ力は失われていて今までの間隠れていたのよ」

「出てこられたと言うことは、お力が戻られたと言う事なのですね」

「そうよ、それに勇者の生まれ変わりも見つけたわ」

 笑みを浮かべながら舌なめずりするメルリカ。

「誰なのですか?」

 恐る恐る聞いて見る。

「白髪の背の小さな少女よ」

「理由をお聞きしても」

「簡単な話よ、あの子勇者と同じ力を持ってるわよ」

「勇者と同じ力ですか?」

「そうよ、それに今回のSランクダンジョンはあの子一人で攻略したのわ」

 あり得ないことばかり聞かされる。

「ですが、冒険者達の話しですと四人で攻略したと聞いております。それにミレイはサポートだけと聞きましたのですが?」

「ウソに決まってるでしょ! あの男達は十階層でリタイヤしてたわよ」

 それを聞いて今まであったミレイに対して不思議に思っていたことが解消された。

「では本当に」

「そうよ。それであなたに頼みがあるのだけどいいかしら?」

「何なりと」

「一ヶ月後この街で祭りがあるわね」

「はい、この街の生誕を祝っての祭りがありますが」

「そこで武闘大会が毎年行われているでしょ、それに私を出させて欲しいの」

「それは構いませんが、どうしてですか?」

「決まってるでしょ、あのミレイと言う少女と手合わせをしようと思ってね」

「手合わせですか?」

 何故手合わせなんかと、思ってしまう。この方が本来の実力を取り戻されているのなら一撃で終わりのはずなのだが、

「簡単よ、今のあの子を殺してもつまらないでしょ。どうせ殺すならあの子が成長しきってあの勇者と同じくらいになってからじゃないとね」

 とても悪そうな笑みを浮かべている。

「分かりました。こちらで手続きをさせていただきますがお名前はどういたしましょう?」

「これでお願い」

 一枚のギルドカードが手渡される。そこにはメリと言う名前とSランクの文字が書かれていた。

 メリとは、今この世界で唯一のSランク冒険者でその顔を見た者は居ないと言われている。

「メルリカ様があのメリだったとは」

「そんな事どうでもいいでしょ! それじゃ手続きよろしくね」

 それだけ言って部屋の窓から姿を消す。

 そして、ミレイの周りでいろいろなことが動き始めたのであった。

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