身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。

がおー

100C 冴えた手は一つしか無い・・・

僕は、決断を下す事にした。

僕は、ソルフィちゃんの手を掴み、ソルフィちゃんを抱きしめる。

「お兄様・・・!」

ソルフィちゃんは、「自分が選ばれた!」と言うかのように、表情を明るくする。

「お、お兄ちゃん!嫌だよっ!」

「お兄さん・・・!止めて下さい・・・!!」

千尋ちゃんと千歳ちゃんが悲痛な表情で僕に駆け寄る。

「千尋ちゃん、千歳ちゃん、こっちに来てくれ・・・出来るだけ、僕の傍に」

僕は二人を手招きする。

「お、お兄様・・・?な、何を・・・?」

困惑そうな顔で僕を見るソルフィちゃん。

「今から、ソルフィちゃんとキスをして、生者側の伊吹を吹き込んで貰って、そして、僕は千歳ちゃんと千尋ちゃんとキスをする。こうすれば、僕が目覚めた上で、二人を救えると思えるんだけど。」

僕の提案にソルフィちゃんは首を横に振り

「ダメです・・・、お二人の肉体はもう無くなっているので、現世に戻っても魂が還る場所がありません。それに、私とキスしても、お二人とキスしてしまえば、お二人の魂がお兄様の魂を縛りつけ、結局、この夢の世界に封されるだけですわ。」

ソルフィちゃんは、申し訳無さそうに答えた。・・・いや、ソルフィちゃんは何も悪くないのだが・・・。

そう、ソルフィちゃんは何も悪く無い。悪く無いけど・・・。

僕はソルフィちゃんに対して、誰とも別れる事の無い「冴えて手」を明かす事にする。

「・・・なあ、ソルフィちゃん・・・、今から、君を殺して良いかい・・・?」

「「「えっ!」」」

ソルフィちゃんが驚愕した。千尋ちゃんと千歳ちゃんも今の僕の一声で驚いている。

僕は、ソルフィちゃんに自分の考えを話す。

「僕は、千尋ちゃんとも千歳ちゃんともソルフィちゃんとも別れたくない。・・・だから、今から、僕は千歳ちゃんと千尋ちゃんとキスをして、完全に封印の世界の住人になった上で、ソルフィちゃんにキスをして、僕の伊吹を吹き込んで、ソルフィちゃんも僕達側になって貰う・・・・・・・ダメかい・・・?」

「えっ・・・?ええっ・・・?お、お兄様・・・そんな事・・・」

ソルフィちゃんは、僕の言葉に混乱しっぱなしの様だ。

そりゃ、そうだ、今から死ねと言われているのだから。

「ダメかい・・・?」

僕は、再度ソルフィちゃんに「死ね」と言う。

「・・・ダメに決まっていますわ!ダメです。そうすれば、ソルフィが死ぬだけでは無く、お兄様も目覚める事がありえなくなりますわ。ダメです!絶対ダメ・・・っ!」

ふるふるふるふる、首を震わせて、ソルフィちゃんは拒む。

「じゃあ・・・・・・もう無理だ。僕は、千尋ちゃんと千歳ちゃんと別れる事は出来ない。すまない・・・」

僕が、ソルフィちゃんを抱きしめる力を緩め、ソルフィちゃんから離れようとすると

「ダメーーーーーーーーーーっ!!!!」

ソルフィちゃんが、僕を強く抱きしめ

「ダメです!絶対ダメです!ダメです!嫌です!・・・おかしな事考えずに、ソルフィと共に現世に帰りましょう?・・・ねっ?お兄様・・・?」

ソルフィちゃんの訴えに、僕は首を横に振る。もう決心した事だ。ソルフィちゃんを「殺す」事は。

「・・・あう・・・あううう・・・嫌ぁ・・・嫌だぁ・・・・・・お兄様・・・、あの王の謀にまんまと引っかかるのですか?、チヒロさんもチトセさんも、あの王がお兄様を封印する為に魂を利用されているんですよ?お二人を殺して!」

「良いんだ・・・、僕は、あの世界の事に興味は無い。他人の世界の事だから・・・、だから、千尋ちゃんと千歳ちゃんと・・・出来れば、ソルフィちゃんと一緒に、いつまでも暮らしたいんだ・・・。結局、元の世界でもあの世界でも、僕の居るべき場所じゃなかった。僕が居るべき場所は、3人が一緒に居る場所・・・そこだけだ・・・。だから、僕は、僕の我がままで、その場所に居続けたい・・・。誰かに利用されても・・・ソルフィちゃんを、殺しても・・・」

僕は、もう涙を零し始めているソルフィちゃんに向かって言った。視線は、まったくずらさず。まっすぐにまっすぐに。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

ソルフィちゃんは涙を零しながら、目を見開いて、僕を見ている。見続けている。暫しの間、沈黙が続く。

「・・・・・・・・・お兄様は・・・・・・・ソルフィを殺してでも、私と居たいのですか・・・・・・?」

やっと口を開くソルフィちゃん

「ああ・・・」

僕は短く答える。

「そんなの酷すぎますわ、ソルフィと一緒に居たいからって、ソルフィを殺すなんて・・・・・・あんまりですわ・・・」

「・・・ごめん・・・」

謝るしかない。

「・・・考え直して下さいまし。ソルフィは、死にたくありませんわ。そして、お兄様を生還させたいですわ」

「それは出来ないんだ・・・ごめん・・・」

「・・・そうなのですか・・・」

「・・・ああ・・・」

僕が答えると、ソルフィちゃんは、大きなため息をつく。長い長い、大きなため息だ。そして、困った様に、泣き顔をさらに泣きたそうに、僕を見つめる。

「・・・・・・ソルフィも、元の世界に、もう興味なんて、ありませんの・・・。ソルフィの興味は、お兄様だけですもの・・・・・・お兄様が居ない元の世界なんて、また永年の孤独に戻るだけですもの。お兄様無しでは、ソルフィは生きれません・・・でも、ソルフィは決められませんの・・・決断できませんの・・・だから・・・」

ソルフィちゃんは一息ついて、さらに言葉を続ける。

「・・・ソルフィの身も心も、お兄様に委ねます。ソルフィの事は、お兄様が決めてくださいませ・・・」

そう言って、ソルフィちゃんは頭を垂れた。

「・・・・・・・・・有難う、ソルフィちゃん」

大きな決断をさせてしまった事に申し訳無く思いながら、僕は、ソルフィちゃんの頭を撫でる。

「・・・・・・まったくもう・・・、本当に酷いですわ、お兄様、助けに来たソルフィまで、封印させてしまうなんて・・・、本当に酷い人・・・、ソルフィの全て、全てをお兄様に捧げますから・・・だから、お願いします!ソルフィを愛して下さいね?つま先から、髪の毛の端まで、全てを。愛して戴ければ、全部許します・・・」

顔を膨らませて僕を批難するソルフィちゃん。

「約束するよ・・・絶対に・・・」

そう、僕の我がままで、ソルフィちゃんは死ぬ事になるのだ・・・。彼女が後悔は絶対させない。

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