身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。

がおー

65.「朝になった。 」

「じゃあ、行こう、お兄ちゃん」

「行きましょう、お兄さん」

僕の両手を二人が掴んだ。

「ああ・・・」

僕は二人に返事をして、二人と共に自宅を後にする。

結局こうして二人と一緒に出勤する事になった。

歩いて駅まで行き電車に乗りそこから会社まで歩く。

おおよそ一時間以上はかかる。

バイクなら30分ぐらいで着くのだが、仕方ない。

「何か逢っても、任せてね。私がやっつけちゃうからね」

自称妹はおもちゃの銃で、何かを射撃する身振りをする。

「前回は遅れを取ったので、今回は負けません」

自称従兄弟ものぼり旗をぶんぶん振り回す。

「頼もしい限りだ。」

僕は二人を誉めてやった。

勿論、前回外に出た時同様、携帯を耳に当てながら通話のフリしながらである。

独り言ぶつぶつ言っている怪しい人と思われない為にね。

「ふふっ、今までお兄さんのお勤め先を見た事無かったので、楽しみです。」

「楽しみって・・・君、もしかして職場まで来るつもりなの?」

「そうだよ?」

「そうですよ?」

二人は何を当たり前の事を?と言いたげに僕を見る。

「いや、てっきり職場の手前ぐらいまでかと・・・」

「手前で別れた後に襲われたらどうするんですか!?」

自称従兄弟はちょっと切実な表情で僕を見た。

「大丈夫だよ・・・多分・・・。」

「大丈夫じゃない!」

「大丈夫じゃありません!」

二人同時で発声する。

何か最近、この二人、息が合って来たな・・・。

「そうは言ってもなあ、二人共、僕の職場まで来たら、ついでに僕の職場内、ぶらついていくでしょ?」

「はい!」

「そりゃもう!」

「それが嫌なんだって!!」

僕は思わず大声を上げた。

通行人が皆、僕の方を振り向く。

僕は自分の醜態に恥ずかしくなって、周囲に意味もなくぺこぺこお辞儀をした。

「お兄さん、急に大声上げたら、いくら通話してる振りをしていてもおかしな人にしか見えませんよ」

「お兄ちゃんったら、私達は他人に見えないはずだけど、私まで恥ずかしくなるよ」

「誰のせいだ誰の!」

また大声でツッコんでしまった。

またも周囲の人がこちらを振り向く。

またも僕は恥ずかしくなって、「すいませんすいません」と平謝りをすると、早足でその場から去る事にした。

「な、何で急に走るんですか?」

「早い!早いよ、お兄ちゃん。もうちょっとゆっくり歩いて」

部活をしている自称従兄弟は良いが、引きこもって体力の無い自称妹はぜえぜえ言いながら、僕の足に着いていく。

「だってさ、恥ずかしいからに決まっているだろう。人に自分が働いている所を見られるなんてさ、絶対やだよ。やだやだ。上司にどやされてる所とか見られたくない」

「どうしてですか?お仕事上手くいって無くても良いです。お兄さんを見ていたいから、減るもんじゃないでしょう。」

「じゃあ、君、減るもんじゃないからパンツ見せろなんて言われたらパンツ見せるのか?」

「お兄さんなら見せれます!何なら中身もお見せしましょうか?」

「そういう問題じゃない!」

「待ってよー、二人共、置いてかないでよー」

僕らは言い合いながら、駅に向かっていた。

向かっていたのだが、気づけば周りの風景がいつもの通勤路とは違っているのに気づいた。

「ね、ねえ、お兄さん・・・私達、どこを歩いているんです・・・?。」

「あ、ああ・・・いつもの通勤路のはずだけど」

自称従兄弟も気づいたのか、不安げに僕に聞いてきた。

周囲を見渡す。そこは果てしなく広がる草原だった。

「身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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